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    VonPoesie

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    VonPoesie

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    現パロ朝菊漫画のプロット?です
    漫画が描けないので供養します

    プロットにしては文字数が多いし、小説にしては描写が浅いです。書き散らしです。

    いつか漫画を描くかもしれないのでネタバレかもしれません。

    #朝菊
    chaoChrysanthemum

    その星空の下で君と出会う「あーっくそッッッ」
     走った勢いで踏みつけた水溜りが復讐と言わんばかりの勢いで跳ね返って、卸したての靴とズボンの裾を汚した。駅まで走って行こうと思ったが、先日顔馴染のフランス人に向かって中指を空に向かって立てたのがいけなかったのか御立腹の様にザアザアと降り注ぐ。次からはピースサインにしよう。逆向きに。
     ここは一時戦力的撤退だと、ぐっしょりと重くなった服を身に纏い、軒下に滑り込んだ。
    「……はぁー」
     最悪。そう思いつつ、屈んでスーツにはねた水をはらう。

    「大丈夫ですか?」

     突然降り掛かった声に視線を上げると、しっとりとした黒髪の小柄な男が立っていた。
     日本人にしては流暢な英語なのが印象的だった。
    「突然すみません。でも、そのままでは風邪を引いてしまいますから」
     その見た目と英語のギャップに驚いて固まっているととんでもない言葉が飛んできた。
    「……あっ、もしかしてフランスの方……?」
     えーとフランス語では……とそいつは日本語で呟く。
    「That's rubbish!」
     思わず声を荒らげたが、そいつはくすりとわらってタオルを差し出した。
    「イギリスの方したか。失礼しました、お詫びと言ってはなんですけれどよかったら、どうぞ」
     怒声をあびせられたにも関わらず柔らかに微笑んむそいつに呆然としながらもタオルを受け取ってしまった。
    「いいのか?」
    「ふふ、ええ、勿論。雨に降られてお互い災難でしたね」
     なぜだかその笑顔にどうしようもなく惹かれて、このまま離れるのは惜しいと思った。
    「雨、止みそうにないな」
    「そうですねえ…もう走って帰っちゃいますか」
    「ばか。それこそ風邪を引くだろ。タクシーを呼ぼう」
    「ああ、それもそうですね」
    「家、どっちだ」
    「私はそっちの……」
    「じゃあ同じだ。礼と言ってはなんだが送らせてくれ」
    「私は淑女でもなんでもありませんけど」
    「英国紳士の名が廃るだろ?これ以上プライドを傷付けないでくれ」
     そういって返事を聞く前に、予定調和のように通りかかったタクシーを呼び止めた。


     俺はペラペラと聞かれてもないことをそいつに話していた。初対面のやつにこんなにも話すなんて初めてで、不思議な気分だった。それはそいつがあまりにも聞き上手で、あまりにも可愛らしく微笑むのが俺を調子に乗せていたし、俺はテンパっていたのだと気付いた時にはもう目的地に着いていた。
     一瞬だった。
    「ありがとうございます、お話出来て楽しかったです。それでは」
     俺が呆然としている間に、そいつはにこりと笑って運転手に代金を支払った。あまりにもスマートな動作だったのと、次に会う口実を考えていたらそれを許してしまっていた。
     俺は最早必死で出ていこうとする腕を掴んで引き止めていた。どこまでもかっこ悪いな、と自嘲する。
    「また会えないか」
     これは礼を返し損ねたからだ、とかタオルを返したい、だとかの言い訳はいくつも思いつくはずなのに、それらなんか無視して口から言葉が飛び出た。
     キクは数瞬目をぱちくりとして、微笑む。
    「実は、同じことを考えていました」
     じゃあ、予定が空いたらここに
     さらさらと名刺の裏にプライベートナンバーを綴る。
    「ありがとうございます」
     その小さな背中が見えなくなってから
    「すまないがどこかでUターンしてくれ、」
     自分の住所を告げた。俺の家は正反対だ。
     そして道を引き返す途中で、名刺を見てからあいつの名前が「本田菊」だったと初めて知った。名前すら聞けなかったことに気づいて項垂れた。
    「いくらなんでもパニクりすぎだろ……」
     俺はボヤいて少し笑った。

     それから携帯を気にする日々が続いて、一週間後に連絡が入った。

    『すみません、ようやく都合がつきました。お昼頃、○○橋ってわかりますか? その近くに美味しいご飯屋さんがあるんです』
     その連絡には届いてから1分もたっていないうちに気付いたと思うが、俺はその2時間後に返信をした。
     ついでに言えば、その日は久しぶりの休みだったから、そんなことにも運命を感じた。

     それから俺たちは懸命に恩を着せあって、それを理由にまた出会って。
     本田は忙しいらしいのだが、なんとか仕事の合間を縫って俺に会いに来てくれた。
     逢い引きの指定場所はいつだって本田がしてくれて、俺は甲斐甲斐しくそれに従った。こんなにも相手に尽くしてもいいと思ったのは初めてだった。
     次第に「好きな画家が個展を開くから」誘うようになって、「暇だから」会えるか?と連絡をして、遂には「会いたいから」会うようになった。
     本田は驚く程に博識で、ペラペラと学芸員並の知識を俺に教えてくれた。俺も造詣が深い分野だと思っていたのに本田の方が詳しいものだから驚くと、「頑張って調べてきたんです」などといじらしい回答が帰ってくる。そんなところも好きだった。

     俺たちはこうして逢引を重ねて、何故だか自然と惹かれあった。友人なんかじゃ収まりきらない感情をお互いに抱いていたし、それに気付いていた。
     当然の様に惹かれあって唇も重ねた。

     そんな関係がダラダラと続いて、気付けば数年経ってしまった。
     そして俺はついに決心した。
     少しロマンティックすぎる気もしたが、案外可愛いものが好きで、意外な程にものの価値がよく分かる彼なら雰囲気に流されてくれるかもしれない。
     そんな望みに頼って知り合いの飯だけは上手いフランス人の店で、指輪を隠し持って言った。
    「なあ、キク。話があるんだ」
     滑稽なほど真剣なトーンで語りかければ、キクはきょと、とこちらを向いた。
    「改まってどうしました?」

    「俺とイギリスで、一緒に暮らさないか」
    「………え」
    「元々こっちにこんなに長くいるつもりはなかったんだ。でもお前がいたから大誤算。何度も延長して延長して、遂に退っ引きならなくなった。俺も何度も考えたよ。でもさ、多分俺はどっちにしたってこうしたと思う」
     俺は息を吸った。
    「キク、俺と結婚してほしい」

    「……ごめんなさい、私、あなたと一緒には行けません」



     
    「あー…星が鬱陶しい」
     女々しくも、俺は初めてキクと待ち合わせた橋の上で星空を見上げて感傷にひたっていた。
     悪態をつく気は無かった。こっちが勝手に本田に惹かれていただけで、本田にとっては違ったのかもしれない。俺が先走っただけで、あいつにとっては迷惑だったのかも。
     そんな鬱陶しい思考がぐるぐるぐるぐると脳内を駆け巡っては、溜め息として吐き出したところで消え失せはしない。
     
    「……サー…ん、………アーサーさん!!」

     本田の声が聞こえた。
     幻聴かと思ったが、どん、と後ろから確かに質量と熱が伝わって、抱きしめられていると気付いた。
     先程までの悩みは吹き飛んで、状況を整理するのに頭をフル回転させる。
     ドギマギとしながら、ほんだ? と愛おしい人の名前を呟くと、脳裏に描いていた通りの小さな黒い頭が背中に張り付いていた。
     そうして本田が小さく呟いた。
    「死なないでください……」
    「はあ」
    「え? 身投げするかと……私のせいで……」
    「違うが……」
    「え」
     本田が目を丸めて、身を引く。頬が紅潮し、わなわなと震えている。大変可愛らしいが、可愛そうでもある。
    「まてまてまて!! 一体どこでそんな勘違いを!?」
     聞くと、本田は視線を落としてぽつりと呟いた。
    「フランシスさんから言われたんです。あいつ死ぬほど凹んでそうだから様子だけ見てきてやってって。そしたらあなたが橋の上に立ってて、もしかしてって」
    「……つーかお前も振った張本人なのによく慰めに来てくれたな。そんなんだから俺が諦められなくなるんだぞ」
    「……諦めないで欲しいって言ったら、自分勝手すぎますかね」
    「……それは、どういう」
     この問いは、もしかしてこいつは俺のことが好きなんじゃないか? という問いだ。決まってる。
     しかし、そいつは神妙な面持ちでこう言った。
    「私、実は普通じゃないんです」
    「は?」
    「貴方がカークランド社の御曹司なのは知っています。そして、我が国の諜報活動を働いた疑惑が持たれていることも」
     その言葉に、俺はひゅっと息を飲む。
     そんなことを知っている人間は限られている。
     だって俺は、こいつに本名もまだ教えていない。
    「実は私……公安なんです。そして貴方は監視対象」

    「は……?」
    「嘘をついていてごめんなさい。でも、任務と言うには貴方のことを知りすぎてしまいました」
     本田は潤んだ瞳で俺を見上げる。何故か初めて見る人間のような気がした。

    「貴方のことが好きです。一人の人間として」
     
     ああ、やっと、やっと言える。
    「ああ、嬉しいよ。キク・ホンダ。俺もお前が俺のことを見てくれる日を待ってたんだ!」

     これで心を痛めずにこの愛おしい人を連れて行ける。
     本田が俺のことを探ったり、監視しやすいように誘導したりしているのは気付いていた。本田が公安の人間であるとわかるのにも時間はかからなかった。金と権力があって良かったとこれほど思ったことは無い。傷が浅く済んだからだ。
     そう、俺は傷付いて、悩んだ。
     だってこいつは俺の事をただの監視の対象として見ているだけなんだから。
     それでも俺は本田が好きで、いつになったら本当のことを言ってくれるのか? 俺のことを好きになってくれるのか? 悩んで、悩んで、悩んで、ついに本田をイギリスに連れて帰ることにした。
     母国を離れれば俺のものになる気がしたのだ。
     しかし、本田は俺を拒んだ。
     絶望した。これは本物の絶望だった。

     それが、今やどうだ!!
     本田の瞳をもう一度見下ろした。
     揺らぐ瞳と紅潮する頬。これが欲しかった。
     俺は微笑んで、強ばった本田の唇に口付けた。
     
     俺は本田を連れ去るためだけに仕入れた国を揺るがすような情報をどうするか、考え始めた。
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    VonPoesie

    DONEほしまつ5の当日小説企画にて、「World Stars 92設定の朝菊」で参加させていただきました。
    こちらでも展示させていただきます。
    一部誤脱等を修正しております。
    改めまして、運営様、すてきな企画に参加させていただきありがとうございました!
    【ほしまつ5展示】「変わらぬものも変わるもの」  大学最後の冬休み。五年ぶりに、祖母の家に訪れた。

     別に来たくなくて来なかったわけではない。流行り病だとか、就職活動だとか、様々なことが重なって五年も経ってしまっていたのである。

     祖母の家は、絵に描いたような昔ながらの平屋建ての家で、私が小学生の頃までは共に生活していたが、父親の転勤に伴いこの家からも離れた。今では祖母は愛犬のシバ(柴犬である)と一緒に一人と一匹で生活をしている。

     五年で様々なことが変わった。高校生で大学受験に怯えていた私はなんと企業に内定を貰ったし、猫型ロボットがウエイターをしていても驚かなくなったし、一日で最高気温が十度以上変わっても何とか生き延びた。

     祖母は歳の割にはよく動き、気も強い。今朝もシバの散歩をしてやれと朝五時に私を叩き起こした。私は逆らうこともせずに、眠い眼を擦って祖母の気に入りのバンダナを付けたシバを連れて家を出た。
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