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    kikhimeqmoq

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    2021/01/23 2300字 恵が高専1年で、伏五は付き合ってます。五条の家で迎えた夏の朝の描写。あんまり何も起きないです。

    #伏五
    volt5

    山の群青が濃くなったかと思うと、すぐに稜線が金色に光り、あっという間に空が黒から青になる。夏は夜のうちから気の狂った蝉が鳴いているが、朝になれば本格的に合唱が始まる。ここにいると煩いし暑いしそろそろ移動しないとな、と思いつつ二本目に火をつけた。
    「朝っぱらから人んちのベランダで何してんのこの不良は」
    「ベランダが駄目なら部屋で吸ってもいいんですか」
    「それは嫌」
    じゃあ仕方ないでしょ、と言って煙を吐くと彼が長い腕を伸ばして咥えていたものを取り上げた。高専に入ってから禁煙したが、事後はどうしても吸いたくなることを最近知った。現実逃避にちょうどいいのだ。何も考えずに火をつけてボンヤリすると、夜あった出来事が煙と一緒に消えていくような気がする。自分がどれだけ必死だったかとかそういうことが。
    「寝てないの?」
    まだ長かった煙草を柵に押し付けながら、彼はだらだらと話し始める。頭を緩く振ると「あ、そう」といって面白くなさそうに口だけで笑った。
    「やると早起きだよね。恵は。何にも無いと授業も平気で遅刻してくるぐらい寝坊助なのに」
    朝からデリカシーのない声が蝉の合唱に混じって霞む。彼は話し続けるが、何を言っているのかよく聞こえない。聞こえたところで、意味なんか煙ほども無いんだろうが。
    だんだん本当に暑くなってきた。ベランダの庇が作る影は濃く、境界の向こうは白く光っている。夏の陽射しは今からの時間が本番なのに既に殺人光線並だ。あんな強いビームが出せたら任務も楽なのに。首筋に滲む汗を手の甲で拭い、中身のないことを妄想する。
    「それよりさあ、恵はなんでパンツいっちょなわけ?シャツぐらい着なよ」
    「洗濯しました」
    昨夜、シャツを着たまま始めてしまったから、気がついた時には汗やら体液やらで滅茶苦茶になっていたのだ。
    「僕の着たら?」
    「嫌です」
    この人の服はどれもこれもTシャツさえもひと回りデカくて、着ると面白くなかった。余った布に彼我の差をわざわざ教えられているようで。
    「持ってくる」
    質問してくるくせに俺の返事なんか聞いちゃいない人は引き戸を開け部屋に入った。一瞬、クーラーの涼しい乾いた風を感じた。すぐに戻ってきた彼は手に持った白い布を俺に投げつける。適当に放ったらしいTシャツは綺麗な放物線を描き、俺の頭上はるか遠くを飛んでいった。慌てて手を伸ばして辛うじてそれを掴むと「ナイスキャッチ」とご機嫌な声が聞こえた。いやいや、そのTシャツ八万円なんだから庭に飛んでいったらだめだろ。だいたいこの家の裏って、庭っていうより山なんだから。
    「着ないの?せっかく持ってきてあげたのに」
    「暑いし、別にいいです」
    「蚊に刺されるよ」
    「蚊なんてこの時間はいないでしょ。蝉ばっか」
    そうね、と適当な相槌を呟きながら彼が離れていく。柵の方に向かう背中は滑らかで、彼が着る黒いTシャツの向こうに、昨日撫ぜた白い肌が隠されているんだな、と思う。
    気づけば彼の背に手を伸ばしていて、Tシャツの襟を掴み顔を引き寄せた。
    なんの抵抗もなく振り返った彼は、そのまま顔を寄せる。音もなく近づいた唇を唇で迎えた。夏だからか昨日の熱が残っているのか、口はまだあたたかかった。間をおかず舌を突っ込んだ。
    食べるみたいに大きく口を開けて舐め始めると、向こうも負けじと噛みついてくる。ぺちゃぺちゃという音は、一層強く鳴き始めた蝉達がキスの音を消してくれるから、心おきなく彼を味わった。
    音が煩くて、世界も明るくて、時間がどれだけたったか分からない。一分くらいのような気もするし、何時間も経ったような気もした。
    「あー、あっつい」
    なんとはなしに彼が離れる。顔を顔の合間の狭い隙間にお互いのにおいが満ちた。密着している時よりも、少し離れた方が相手をよく感じられるのは面白いな、と思う。口元の少しエロいにおいと、首元から漂う汗のかおり。
    「めぐみさあ、もう汗だくなんだけど」
    俺の胸を広い手の平でペタペタ触りながら、呆れたように彼は言う。昨夜も、そういや全く同じことされたな。その後、Tシャツは脱がされた。
    スイッチを押されたみたいに次々と連想される昨日の出来事を追い払うように首を振り、少し強めに言い返す。
    「いや、汗かいてるのあんたの方でしょ」
    「僕は普通だって」
    「俺も若いんでこれくらい普通ですって」
    「その言い方じゃ僕が年寄みたいだろ。馬鹿言ってないでシャワー浴びるよ」
    腕をほどき振り返る背中を見て、年をとっているとはとても思えなかったが、言わないことにした。首筋に点々とついた赤い痕に自分の切羽詰りようを見せつけられて、また妄想に囚われたから。いや、妄想じゃなくて記憶だろ。
    自分の脳内で揺らめく白く細長い裸体が、夏の白っぽい光と混ざり、高い声で喘いでいた声が蝉の合唱に溶け込んでいく。夏の幻想は夢と現実の境が分からなくなる。
    「めぐみ、何突っ立ってんの?早く来な」
    呼びかけて満足したらしい人はスタスタと風呂場の方に向かって歩いた。

    自分も部屋に入り、後ろ手に扉を閉める。
    煩かった蝉の声が急に別の世界に移動したような気がした。
    まだカーテンを開けていない部屋は暗く、静かで冷たく乾いている。少しだけ彼のにおいがするので深呼吸した。
    廊下の向こうでシャワーの水音が聞こえる。暗い廊下に風呂場の灯が漏れていた。
    服、もう脱いだのかな。
    また、二人で裸になるんだから服なんていらないだろ、と思いながら手に持っていたTシャツを掴み直した。
    二人で風呂に入るのだ。
    その後のことは、流れと勢いににまかせるけれど。

    けど、今日は、休日だから。
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    kikhimeqmoq

    DOODLE伏五の五条が直哉と話しているだけの落書き。たぶんなんか、あんまり良いネタじゃない。恵が高一の五月くらい。誤字脱字衍字および重複は見直してないです。「君さあ、なんでずっとムカついた顔してんの?」
    久しぶりに御三家の会合があった。うちの当主は二日酔いで欠席するとだらなことを言い出し、次期当主である自分に名代を務めるよう言いつけてた。それはいい。それはいいが、なんでこいつと控え室が一緒やねん。俺、ほんま嫌いやねんけどら
    「悟くんはなんで似合わへん東京弁を使ってるの?」
    「似合ってるでしょ。君の金髪よりはずっと似合ってるし。直哉って昔は可愛い顔してたのに、いつのまにか場末のヤンキーみたいな金髪ピアスになったのは社会人デビューなの?」
    ハハッと乾いた笑いを付け加えた男といえば白髪が光っていた。銀髪というほど透けていないが、真珠みたいに淡く柔らかく発光している。下ろした前髪から覗く青い目はこれまた美しく輝いていたが、柔らかさなんて一欠片もなく世界を圧倒する力を放っている。それは自分が呪術者だから感じる力であって、その辺の猿どもが見たってガラス玉みたいに綺麗だと褒めそやすだけなんだろうが、こいつの真価はそんな見た目で測れるものじゃない。まあ、えげつない美しさっちゅうのは事実やけど。
    「もうすぐ禪院の当主になるっていうもんが、いつまでも五条家に 3020

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    kikhimeqmoq

    MEMO五条悟に年の離れた兄がいて早くに亡くなっている妄想メモ。伏五タグつけたけど、伏五ほとんど関係ないです。悟に年の離れた兄がいて、もちろん六眼ではないのですが、そこそこの術式でちゃんとした術師だったんですよ。が、悟が爆誕したので廃嫡となりました、と。
    ところで彼の凄いところは術式ではなく、人格にあって、特別な弟が生まれて廃嫡されても捻くれることなく、良くも悪くも目立ちがちな弟をよく諭して助けてくれる人だったんですね。性格が良いけど術式の弱い兄に、性格は持ち得ないけど術式最強の弟。五条家大変ですね…。
    悟はまあ我が儘放題に育ち、誰の手にも負えない感じになったのに、わりとこの兄のことは悪態つきつつ言うことを聞いたりして、懐いていたんですよ。たぶん。可愛いな。

    けどある日、兄は悟を狙う呪詛師の術に巻き込まれて亡くなってしまいました。
    悟は自分自身の気持ちに疎いうえ子供だったので、自分の中のモヤモヤが「寂しい」という感情なのが把握できなかったんですけど、子供ながらも人格者だった兄の死を周りの人が嘆き悲しむのを見て「人って死んだら駄目なんだな」と初めて知ったんですね。
    それまで人間も呪霊も等しく弱ければみんな死ぬ、と単純に思ってたけど、死んだら駄目な人がいるんだって分かっちゃった…。

    ていう五条 926