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    takamura_lmw

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    takamura_lmw

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    101話後捏造カレー回こと「朝が来る」のボツ原稿。そのうちどこかに使いまわしたいのでここに供養しておきます。
    「朝が来る」で唐突に病衣の話がでてきたのはこのボツ4があったからですね。
    原作ししさんに近いのはこのボツ原稿ズだと思うんですが、オチがつかなかったので最終稿はふわふわちゃんになりました。

    #さめしし

    ボツボツ1

    「カレーがあってさ」
     と獅子神が言った。村雨はエレベーターへの長い廊下を並んで歩きながら、拳一つほど高い位置にある彼の顔を横目に見上げた。
    「深鍋いっぱい。スパイス多めで、肉は牛を軽く焼いてから煮込んだやつ。食うか?」
    「いただこう」
     よし、と獅子神は頷いて、二人を先導する梅野に「てことだから村雨もオレんちな」と声をかけた。
     銀行員は小さく肩をすくめて、「仲が良くて何よりです」と皮肉でもなさそうに言った。


     獅子神の家を訪れるのが何度目か、もう数えていないが、他の二人のどちらもいないのは初めてだった。
     靴を脱ぎ、エントランスに備え付けのサニタリースペースで手を洗ってから、獅子神の後を追う。家の主人はキッチンシンクで手を泡だらけにしながらこちらを振り返った。
    「なんか飲むか?」
    「サンペレグリノはあるか。コンガスの」
    「へーへーありますとも」
     グラスに氷とガス入りミネラルウォーターがなみなみと注がれ、断りなく勝手にソファに収まった村雨の元に運ばれる。礼を言って受け取ると、獅子神は「付け合わせにひよこ豆とオリーブのサラダと、タコと野菜のマリネがあるけどどっちも食うだろ」と言いながら、私室へ向かって行った。
     村雨はその後ろ姿を眺めながら、電流の後遺症の気配がないことに、内心で安堵していた。
     彼が丈夫な男でよかった。もちろんあらかじめ宣言されていた限界値までの電流は、単なるVIP客へのパフォーマンスでしかないことは分かっていた。どれだけ派手に、見映え良く、ギャンブラーに苦痛を与えるかだけが目的のもの。だがそれでも、積み重なれば全くの無害とはいかない。事実試合中、獅子神は奥歯を砕くのではないかと思うほど噛み締め、左目は結膜下出血を起こした。目に見える傷だけでなく、心臓や、あるいは神経組織に影響が出ていないかは懸念事項の一つだった。あとできちんと器機を使って診察するべきだが、村雨が観察した限りでは、今のところその心配はなさそうだ。呂律が回らないこともないし、足取りもしっかりしている。この後自宅へ連れ帰って診察するつもりだったが、もうしばらく気をつけて見ていて、問題がなければ検査は明日でいいだろう。


    「カレー作っといてよかったぜ、さすがにこれから飯作るのはかったりぃ」
     スウェットに着替えて戻ってきた獅子神が、エプロンを巻きながら鍋を火にかける。

    -----------------
    ボツ2

    「おい村雨! これオレ目やばくないか?! 大丈夫なのか?!」
     どたばたと戻ってきた獅子神が、己の左目を指して言う。ようやく赤く染まった白眼に気づいたらしい。
    「問題ない。結膜下出血はよくあることだ。放っておけば十日程度で今出血している血液は吸収されて元の見た目に戻る」
     獅子神はあからさまにほっと胸を撫で下ろした。

    -----------------
    ボツ3

    「おや?」
     梅野がどんぐりまなこを瞬かせた。それには全く頓着せず、村雨は先にリアシートにおさまった獅子神の隣に滑り込み、さっさとドアを引いてシートベルトを締めた。獅子神も当たり前のような顔をして運転席の梅野に「大通りは工事してるから裏道通れよ」と注文をつけている。
     梅野はちらりと窓の外でにやついている渋谷を見て、それからばちんと瞬きをすると、無言でサイドブレーキを引いた。
     ゆっくりと走り出すメルセデスのAクラスを見送る渋谷のうすら笑いに、村雨は左手で優雅に中指を立てた。


     獅子神の家を訪れるのが何度目か、もう数えていないが、他の二人のどちらもいないのは初めてだった。
     靴を脱ぎ、エントランスに備え付けのサニタリースペースで手を洗ってから、獅子神の後を追う。家の主人はキッチンシンクで手を泡だらけにしながらこちらを振り返った。
    「なんか飲むか?」
    「サンペレグリノはあるか。コンガスの」
    「へーへーありますとも」
     グラスに氷とガス入りミネラルウォーターがなみなみと注がれ、断りなく勝手にソファに収まった村雨の元に運ばれる。礼を言って受け取ると、獅子神は「カレーあるけど食うよな」と言いながら、私室へ向かって行った。
     村雨はその後ろ姿を眺めながら、電流の後遺症の気配がないことに、内心で安堵していた。
     彼が丈夫な男でよかった。もちろんあらかじめ宣言されていた限界値までの電流は、単なるVIP客へのパフォーマンスでしかないことは分かっていた。どれだけ派手に、見映え良く、ギャンブラーに苦痛を与えるかだけが目的のもの。だがそれでも、積み重なれば全くの無害とはいかない。事実試合中、獅子神は奥歯を砕くのではないかと思うほど噛み締め、左目は結膜下出血を起こした。目に見える傷だけでなく、心臓や、あるいは神経組織に影響が出ていないかは懸念事項の一つだった。あとできちんと器機を使って診察するべきだが、村雨が観察した限りでは、今のところその心配はなさそうだ。呂律が回らないこともないし、足取りもしっかりしている。

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    ボツ4

    「汗かいたからこれもう着たくねえんだよな」
     獅子神は嫌そうに脱ぎ捨てられたインナーのタンクトップとシャツを見る。確かに、汗の匂いはいつもより濃い。
     ふと村雨は眉を顰めた。香水の匂いがいつもより強く立っている。
    「あなた、今日は香水を多めに振ったか?」
    「いや、いつもと同じだけど……臭うか?」
     村雨は己の嗅覚が常人より顕著に優れていることを知っている。その村雨にとって、普段獅子神の香水の匂いはさほど気になるものではなかった。身だしなみ程度に振りかけられた香水はせいぜいトワレで、場所もウエストや腿だ。だが今日はその香りが強い。
     そこまで考えて、ああ、と村雨は瞬いた。簡単な話だった。何度も電流にさらされ緊張で体温が上がり、更に服を脱いでいるからだ。獅子神のシャツを持ち上げると、更に強く香水の香りがして、村雨は再び眉を顰めた。
    「……シャワーを浴びてこい。着替えは貸してやる」
    「え、いいのか? ……いやオレ多分お前の服着られないけど」
    「病衣のストックがある」
     ええ、と不満そうな声を漏らしながら、獅子神は素直にシャワールームに向かっていった。真経津たちと共に何度かこの家には泊まりに来ているから、場所は知っているはずだ。「趣味」のための備品室として使っている部屋からLLサイズの浴衣型を選び、早々に水音がしているシャワールームの外に置いた。
     あの様子だとすぐにまたカレーに取り掛かろうとするだろうな、と村雨はバスタオルの塊を解きにかかった。
     中から出てきた深鍋と、その付属物に、村雨は大きな溜息をついた。
    「お、カレー無事だったか?」
    「鍋は問題ないが、あなたの奴隷は何を考えている?」
    「元な、元。……なんだあいつら、気が利くじゃねえか」
     あっという間に戻ってきた獅子神は、雑に頭を拭きながらキッチンカウンターの上のタオルの塊を覗き込んだ。
     バスタオルに包まれていたのは鍋だけではなかった。ストッカーに入ったまだ暖かい白飯と、

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    以上
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    Replies from the creator

    takamura_lmw

    DONE2024/6/30さめししオンリー「醒めし視界に愛は降る」にて無配として置いていたSSです。おにいちゃんぶるれめと、さめししのししさんの話。付き合ってるのはさめししですが、れめとししさんの間にはクソデカ感情があります。
    二人とも無事でわだかまりなく帰ってきてくれ……という気持ちで書きました。
    ベイビィ・オン・ザ・ソファ ソファに五歳児がひっくり返っている。比喩だ。もちろん。オレの知り合いに五歳児なんかいない。
     だがしかし、五歳児みたいな男はいる。何人も。オレも含めみんな五歳児。したいことをして、したくないことは断固としてしない。楽しいことだけしていたい子供みたいな大人ども、あるいは大人みたいな子供たち。
     その中で唯一五歳児じゃなかった男、大体十二歳児くらいの敬一くんが、今は五歳児になってソファに転がって、オレの公式グッズのもちもちレイメイくんクッションをでかい両手で捻り潰している。やめろよ。かわいそうだろ。
    「敬一くんなんか飲む?」
    「泡」
     遠慮のかけらもない。敬一くんが泡といえばそれはシャンパンだ。フレッシュできっちり酸味のあるシャルドネ系がお好みで、クリュッグの長期熟成のやつとかはそんなに好きじゃない。飲み飽きた由。二十六歳にして贅沢な舌だ。
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    takamura_lmw

    DONE🎉ししさんお誕生日おめでとうございます🎉
    ししさんお誕生日のさめしし、もしくはししさめです。
    一月に書いたさめせんお誕生日SSの続きです。

    あなたのこれからの人生が、あなたにとって素晴らしいものでありますように。
    できれば長生きしてください…頼む…ギャンブルなんかやめろ…ワンへなんか行くな…
    「誕生日、おめでとう」『村雨、八月二十七日って空いてたりするか』
     恋人の声を聞いた途端、村雨礼二はいざという時の切り札に確保していた上司の弱みを、ここで行使することを決めた。空いた片手で猛然と上司にビジネスチャットを打ちながら、頭の中では担当の患者とそのタスクについて素早くチェックをかける。どうしても村雨でなければならない仕事はないはずだ。あのネタをちらつかせれば上司は確実に休みを寄越すだろう。
    「休みは取れる。どうした」
    『即答だな』
    「偶然ここのところ手が空いていてな」
     嘘だった。所属する医局もいわゆる「バイト」先も相応に多忙だ。だがそれを彼に悟らせるつもりはさらさらなかった。
     村雨がここまで即座に恋人の―――獅子神敬一の、願いとも言えないような言葉に応えたのは、彼の声になにか特別なものを感じたからだった。不安でも、歓喜でもない。怒りでもなく、愉楽でもない。ただどこか尋常でなく、特別なもの。絶対に逃してはならないなにか。ほとんど第六感のようなものだが、村雨はそういった感覚を重視する性質(たち)だった。
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