Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    higuyogu

    @higuyogu

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 76

    higuyogu

    ☆quiet follow

    アモロ2周目。会話文のみ。自ギルド。当たり前のようにBL一部GL出てきます。キャラ掘り下げみたいな内容。
    ・その1(一周目)→
    https://poipiku.com/1066758/9375731.html
    ・その2(王子、将軍、忍者トリオ)→
    https://poipiku.com/1066758/9567132.html

    ss世界木3その④ 2周目アモロ2周目

    オ…オウミナミ 長髪プリンス。金髪碧眼。元気を取り戻してきたぞ!

    み…みつうろこ 若ショーグン青。やっぱりオウミ君が大好き♡

    ラ…タカラブネ ポニシノ。愛称ラブネ。金髪碧眼。みつうろこさんに着いて行きたい

    ズ…ズイウン ゾディアックの渋いお兄さん。おっさん。白髪は生まれつきの毛色。物腰柔らかで面倒見が良い

    は…はないかだ 花筏。ポニテショーグン。金髪碧眼。走り回る女の子

    ・『その1』のみの人
    リ…リュウスイ 黒ツインモンク。ロ若々しいがみつうろこより1つ上。

    エ…エガスミ 赤髪バリスタ。その1の後、リュウスイさんとアモロで2人暮らしをすることになった。リュウさんと一つ屋根の下で暮らせるなんて幸せだな!お揃いのアクセサリーも貰っちゃって、なんだか結婚してるみたい!ん?あれ?




    ○その1
    オ「なんだ?俺たちが新人ということになっている。水紋というギルドは残っているのも謎だ」
    み「不思議ですね。これ時間は経ってるんですかね」
    オ「多分だが、それは好きに決めていいところだと思う…」
    み「せっかくニューゲームについて触れないようにしてたのに」

    オ「逆にちょうど良い。深都につけば、なぜ彼らがあのような行動をとったのか分かるはずだ」
    リュウ「そしたら私達は協力できないや。他の人達を探してもらえる?」
    オ「エガスミと抜けるか」
    エ「え?私も?」
    リ「うん。エガスミちゃんは地元の人だし、この街に居づらくなるのは困るから」

    エ「それリュウさんは関係なくない?」
    リ「エガスミちゃんを1人にしてたら何するか分からない」
    エ「ええ?ん?え?いやでも」
    オ「ツテならある。安心して去るが良い」
    エ「ありがとう。落ち着く時が来て、その時私たちの力が必要になったなら、また駆けつけるよ」

    オ「こちらも長い間世話になった。お互い息災であれば再び共に戦おう」
    リ「うん。その時はよろしく。エガスミちゃん行こう」
    エ「え?よく分かんないけど、みんみんも元気でね。あとみっつーとラブネんも」
    ラ「なんですかこれ」
    み「オウミ様の成長した姿ですかね」


    ラ「ツテなんてあるんですか」
    オ「ズイウンとはないかだだな。彼らが俺達のことを覚えていればだが」
    ラ「あー、忘れてるといいですね」
    み「忘れてても花筏さんは元々ラブネさんと面識あるみたいですから、そこから懐柔していきましょう」
    ラ「はい…」

    …ズイウンさんはアモロにお家を借りていた!ここに花筏ちゃんと2人で暮らしているらしい!

    み「ズイウンさーん、ラブネさんを連れてきました」
    ラ「直接家に押しかけてますけど、これでズイウンさんと面識ないことになってたらヤバくないですか?」
    オ「出会いとはそういうものだ」
    ズイ「こんにちは。別にアポ取ってくれても良かったんだよ」
    み「断られたら悲しいじゃないですか」

    ズ「今日は何か?」
    み「これからしばらく探索に付き合ってほしいです」
    ズ「報酬は?」
    み「それがですね」
    はな「タカラブネくん!何して遊びますか?」
    ラ「遊びに来たんじゃない」
    ズ「………分かった」
    み「成立ですね」

    ズ「まあ花筏ももっと走り回りたいみたいだからね。迷宮ならいい運動になるよ」
    み「心強いです。新しく戦い方を模索しなくてはならないので、頭数増やすのに新人は入れたくなかったんですよ。回復担当よろしくお願いします」
    ズ「はいはい」
    は「タカラブネ君、足遅くなりましたか?」
    ラ「こっちは疲れてんだよっ」


    ズ「それじゃあ次会う時は冒険者ギルド前で」

    ラ「つ、疲れた」
    オ「花筏に追い回されてたな。苦戦していたようだが」
    み「後手後手になってて醜かったですよ」
    ラ「うっさいです!」
    オ「きっと毎日追い回されるぞ。まあこれを対処するのも特訓のうちだな」
    ラ「やだ〜っ」


    ○その2
    み「一度引退を挟んだおかげでサブ職が無くなりました。戦い方の見直しのきっかけにはなりますが」
    ラ「今まで使っていた突剣が持てなくなりました」
    み「不思議ですね」
    ラ「みつうろこさんの刀貸してください」
    み「図々しいですね」

    オ「タカラブネは何やら機嫌が良いな」
    み「私が握っていた刀を貸したんですよ。新調したこっちの刃を試したかったのもあってちょうど良いかなと」
    オ「ふむ、合点がいく。あっちのはちょうど龍の骨を打った刀でもあるしな」
    み「微妙な気分です」
    オ「気味が良い」


    オ「タカラブネに稽古をつけているらしいな」
    み「私ってば面倒見がいいですからね」
    オ「舌打ちしたり、途中でため息ついたきり場を去るのがか?」
    み「わざわざ稽古つけてやってるんですよ?」
    オ「それでタカラブネが不調になるようなら俺が許さぬ」
    み「本当に。ラブネさんにはもっと根性つけてもらわないと」
    オ「お前を許さんと言ったのだが」


    ○その3
    ズ「花筏待ちなさい、花筏、花筏待って、止まって、ストップ!」
    み「リードでもつけたらどうですか」
    ズ「簡単に言ってくれるじゃないか。花筏!戻って!げっほげほ」
    み「何が問題なんですか。世間体?」
    ズ「僕の運動能力だと、引きずられるっ、間違いなく」
    み「老いですか」
    ズ「職業柄だよ」


    ○その4
    み「ラブネさん、この新芽を食べてみなさい」
    ラ「それ1周目の時に食べてえらい目にあったやつじゃないすか。やですよ」
    み「オウミ様、この新芽」
    ラ「食べます食べます」
    み「食い意地張っちゃって」
    ラ「なんかやなことあったんですか?」
    オ「いや、性格が悪いだけだな」



    は「ズイウンさん、きのこですよ」
    ズ「花筏、食べるな」
    は「土の味がします」
    ズ「生はねえ特にやめてほしいな。昨日のタカラブネ君みたいになりたくないだろう」
    は「タカラブネくんみたいに?なりたいです!」
    ズ「彼はかっこいいからね。そういう意味じゃなくて、最悪死んじゃうから食べるな」

    は「ズイウンさん、きのこ」
    ズ「食べるな!」
    は「土の味がします」
    ズ「お願いだから本当にその辺の食べないで。街の中とは違うってこと知ってるよね?」
    は「はい!」
    ズ「言ってる側から〜!きのこをむしるな!」


    ○その5
    み「キングスマーチ覚えろ」
    オ「習得までのSPが勿体無いが…取ってやったぞ」
    み「ありがとうございます。それでは歌います。聴いてください、『オウミの尻は素晴らしい』」
    ラ「オレ、こういうクソつまんない寒いみつうろこさんのことだけは本当に心の底から軽蔑してますし嫌いです」

    み「〜君の双丘に神様が嫉妬したからこの世に山と谷があるんだね〜♪」
    は「あるんだね〜♪」
    ズ「花筏が歌に夢中なおかげで、迷子になることも変なものに興味を持って触ろうとすることも減ったからありがたいよ」
    オ「であれば良かったが」
    ズ「ただ詞の部分がね」
    オ「あれでも丸くなった方なのだ」
    み「丸い尻♪」

    み「花筏さんは歌の才能があるのかもしれません」
    は「本当ですか?」
    み「美的センスもなかなか良い。これからも我々の美声で皆んなを激励していきましょう!」
    は「はい!がんばります!」
    ラ「オウミさん!あれ止めてください!」
    オ「あいつの歌が聞くに耐えないのは以前からだっただろう。慣れろ」
    ラ「ズイウンさん!」
    ズ「花筏が楽しそうだから、止めはできないかなあ」
    ラ「そんなあ…」


    ○その6
    み「ラブネさんにオウミ様のどこら辺が好きなのか話す権利を差し上げます」
    ラ「えーと、そっすね、うーん」
    み「まさか無いんですか?」
    ラ「あ、あります!えっと、そう、存在が好きです!」
    み「やっぱ間者はダメですねえ。首と腹、選ばせてあげます」
    ラ「うわー!待って!待ってください!!」

    ラ「オウミさん、匿ってください」
    オ「血が出てるではないか。どうした」
    ラ「みつうろこさんに斬られました」
    み「最近緩みすぎてたので引き締めさせてあげようとしただけですよ」
    ラ「ひいい!」
    オ「おい、タカラブネは俺と違って打たれ弱いのだ。あまりいじめるな」

    ラ「それじゃ弱いです!それだとオレが打たれ強かったら斬られていいことになっちゃいます!」
    オ「確かに。なら切るなら俺にしろ。俺なら多少のことでは死なんぞ」
    ラ「斬ること自体をやめさせてください!!」
    オ「な、なるほど、確かに」
    み「オウミ様、早く小僧をよこしてくださいよお」

    オ「刀を鞘に納めろ。それから両手を地面につけろ」
    み「嫌ですけど」
    オ「そうか」
    ラ「諦めないでください」
    オ「うむ…。とにかく刃をしまえ。俺まで斬るつもりか?」
    み「さっき斬っていいと言ってましたからね」
    オ「そうだな」
    ラ「言葉の綾ですよね!」
    オ「そ、そうだったかもしれぬ」

    ラ「ダメそう。何これ。主従関係破綻してますよ」
    オ「その気持ちは分かるぞ」
    ラ「共感しないでください」
    み「ではオウミ様を斬りつつ小僧を片付けますね」
    ラ「死にたくないよー」
    オ「……みつうろこよ」
    み「、はい」
    オ「やめろ」
    み「承知しました」
    ラ「え、は?はあ?」

    ラ「な、なんでこんなあっさり、というか早くそれやっててくれれば…」
    オ「………」
    ラ「あれ、オウミさん、顔色悪いですが」
    オ「刀を貸せ。この右手をくれてやる」
    み「俺の名前を呼んだことで具合が悪くなっちゃったんですねえ。オウミ、舌噛んだらめ!ですよ」
    ラ「げ、ひっでえ反動ですね……」

    み「まあ今日はオウミに免じて許しますが、次に忠誠心を示さなかったら即斬りますので、よろしくお願いしますね」
    ラ「た、助かった…。なんでオレ、こんなギルドに入っちゃったんだろう…変な人しかいないよ…」


    ○その7
    オ「探索の進みが早い」
    み「そりゃ手練ですし地図もありますし」
    オ「だが新米に見えるらしい」
    み「オウミ様ってそういう顔してますからねー」
    オ「そういうお前こそ童顔と言われる顔だろ」
    み「ズイウンさんと比べりゃそうですけど」
    ズ「君らは精神年齢も顔相応なのかい」


    オ「探索の進みは早いが、街の人達との交流も疎かにはできん。今日はここいらで引き返そう」
    み「糸は?」
    オ「買わなかったのか?」
    み「え?買わなかったんですか?」
    オ「は?なぜ買ってないのだ」
    ズ「これが手練の冒険者か」
    ラ「まあ、腕っぷしだけは強いので」


    ○その8
    み「そういえば介錯解禁許されました。祝ってください」
    ラ「祭り上げて神にすれば祟りも御利益になるってことですか」
    オ「熱心に信仰していれば恩を賜われるが、掟を破った途端祟ってくる方のやつだろう」
    ラ「なんで解禁許可したんですかねー」
    オ「もうよいかと思った」


    ○その9
    は「探索楽しいですねっ」
    み「そうですね」
    オ「横の2人が二刀持って暴れているのは幾分おっかないが、それさえなければ穏やかであるな」
    は「オウミさんは両手に持たないんですか?」
    オ「俺は盾を持っているのでな」
    は「使ってないのに?」
    オ「うむ。…装飾なのだ」


    ○その10
    ズ「花筏どこ行った⁈」
    み「私の行進曲程度では繋ぎ留められませんでしたか。わっはっはっ」
    ズ「ラブネ君は知らないか?」
    ラ「あっちの方行きました」
    ズ「見てたんならなんでそのまま行かせたんだっ」
    ラ「すみません」

    ズ「花筏!花筏!」
    み「闇雲に走ると危ないですよー」
    ズ「うるさいよ!」
    オ「何か鰹節のように誘き寄せられるものはないのか?」
    ズ「花筏が惹かれやすいのは目新しいものだから、迷宮内全てのものがそうだよ」
    オ「ううむ…。してタカラブネ、見つかったか?」
    ラ「はい」

    ズ「どこだっ」
    ラ「地図だとここで…あ、行っちゃいましたよ」
    み「あれで奇襲くらったらどうするつもりなんでしょ」

    ズ「ぜーっはっ、はーっ、ゲホッゲホッ、ヒー、はないかだっ」
    は「ズイウンさん、どうして疲れてるんですか?」
    ラ「飲み水ありますよ」
    ズ「ど、どうも、はー、ゼー、ラ、ラブネ君、いてくれてたのか」
    は「あれ?タカラブネくん!いたんですか!」
    ラ「見張くらいはしてましたけど」

    み「あれ?向こうにも3人いますね。怖いな」
    オ「なんだ、分身を付けていたなら最初から言えば良かっただろう」
    ラ「はい」分身消す
    は「タカラブネくん消えちゃいました」
    ズ「花筏、1人で勝手に離れるなと言っただろう!」
    は「はい!言われたことあります!」

    ズ「そうじゃなくて…。そうだ、ラブネ君ありがとう。さっきは怒鳴ってごめんね」
    ラ「いえ、別に。オレも良くなかったので」
    オ「ところでこの羽は何だ?ビックビルほどの大きさだが色が白い」
    み「オウミ様ってば自由」

    は「ズイウンさん、白い鳥だったんですよ!見たことがなかったので!」
    ズ「白い鳥?」
    は「大きい鳥さんが白かったんです!それを追いかけて叩きました!」
    ズ「ビックビル?」
    ラ「はい。アルビノっていうんですかね?あれ」
    ズ「うわあああ〜っっ、もう、もうっ」涙

    み「あらま。これは迷子紐も真面目に検討する必要があるかもしれませんねえ。もう少しお手軽な方法も考えてみますよ。危なっかしいんで」
    ズ「ありがとう。頼む。本当に頼む」
    オ「花筏は愛されているのだな」
    ラ「オウミさん、この場でその感想はちょっと不適切だと思います」
    は「えへへ〜」


    ○その11
    ラ「大蛇からこんな牙が取れるんですね。ズイウンさんの星術ってすごいです…」
    ズ「だけど火力が出せるようにちゃんと調整はしてないんだ」
    ラ「でもこんなふうに自在に操るのは初めて見ました」
    ズ「真っ直ぐだねえ」
    み「普段からそのくらい素直ならかわいいんですけどねえ」


    ○その12
    み「ナマズ、あっさり捌けましたね」
    は「私が斬るの頑張りましたから!」
    み「私も斬るのは頑張りました」
    オ「皆頑張ったな」
    ラ「含針頑張りました」
    ズ「通常攻撃頑張ったよ」
    オ「忍びも術師もよくやった」
    み「術師は頑張ってないと思います」


    ○その13
    は「これから海の底にいくんですか?」
    ズ「行くのは久しぶりだね」
    は「はい!タカラブネ君と一緒にお魚を見たところなので楽しみです!」
    ズ「花筏はタカラブネ君が好きだな」
    は「はい!昔は一緒に訓練したこともあります!その時からなんでもできちゃうんですよ!すごいんです!」

    ズ「憧れの人?」
    は「そーなんです!私もあんなふうになりたかったなあ」
    ズ「タカラブネ君は本当にすごいんだね。普段の活躍からもよく分かるよ」
    は「でしょう?分身して、気配を消して、っていうのができるんですよ。いいなあ」

    は「でも今の私はいっぱい斬ることができるようになりました!これってワタシができなかったことなんです!だからとても嬉しいです!」
    ズ「そうなんだねえ」
    は「誰かの役に立てるのって楽しいですね!」
    ズ「楽しいことだよね。でもたまには休むんだよ」

    は「何で今お休みの話が出るんですか?」
    ズ「心ってのはちょっとお馬鹿さんなところがあってね。体の方はもう辛いのに心が張り切りすぎちゃって、辛さに気づけないこともあるんだ。だから疲れてなくても区切りをつけて休むことは大切なんだよ」

    は「それは斬ることよりもですか?」
    ズ「体調を崩したら武器も握れなくなるよ?」
    は「本当に?」
    ズ「本当だよ。僕はそれで何回も後悔しているんだ。あの時しっかり休めば良かったなあって」
    は「ズイウンさんはお年寄りだからですよ」
    ズ「まだ中年くらいだよ」

    ズ「とにかく、もう寝る時間なんだ。日を跨ぐと朝が辛いぞ?ほら布団に入って、目を閉じる」
    は「つまんないです」
    ズ「僕が寝たらもっとつまらないよ?」
    は「たしかに。じゃあ、寝ます」
    ズ「うん、僕も寝るからね。おやすみ」

    は「ズイウンさん」
    ズ「なんだい」
    は「ちゅうねんってなんですか」
    ズ「それは明日教えるから。寝ようね」


    ○その14
    オ「ここ第二層は気の滅入るイベントがあった気がする」
    み「人間だと思っていた女の子が機械兵だった、とか?」
    オ「それではないが、ただあの耳は耳当て程度では隠れんと思う。不思議だ」
    は「キカイだから興奮する人もいるらしいですよ」
    み「妙なことを吹き込まれましたね」


    ○その15
    み「もうそろそろ一騎当千してみますかね。花筏さん、よろしくお願いします」
    は「はい!」
    オ「俺も気になっていた。そこの古代魚で試し斬りをしてみせよ」

    オ「怖かった」
    ズ「餅つき※みたいだったね」
    オ「あんな野蛮な餅つきがあってたまるか」

    ※おそらくギルメンの誰かが臼と杵で餅をついたので知っている


    ラ「オレが分身すれば一撃分増えますよ」
    み「唐突になんですか?一騎当千の話?」
    ラ「含針だって6本になります」
    み「雑魚戦の話されても困りますけど」
    ラ「着火役にあいつを使わなくてもいいじゃないですか」
    み「そういう面倒臭いのはオウミ様にやってもらっていいですか?」

    ラ「すみません。でも」
    み「甘えられても困る、と直接言わなければ分からないのですか」
    ラ「わ、分かりました。やりません」
    み「二度と」
    ラ「に、二度とやりません」
    み「はい、分かりました。ではそのようにお願いしますね」


    ○その16
    み「花筏さん、どこ行くんですか」
    は「ヤドカリです!小さいやつ!」
    み「花筏さんにどこかに行かれると一騎当千できないんですが」
    は「はい!」
    み「私がいつ一騎当千するか分からないので、花筏さんは私の近くを歩いてください。その方が歌も合わせやすいでしょうし」

    は「分かりました!ヤドカリ見てきます!」
    み「ヤドカリはさっきそこのワニに食べられてしまったみたいです」
    は「ええ⁈ヤドカリさん!見たかったのに!」
    み「じゃあそのワニをやっつけましょう」
    は「ヤドカリさん〜!」

    オ「さすがのあいつでも苦戦しているか」
    ズ「いやでもだいぶはぐれなくなってきたよ。助かる」

    み「ワニの腹裂いたらヤドカリさんいるかもしれないですよ」
    は「じゃあ斬ります」

    ズ「でも変に影響されないかだけはとても心配だなあ………」


    ○その17
    ズ「片っ端からFOEを蹴散らしていくのか?この調子で」
    み「オウミ様はあれで人助けとか好きなんですよ。動物助けるよりはマシじゃないですか」
    ズ「ふうん。それでこれはどのくらい人助けになっているんだ?」
    み「気持ちは軽くなります」


    ○その18
    は「深都でお泊まりするのは初めてですね!」
    ズ「お使いさせられてるかわりの特典だね。これが滅多にない機会になるかどうかは、あの人達の考え次第だな」
    は「オウミさん達?」
    ズ「いいや、この国を治めてる王様達のことだよ」

    は「何回でも泊めてくれたらいいですね!」
    ズ「景色は綺麗だもんね。ちょっと寒いけど」
    は「じゃあ私が手を握ってあげます!お年寄りは大切にするんです!」
    ズ「ありがとう。そのアドバイスくれたのは誰かな」
    は「みつうろこさんです!」

    は「あったかいですか?」
    ズ「あったかいよ」
    は「お腹にくっ付いたらもっとあったかいですか?」
    ズ「そこまではしなくていいよ」
    は「はい!」
    ズ「だからね、懐に入り込みに来てくれなくていいんだよ」

    は「あったかいです」
    ズ「そうかい、それは良かった」諦め
    は「ズイウンさんのそばが1番好きです」
    ズ「なら飽きるまで居ればいい」
    は「そうしたいです」
    ズ「君が帰る場所はもうここなんだ」
    は「わからないです」
    ズ「そうなるんだよ」

    ズ「花筏、眠った?…寝てるな。普段からこのくらいあっさり眠ってくれたらなあ。本当に。切実に。…深都に住めたら引っ越そうかなあ」


    ○その19
    み「オウミ様、温泉はみんなの物なので体を洗い髪を結い上げてから浸かるのですよ」
    オ「湯に入れるのは足だけだ。こんなところで丸裸になれるわけなかろう」
    み「恥ずかしいから?」
    オ「俺が火猫に腹を裂かれて死んでもよいというなのならやっても良いぞ」
    み「ごめんて、怒んないで♡」


    ○その20
    み「サブ職解禁されましたね。刀返してください」
    ラ「え、えーと、あともう少しの間…」
    み「しかしこの袋の中の突剣が邪魔で仕方ないのですが」
    ラ「あ、ほら!使っている間に少し汚れてしまいました!洗ってから返します!」
    み「いやメンテナンスに出しますので下手にいじらないでください」

    ラ「突剣のスキルが育ちきってないです!」
    み「忍者に刀を使うスキルなんてないでしょう」
    ラ「新しい地形に挑むので、ここで使い勝手の違う武器にしたら危ないですよね!」
    み「この突剣ならあなたの手垢ベッタリですよ」
    ラ「火力が」
    み「あなたに火力は求められていません」

    み「他に言うことはありますか」
    ラ「も、もうしばらく貸してください…」
    み「一体何に固執しているんですか?」
    ラ「みつうろこさんの刀を堂々と振るえるこんな機会、後にも先にも無いと思うので…」
    み「甚だ理解不能ですね」
    ラ「そこをなんとか」

    み「…まあよいでしょう。その執着心を忠義と受け取ります。この意味をしっかり考えて行動しなさい」
    ラ「ありがたく存じます!」
    み「ちなみに私よりも行動が遅れた場合はその数だけ殴ります」
    ラ「がっ、頑張りますっ」
    み「ふむ」


    ○その21
    み「深都に寝泊まりするようになってから寝る時に何者かに絡みつかれることが多くなり非常に不快です」
    ラ「え!そうなんですか?一体何者なんでしょうか!」
    オ「深都は俺らに取って未知の場所だ。どんなモノがいてもおかしくはない」
    ラ「幽霊とかだったら…怖いです!」
    み「白々しいですね」


    ○その22
    ズ「ラブネ君、いろいろと訊きたいことがあるんだ。花筏のことで」
    ラ「お茶に誘ってくださったのはそういうことなんですね。いえむしろ人払いしていただけて安心してます」
    ズ「花筏は、元はあんなに考えなしの子ではなかったんだろ。どうしてあんなふうになってしまったんだ」

    ラ「現場を見ていないので本当のところは分かりません。でも、一定の人等は鉄砲玉になるらしいです。彼女とはいつの間にか会わなくなったので、違う役処を与えられたんじゃないのかなと思うことはあります」
    ズ「どうやって鉄砲玉に仕立てられるか、方法は?」
    ラ「それも、オレは見てないので分からないです。でも碌な目には遭わされてないですよね」
    ズ「一定、というのは、なにか基準があるのか?成績とか」
    ラ「はい。忍として能力が足りていないモノ達です」

    ズ「養成所かな。そこにはどうやって人が集められるんだ?」
    ラ「孤児を連れてくるのだと思います」
    ズ「君は?」
    ラ「覚えてません」
    ズ「花筏と一緒に入ったかどうかも分からないか?」
    ラ「はい」

    ズ「じゃあ施設内で仲良くなったのか」
    ラ「仲良くなんてありません。今も昔も」
    ズ「でもそんな場所でお互いの顔と名前を知っていたんだろう?花筏の様子からしても会話一回きりの間柄じゃないだろ」
    ラ「会話はしてました。多分他の人よりも。でもそんな程度です」

    ズ「そうか。そのときの花筏はどんな子だった」
    ラ「今より落ち着いてました。馬鹿でトロかったですけど」
    ズ「どんなふうに馬鹿だった?」
    ラ「何が一番最善の選択かも分からない、度胸もない、根っからの馬鹿でしたよ」
    ズ「うん、なるほどなあ」

    ズ「逆に君から僕に訊きたいことはないのかい?」
    ラ「特には。…あ、でも、その、あいつのこと、面倒見きるつもりでいるってことですよね?」
    ズ「そのつもりだ」
    ラ「じゃあ、卑怯ですけど、お願い、します」

    ズ「うん。最後に君たちの本当の名前を聞きたいんだけど、覚えてる?」
    ラ「どっちも忘れました」
    ズ「そうか。花筏も前の名前で呼ばれたくないかもしれないしな。今日はありがとう」
    ラ「いえ。これからもよろしくお願いします」


    ○その23
    ズ「君ら、普段はどう寝てるの」
    オ「3人で寝ている」
    み「本当は2人だけで寝たいんですけどね」
    ラ「オレと2人で?照れます。イテッ」
    み「深都は寒いと言うから渋々同じ布団を使わせてやっているというのに」
    オ「まあタカラブネは野良猫のようなものだからな」

    ラ「野良ぁ⁈」
    み「そんな誤魔化しに流されません」
    オ「誤魔化したつもりもない。野良猫は人の家に居着いて寝ると聞いたぞ」
    ズ「ラブネ君は人だよ」
    み「世の中には獣と交わりたがる人々もいるのですが」
    ラ「オレは野良じゃありません!」
    オ「1人づつにしてくれ」

    オ「ではまずはタカラブネから聞かせてくれ」
    ズ「偉そう」
    ラ「オレは野良じゃなくて家で飼われてるつもりです!それともオウミさんはオレをペットとして認めてないんですか?」
    オ「いや、大切なペットだ。これからも共に過ごそう」
    ラ「やったー!」
    ズ「待って」

    ズ「オウミ君は変なところで便乗するんじゃないよ。ラブネ君は人だろ?あと君もそんなんでいいのかい」
    オ「便乗?なにがだ」
    ラ「だって一緒にいていいって言われましたし」
    ズ「え、ラブネ君はともかく、オウミ君ってこういう子なの?」
    み「自分がされたことを他人にやっちゃうアレなんですよね〜」

    オ「そっちは何に怒っているのだ?」
    ズ「君すごいよ」
    み「獣と寝ないでください」
    オ「すまん」
    ズ「そこで謝るな」


    ○その24
    オ「ずっと考えていた。この海底洞窟のマグマも全て地図に書き記したいと」
    み「え、今それやんですか?ボス直前ですよ?」
    オ「探索の進みが早いと嘆いていたのはお前だろう」
    み「休みを増やせとは言いましたよ」
    オ「レジャー休暇だ」
    み「めっちゃ嫌です」

    3日後
    オ「ついにこの海底洞窟のマグマを描ききった!」
    ラ「黄色いですね。目に悪いです」
    み「そんじゃあオウミ様、深都で涼みましょう」
    オ「何を言っておる、ボス戦の手前だぞ?ここで進まなくてどうする」
    み「その状況で寄り道始めたのは誰ですかねえ」


    ○その25
    み「アンドロの名前なんにします?オウミ、ミィちゃん、ミィ子、悩みます」
    オ「とりあえず今出たものは全て却下だ。吐き気がする」
    み「船の名前決める時も吐いてましたね。船酔いじゃなかったんですか」
    オ「地面の上でどうやって船酔いになれる」

    み「んじゃ船の名前にあやかってセイガイハにしましょう」
    オ「よいのではないか」
    ラ「それはいいんですか」
    オ「どういうことだ?」
    み「こんにちはセイガイハ、返事してみなさい」
    ガ「、んビョー」
    み「わ、かわい子ぶってる〜。ムカつきますね」


    ○その26
    み「この場所、酒場で受けた依頼で立ち寄りましたね。三角形が3つでラブネさんがはしゃいでましたっけ」
    オ「あの頃からタカラブネはお前にまとわりついていたな」
    み「妬いてましたか?」
    オ「いや、お前を慕う者が出来たことに安心したな」

    み「オウミ様は超絶卑屈でしたからねえ」
    オ「ああ、毎日死ぬことばかり考えていた。だがお前をこの世に1人残してしまうのは悪手だとも思っていた」
    み「心中しようとしてくれていたと?」
    オ「いや」
    み「でもあの世まで一緒に行きたかったんですよね?」
    オ「いいや、お前を止める者がいなくなったら街一つ滅びかねん」

    み「ふーん」
    オ「タカラブネならお前の強さにもついていけるかもしれんな」
    み「そう思いますかあ?」
    オ「最近は特にそう思う」
    み「なるほど〜。ですって、ラブネさん」
    ラ「早く粉蒔いて、声聞くの済ませちゃいましょうよ」
    み「生意気ですね」


    ○その27
    ズ「ラブネ君、君はみつうろこさんにいいように使われているけど、それでいいのか?」
    ラ「え、はい。みつうろこさんには面倒を見てもらってますので」
    ズ「それはつけ入れられているだけだよ」
    ラ「……ああ…。でも構いません。本来ならもう死んでいる身なので」

    ズ「あの狙われてた時?」
    ラ「そうです。ズイウンさんも協力してくださいましたよね。その節は本当にありがとうございました。あの日は自分ではどうにもできなくて、それでオウミさん達のところににげましたけど、追い返されるだろうと思っていました。まさかみつうろこさんが助けてくれるとは思いませんでした。多分、オレが刺客を宿まで連れてきてしまったからだとは思いますが」

    ラ「だから今更みつうろこさんに見捨てられたり、殺されたとしても、仕方ないことです。それに今が一番恵まれているので、感謝しかありません」
    ズ「そうか。君の話にも理はあるね。だけど頼れる先はもっとあることは知っておいてね。ギルドにはみつうろこ君以外にも人はいるだろう?」
    ラ「はい。その時が来たら、考えます」


    ○その28
    ズ「ラブネ君と君らはどんな関係なんだ?」
    み「妙に懐かれてるくらいで、ギルドのメンバーってとこですかね」
    ズ「君たちを拠る辺にしているみたいだけど、君としては今後どうするつもりなんだ」
    み「使えるなら使って、オウミ様の益にならないならお別れします。あなたこそ花筏さんとは?このまま嫁にするんですか?」
    ズ「……まあそれもやぶさかではないかな」 

    み「若くてあそこまで無垢なら仕込み甲斐もありそうです」
    ズ「そうだね」
    み「どうするんですか?」
    ズ「どうしようかね」
    み「怖いですよ」
    ズ「非常に不快だよ。彼を利用しようとしていることもさあ。まあそっちが本題なんだけど。僕は協力したよ」

    み「どうも。最近あの忍者につけられているようでして、気が抜けないんですよね」
    ズ「慕われていて良かったじゃないか」
    み「花筏さんにトイレまでついていかれるようなものですよ」
    ズ「むしろその方が安心する時もある」
    み「それはそれで大変ですねえ」
    ズ「それで?話を元に戻そう」

    み「ああはい。えーっと、私が彼を利用していることについてでしたっけ?不快に思うもあなたの自由ですけど」
    ズ「身近にそういうことをしている人がいたら止めたくなるんだ」
    み「では今晩から別室に泊らせましょう。指導もやめます。私には忍者の領分など分かりませんので」
    ズ「拗ねないでよ」

    み「何を尋ねたいのか不明瞭ですよ」
    ズ「本心は君とラブネ君を引き離したい。でもそれはラブネ君とオウミ君もか?望まないだろ。なら騙していることはバラしてよ。その上で指導しろ」
    み「それだとあの子の意欲が下がりそうです。断ります」

    ズ「じゃあ僕から伝えておくよ」
    み「…分かりましたよ、狙いを話します。私が欲しいのはオウミ様の忠実な盾です。なのであの人肌への執着は必要なのです。それにオウミ様も大変可愛がっています。2人が一緒に居続けるメリットはお互いにとって大きいと思っています。その実現のためにも、あの子には心身共に強くなってもらわなければならない」

    ズ「なるほどねえ。そう考えることもできるね」
    み「意外と優しいでしょう」
    ズ「楽しみにしてるよ。上げ落としだけにはならないようしてね」
    み「上げ落とし?知らない言葉です」
    ズ「白々しい」


    ○その29
    み「最近のオウミ様は木が黒幕なんじゃないか、とかフカビトも被害者では?とか言ってて楽しそうです」
    ズ「良かったね」
    み「呑気ですね。今まで以上に休みの日がなくなりますよ」
    ズ「今ですら10日に一度なのに?オウミ君は正気かい」

    み「オウミ様は今までに自分が味合わされた体験を標準だと思っているので、衣食住が揃ってるこの環境ならそのくらいやります。そのうち5時間寝れてるから十分とか言いだします」
    ズ「それをなんとかするのが君だろう」
    み「でもそんなオウミ様もかわいいなって」
    ズ「ギルド抜けようかなあ」


    ○その30
    は「タカラブネくんはみつうろこさんが好きなんですか?」
    ラ「だとしたら何」
    は「タカラブネくんはクールなので珍しいですね!」
    ラ「オレがあの人のこと慕ってるのがそんなにおかしいのか」
    は「どうして怒るんですか?」

    ラ「…怒らせたくないならあの人の話を持ち出すな」
    は「じゃあオウミさんの話は」
    ラ「もう喋んな」
    は「あ、タカラブネくん。蛇みたいにどっかいっちゃった」
    ズ「人ごとに触れてほしくないところは違うからね、仕方ないさ」
    は「ズイウンさん」

    ズ「花筏もこれからラブネ君にその話題を振るのやめようね」
    は「はい」
    ズ「まあ多分今が彼の分岐地点なんだよ。それであまり余裕がないんだろう。しかも定まるまでに時間も必要そうだけど、そのうち落ち着くよ」
    は「その時まで私生きてますか?」
    ズ「うーん、迷宮内だとねえ、断言できないねえ」


    ○その31
    み「もうそろそろ突剣持ちなさい」
    ラ「は、はい。勘も取り戻しましたし、突剣持ちます。こちらの刀、今までありがとうございました」
    み「どうも。袋の中に突っ込んどきますか」
    ラ「ええ!帯刀しないんですか⁈」
    み「わざわざ返ってきた方で戦う理由はありませんし」


    は「斬ります!」
    み「お願いします」
    ラ「野蛮ですね」
    ズ「戦闘中だよ」
    ラ「すみません」
    ズ「あとで話聞こうか?」
    ラ「大丈夫です」
    ズ「そうかい」


    ラ(いつになれば認めてもらえるんだろう。今でもオレはギルドの一員ではないのか?)
    オ「タカラブネ」
    ラ「あ、オウミさん。なんですか」
    オ「ズイウンからお前が悩んでいると聞いた。少しでも吐露すれば楽になるのではないかと思ってな」
    ラ「オウミさん口軽いじゃないですか。1番相談役に向いてないですよ」

    オ「言ってくれるな。だが確かに、あいつに訊かれたら応えてしまうかもしれぬ」
    ラ「はあ。そういえばなんでオウミさんはみつうろこさんの名前を口にしないんですか?」
    オ「罪悪感のような気持ち悪さが湧いてくるからだ」
    ラ「え、なんかしちゃったんですか?」
    オ「うむ。俺はあいつからの期待に応えられなかった」

    ラ「よりによってオウミさんが?1番そんなことはないと思うんですけど」
    オ「前の俺はもっと幼稚で酷かった」
    ラ「幼稚ですか」
    オ「左様。他人を受け入れることが恐ろしく、誰彼構わず喚いたものだ。だがそれでもあいつはついてきたのたがな。俺が自覚できていない何かをあいつは好んでいたようだ。もしかしたらそれは、僅かなりに親から受け継いでいた王族の矜持だったのかもしれぬ」

    ラ「その矜持というのは、気高さ、という意味で捉えていいんでしょうか」
    オ「尊大だったのは違いない。ふふ。しかしまあ俺は俺自身の一番の価値を、あろうことか無くしてしまったらしい。己の欲ばかり求めた罰だ。だが無くしたことにも気づけなかった。だから選ばれた者として新たな使命を果たそうと呑気に船に乗った。滑稽だな」

    ラ「わ、分かんないんですけど、とりあえず新たな使命ってなんですか?あと船に乗ったとか、いつの話なんですか」
    オ「この島に向かう船だ。“新たな使命”というのはこの街の世界樹に挑むことだ。あやつと出会ったのはここにくる前、他の大陸の世界樹に挑もうとしていた時であった。そうだの、ふむ、もっと前まで遡って話すか」

    オ「俺は兄弟の末であり、2人の兄がいる。俺は元々出来が悪く、政などとても任せられないと、国力増強のための技術を探す役割を与えられた。せめての温情だな。それで様々な場所に行き、調査をしていた。だが当然何かを得ることはなかった。この街に来る前に挑んだ最初の世界樹は、最後の賭けのようなものであった。この時にあいつと出会い探索をしたのだ。しかしここでの結果も無惨に終わった。もうこの時点で俺には誇れるものは何も残っていなかったのだろう」

    ラ「その時のみつうろこさんは?」
    オ「俺の国まで勝手についてきたな。そこから1年弱会わなかったので、その間の奴の心変わりは分からぬ」
    ラ「みつうろこさんの期待に応えられなかったというのはそのあと…ですか?」
    オ「ああ。船の上でだ。俺の化けの皮が剥がれてしまったらしい。あいつのあの目は、おそろしかったなあ。あそんでいるときの目でもなければ、興味をなくしたときの目でもなかった。よくおぼえている」

    ラ「オウミさん、変なこと聞いてすみませんでした…」
    オ「うん?大したことではない。全て俺の中だけの問題だからな」
    ラ「いえ。……でも、というのはおかしいですが、おかげで先にはまだ道があることを知ることができました。お話、ありがとうございました」
    オ「仰々しいぞ」

    ラ「オレはオウミさんに会えて良かったです」
    オ「どうした、さっきから」
    ラ「長い話を聞いていたから眠たくなってしまったんです。昼寝付き合ってくださいよ」
    オ「仕方ないな。横になればよいか?」
    ラ「そうそう」
    オ「あいつに見つかっても知らんぞ?」
    ラ「でも共犯なんで」
    オ「ふふ、そうか。うむ」



    ラ「みつうろこさん、あの、船の上で何があったんですか」
    み「誰から聞きましたか」
    ラ「オウミさんからです」
    み「そうですか。本来ならあなたの役割的にも自分で情報を集めて勝手に気づいてほしいところですが、オウミ様の地雷を踏み抜かれるのも嫌なので特別です」

    み「ラブネさんはオウミ様が自分の国でそれは酷い目にあわされたことは知ってますよね?」
    ラ「詳しい容態は知らないですが、一応は」
    み「船でそれが私にバレたんですよね。傷だらけで。その時にオウミ様がオウミ様に見えなくて、うっかりそのまま言っちゃったんですよ。それがなかなかショックだったみたいです」

    ラ「原因は分かってるんですね」
    み「オウミ様のことですもん。分かります」
    ラ「後悔とかしないんですか」
    み「それ今どんな気持ちで訊いてますか?」
    ラ「え?ちょっとムカついてますけど」
    み「ほうほう」
    ラ「なんすか」
    み「いえ。まともに育って良かったですね」
    ラ「ふざけないでください!」


    ○その32
    オ「噂に聞いていたシンとは蜃のことだったのか」
    み「オウミ様、あれなんに見えますか」
    オ「長い黒髪の女性か」
    み「全裸ですか?」
    オ「いや、胴は晒しているが袖は腕に通している」
    み「じゃあ同じ物を見ているっぽいですね」

    み「どうせ幻だと思うので、せっかくなら金髪の美女になってくれればよかったのに」
    オ「花筏か?」
    み「は?」
    ズ「ん?」
    オ「すまん。…ところでタカラブネが妙に静かだな」
    ラ「え⁈なんもないすけど」

    み「局部は霞で隠れているのでもしかしたら水着くらいは着てるかもしれないですよ?」
    ラ「もっとダメで…、冗談です」
    み「ほーん」
    ズ「なるほど」
    は「何がダメなんですか?」
    オ「着衣の方が良いのか」
    ラ「離反しますよ」

    み「オウミ様で全裸耐性つけといて良かったですね」
    ラ「うるさいです」
    オ「お前はどうなのだ?多少は布を纏っていた方が良いか?」
    み「え?俺に?え?」
    は「戦わないんですか?」
    ズ「ちょうど混乱攻撃がきたね」
    み「え?オウミ様?」

    み「うわ〜!迷う!ああ!でもその布巻いてるやつが脚がいい感じに露出しそうですよ、でもこっちの」
    ラ「オウミさん、なんでこんな時にあんなこと言うんですか」
    オ「純粋な疑問だった。悪かった」
    み「え〜、じゃあまずその鎧を剥ぎましょう!」斬り!
    オ「いっ、」
    は「私行っちゃいますからね」
    ズ「うん行きな」


    ○その33
    み「オウミ様、糸」
    オ「なんだ?また買い忘れたのか。あれほど買っておけと言ったのに」
    み「俺は買い忘れただけなので、そもそも他人に任せっきりだったオウミ様よりは罪は軽いわけですね。裁キック!」
    オ「いっ」
    ズ「迷宮もだいぶ深部に進んでるんだから戯れるのは慎んでくれないか?」


    ○その34
    み「第五層まで来るの早かったですね」
    オ「そうだな。100年も動かなかったものがこの一ヶ月で急変し、おそらく彼らは後戻りできないところまで来てしまっただろう。少し申し訳ないな」
    み「でも俺はこの光景を再び見れて良かったとも思っています」
    オ「お前が?決着はついた方がいいということか?」
    ラ「鏡面の床のことかと」
    み「しっ!」
    オ「ああ、結界内の…。白亜の森は美しいなぁ」


    ○その35
    み「五層まで来たので、今までの介錯を振り返ってみましょう」
    ラ「初介錯はオレでしたね」
    オ「俺も何回か斬られたな」
    は「私が斬ってたモンスターを勝手に斬られるんです!ひどいです!ずるい!」
    ズ「花筏を切り捨てた時は殺してやろうかと思ったよ」

    み「この感じですと、私の介錯に感謝してるのはラブネさんとオウミ様という感じですか。言ってて思ったんですが、介錯と感謝って音が似てますね」
    ラ「は?」
    オ「俺はお前の振る舞い全てを諦めておるが、信用は下がるということを覚えておいてくれ」
    み「ガチギレオウミ様じゃん」


    ○その36
    ズ「テントで休むという選択肢も悪くないね」
    み「前の人達からは文句言われることが多かったんですけどね」
    オ「俺の体に無闇矢鱈と触るからだ。やめろ」
    は「でも触られたら気持ちいいですよね?私はズイウンさんに触られたらそう思います!」
    み「へー」
    ズ「頭とかね。撫でられるの好きだもんね花筏は」

    み「花筏さん、頭以外はどこが好きなんですか?」
    は「全部好きです!」
    ズ「背中とか腕とかね」
    み「お腹は?」
    は「ズイウンさんは怪我してる時しか触ってくれないです」
    み「つまんねー」
    ズ「僕はそのあたり本当に気を使うんだ。揶揄うのは今後よしてくれないかな」

    オ「そういえばタカラブネはいつまでそこに立っている。寝るなら来い」
    ラ「いや、大丈夫です」
    み「しおらし。今朝のことが嘘みたいですね」
    は「なにかあったんですか?」
    み「あーいえ、ただタカラブネさんが寒いといってずっとオウミ様に抱きつきっぱなしだったんですよ。それで少し朝の準備が遅れてしまいまして」

    は「はへー」
    み「まあいつものことですから」
    オ「おい」
    み「はいはい、喋りすぎました」
    ラ「そうですよ。やめてください」
    ズ「君たちの方が余程爛れているじゃないか」
    オ「だ、だがな、タカラブネは体温が高いのだ。それにコレのように気持ち悪さもない。だので俺がタカラブネを抱いて寝るのはおかしなことではない!」
    み「オウミ様ぁ?」


    ○その37
    は「オウミさんはいろんなお話を知っていると聞きました。楽しいお話が聞きたいです!」
    オ「あまり楽しいものは浮かばないが、そうだの、滑稽なものならいつくかあるぞ」
    は「悪を成敗してください!」
    オ「そういう感じではないが…」

    オ「……というわけで皆スープの具になってしまったそうだ。という話だ」
    は「なんでソーセージとじゃがいもと豆が喋るんですか?」
    オ「なぜだろうな。この話を作った人物にとって、なんらかしらの意味を持つものだったのかもしれん」
    は「意味があるとどうなるんですか?」

    オ「ううむ、話自体の意味が…伝わることが変わってくるかもしれない。例えば…良い例えではないが、手帳があったとして、それが俺の物かズイウンの物かで、思い浮かぶことは変わらないか?」
    は「えーと…」
    オ「読んでみたい、だとか、見たことがある、だとか。どうだ」
    は「あ、でも中身を見ようとして怒られたことがあります!」

    オ「では俺の手帳は見てもらっても全く問題ないものとしよう。こうなると2つの手帳でも、扱いが変わる。ズイウンの手帳は読んではいけないのもの、俺の手帳は読んでもいいもの」
    は「オウミさんの手帳読んでないです」
    オ「好きに読め」
    は「わーい」

    オ「俺の手帳はこうして読んでも怒られないが、ズイウンの手帳は読んだら怒られる。だいぶ印象が変わらないか?」
    は「そうかもしれません」
    オ「うむ。お前の質問への答えとしては微妙ではあるがそういう感じのことだな」
    は「世界樹の技術…ってなんですか?ここの」
    オ「それは俺が探し求めているものだ。俺の国ではな……」


    ズ「失礼、花筏はここに居るかい?」
    は「ズイウンさん!」
    オ「迎えが来たようだな」
    ズ「花筏の相手をしてくれてありがとう」
    は「オウミさんのお話はよく分からなかったです。センリョクを持ち帰るとか」
    オ「俺が好きに喋っていただけだ」
    は「リンゴクが悪なんですよね?」
    オ「我が国の立場から見ればな」

    ズ「だいぶ踏み込んだ話をしたみたいだけど、大丈夫なのかい」
    オ「大丈夫だ。例えあの国の機密情報が漏れようと漏れなかろうと、何も変わらん」
    ズ「そ、そうか」


    ○その38
    は「オウミさま、これなんですか」
    オ「墓かもしれん。触れぬように」
    は「はーい。オウミさま、これはなんですか」
    オ「ワープするための門だな」
    ズ「鳥居ね」
    ラ「みつうろこさん、あいつオウミさんに懐きすぎですよ」
    み「様つけてるだけあなたよりマシですが」
    ラ「うっ」


    ○その39
    オ「氷竜のいる部屋に大蟷螂を三体放ってくるとは、なかなかやってくれる!おい、首を切られてやられるような柔ではないだろ?」
    ズ「首を切られたら普通は死ぬよ」
    み「氷竜も多分カマキリに驚いてると思います。斬ります」
    ズ「みつうろこ君が斬り終えたら一度引き返そう。立て直しだ」
    は「カマキリってハリガネムシがいるんですよね!」

    オ「いてて」
    ズ「君も首に一撃もらって生きてるなんて、豪運だねえ。中まで切れてなかったみたいだけど、垂れてる血は拭いときな」
    み「私も初手でやられましたが、最後は斬り殺したので褒めてくださっても良いですよ」
    ズ「僕の治療技術のおかげだね」
    オ「タカラブネはどうだ?」
    み「ネクタル使ってやりましたけど、意気消沈してますね」

    ラ「別に、避けるべきところを避け切れなかったオレの未熟さが悪いだけです」
    み「まだ誰も何も言ってませんけど」
    オ「お前は脚をやられていたか。これは帰還した方がよいかもしれん」
    ラ「ああそうですか、オレのせいですか」
    オ「発言があべこべだぞ…」

    は「私はまだ元気です!あのカマキリの中からハリガネを探したいです!」
    オ「は、花筏」
    ラ「ハ?なら1人で探してこいよ」
    は「タカラブネ君も行きましょうよ」
    ラ「うざ。そうやって無知を装ってズイウンさんに取り入った?みつうろこさんにも二刀だからって近づいて、オウミ…さんにも懐いたりして」

    は「え?」
    ラ「なんなのお前、居場所作ろうと必死になっちゃってさ。でも成功はしそうだよな。お前は可哀想だ。さぞ可愛がってもらえるんだろな」
    は「タカラブネ君?怒ってますか?」
    ラ「気持ち悪い。嫌いに決まってんだろ、お前のことなんか」
    は「怒って」
    ラ「黙れ!消えろ!」

    間「……」
    ラ「あ…」
    み「なんで今それをやりますかね」
    ラ「すみません。オレが消えます」掻き消え!
    オ「ええ⁉︎な、なにも今消えなくても…」
    み「青春ですか」
    オ「言ってる場合か!」
    ズ「仕方ないから帰ろう。こんなとこで死ぬような子じゃないだろ」

    深都 宿
    オ「タカラブネは、まだ戻らんか」
    み「すぐに戻ってしまったら格好つきませんしねえ」
    オ「心配ではないのか?」
    み「本人が勝手にやったことですので」
    オ「だとしてもだ。もっと話を聞いてやればよかったのだろうか…」
    み「オウミ様にやらせたら悪化しそうですけどねー」

    カタ
    み「オウミ様、窓見といてください」
    オ「なにかあったか?ドアを開いて」
    み「廊下で物音がしました。おやこれはラブネさんの突剣」
    オ「な、まさか元の雇い主の手下どもにやられたか?」
    み「どーでしょうね。さむさむ、やっぱ廊下は冷えますね」
    オ「戻ってくるな、痕跡がないか探りにいくぞ!」

    ※タカラブネは元々別の雇い主から派遣された諜報者だったが、切られたのでギルド一本筋になった。

    オ「血痕はないか?」
    み「剣にも廊下にもそのようなものはありませんでした。どこ探すんですか」
    オ「お前の野生の勘でどうにかしろ」
    み「私はしがないただのショーグンなんですけど。あっちの方からラブネさんっぽい臭いがしますね」
    オ「海底洞窟入り口か…」

    オ「まさか単身で迷宮に潜り込んだわけではないだろうな」
    み「オウミ様ならどう家出しますか?」
    オ「俺なら最深部まで降りて元凶を叩きに行く。時間逆行の可能性にかける」
    み「バカ。アホ。バカ。じゃあとりあえず今行ける一番深い所に行きましょう」

    五層
    オ「タカラブネがここまで降りているなら、不安だな」
    み「早く帰りたいですよねえ。ラブネさーん、早く出てきなさい」
    オ「それで出てくるなら良かったんだが」
    ラ「はぁい…」
    オ「うわあ!!出てきた!!」

    オ「タカラブネ!」
    み「ラブネさん、あなたはオウミ様を殺したかったんですか?」
    ラ「ま、まさか探しに来られるとは思っていませんでした」
    み「オウミ様がそんな選択をすると思ったのですか」
    ラ「申し訳ありません。迂闊でした」
    み「迂闊?故意だったのでしょう?」
    ラ「違いますっ」
    オ「なあ、深都に戻らんか?」

    み「いいえ、オウミ様を準備も碌にしていない状態でここに来させてしまったことを、この者は命をもって償わなくてはなりません」
    オ「俺はそこまで偉くないぞ」
    み「私の気が済みません」
    オ「ただの私刑ではないか」
    ラ「いえ、どんな罰も受け入れます」
    オ「面倒臭い酔っ払い供よの…」

    オ「おい、この中で一番偉いのは誰だ」
    み「オウミ様ですかね」
    オ「そうか。ではタカラブネよ、お前はこのアスカロンを持たずにここまで来たようだが、何がしたかった?」
    ラ「時間逆行の可能性にかけ、最深部まで降り元凶を叩きに行こうとしておりました」
    オ「それを無謀という。もう2度と自殺紛いの行動をとるな。必ず生きて帰るように行動をしろ。歯を食いしばれ」
    ラ「はっ。…………ッッ!」殴られた
    オ「さあ帰るぞ。みつうろこ、これで気は済んだな?」
    み「はい」

    ラ「う、うう、ぐぉ〜っ泣」
    み「袖掴まれたまま道中ずっと泣かれるとマジうるさいんですけど」
    オ「磁軸から宿までの道だ。気が済むまで泣け」
    ラ「オウミざんの、籠手がぁ、おもっだより、いだがったですっ、うわあ〜!」
    み「ほんっとにうるさい、ってか人に捕まってんならしっかり歩きなさい!」
    ラ「うおお〜!!泣」

    宿
    オ「ズイウンはいるか?タカラブネの傷を診てやってくれ」
    ズ「良いけど」
    ラ「…すみません、でした」
    ズ「僕は何も思ってないが、まあ謝る相手は違うかな。とりあえず傷を見せて」
    は「タカラブネくん?」
    ズ「タイミング悪いよ…。花筏、先にラブネ君の手当てをするから、オウミさん達と遊んでて」
    は「はい」

    ズ「手当終わったよ」
    ラ「あの」
    は「タカラブネくん!怪我は大丈夫ですか?」
    ラ「ああ。あの時酷いことを言って悪かった」
    は「どうして謝っているんですか?それより大富豪しましょう!」
    ラ「やらない」

    は「やらないんですか!」
    ラ「オレはやっぱりお前のことは好きじゃない。でも八つ当たりは良くなかった。怒りはもうぶつけない」
    は「好きじゃないですか」
    ラ「そうだ」
    は「じゃあスピードしますか?」
    ラ「やらない」

    は「そうですか」
    ラ「一方的で悪いけど。もう遅いから、おやすみ」
    は「おやすみなさい!じゃあオウミさま、大富豪もう一回やりましょう!」
    オ「いやもう…、ふむ、まああと一回戦ならば」
    は「やったー!」
    ラ「はああああああ????」💢怒💢怒

    3人部屋に移動
    ラ「オウミ…さん、結局大富豪やってるし。えー、みつうろこさん、あの、布団とかって他にありましたっけ?」
    み「ないですね」
    ラ「わあ、じゃあもうひと部屋借りてそこで寝ますね」
    み「もう受付の人寝てますよ。このやりとり怠いんで早くこっちに来なさい」

    ラ「し、失礼いたします」
    み「何も面白くないですね。オウミ様なら部屋を追い出して泣かせて、そのまま一晩外に放置しても良いくらいなのに」
    ラ「歪んでますね」
    み「それにしても運が良かったですね。オウミ様に庇ってもらえて」
    ラ「本当にその通りです」

    み「ラブネさん、もっと寄りなさい」
    ラ「え、はい。…み、みつうろこさん、どうして抱きつくんですか」
    み「寒かったのではありませんか」
    ラ「え、明日雪でも降るんですか」
    み「寂しい思いをさせましたね」
    ラ「い、いえ?べつ、に」

    ラ「オレ、はそんな心配なんか、される立場ではっ、あり、ませんし、ぐうぅ…」
    み「この程度の言葉で泣いてどうするんです。私に懐柔されていることに気づきなさい」
    ラ「はい、はいっ、すみませっ、ありがと、ございますっ、うっ、ひっ」
    み「誰かによく似て、大馬鹿者ですねぇ…」

    み「少し落ち着きましたか」
    ラ「はい。鼻水と涙、すみません」
    み「本当に。それでラブネさん、今後あなたが私達に付いてくるのはいくらでもかまいません。ですが、その心が偽りであるなら死ぬまで隠し通しなさい。嘘が剥がれた時はたとえオウミ様が庇ってもあなたを殺します」
    ラ「はい…。みつうろこさん」
    み「なんですか」
    ラ「みつうろこさん…」
    み「あーもう、すり寄ってきてうざったいですね。こうやって撫でるのも今日限りですからね」
    ラ「ふゔぅ…」
    み「また泣くし」


    オ「大富豪で大勝したら大人気ないと怒られてしまった。タカラブネはもう寝ているのか?」
    み「安心しきってますね。ところでオウミ様、猫を飼うのもありかと思うのです」
    オ「ほう。タカラブネはペットではないぞ」
    み「もちろん愛玩用ではないですよ」

    オ「お前の懐で寝ている姿はこんなにも愛らしいのになあ…。だが可愛がるだけでは勿体無いからの」
    み「オウミ様が優しく捕まえてくださったので、きっとよく働きますよ」
    オ「こいつが力を発揮できるように、俺達が頑張らねばならんぞ」
    み「アハハっ、それは確かにそうです」

    オ「なあ、お前の方が俺よりも人の心を弁えていると思う。こいつのことはちゃんと人として扱えよ」
    み「もちろんです」
    オ「……ならばよい。俺も寝よう」
    み「え、オウミ様、俺の隣で寝ないんですか」
    オ「俺だってタカラブネを抱きたい(ハグ)」
    み「俺はオウミ様を抱き潰したいです」
    オ「潰すな」
    ラ(つ、潰れる…!押さないでください!)


    ○その40
    オ「この木の実は毎度立ち寄ってしまう。良い香りだ」
    み「てことは猿梨の仲間なんすかねえ。食べていきますか」
    オ「うーむ、そうだの。食べよう」
    ラ「これでまたモンスターと連戦になるわけです」
    ズ「嫌だねえ、こういう舐めきった冒険者っていうのは」

    は「握ったら潰れちゃいました」
    ズ「派手にやったね。この布で拭いなさい。それにしてもよく熟れてる。どれ少し凍らせてみよう」
    み「良いですね。さっき他のところで拾った塩も振ってみますか。さて味は。お、美味い」
    は「食べやすくなりました!イタタッ」
    ズ「ゆっくり食べな。ああでもなかなか良い」

    オ「タカラブネも食わんか?」
    ラ「いやほんと舐め腐ってる冒険者って嫌ですね。美味いすけど」


    ○その41
    み「花筏さんはまだ治る兆しはありませんか」
    ズ「なんだい、君なら治せるのか?」
    み「カリカリしてますね。素朴な疑問ですよ」
    ズ「それについてはもう考えないことにしたんだ」

    み「へー」
    ズ「ラブネ君といてもこれと言った変化は無かった。期間が短すぎるたけかもしれないけどね。あと彼女が常識的になったとして、それは必ずしも彼女のためにならないかもしれない」
    み「それもそうですね。剣を握り続けられるなら心なんてない方が、生きる上ではやりやすいかもしれません」

    ズ「それが君の処世術か?」
    み「私はもっと社交的ですけど。ただの率直な感想です」
    ズ「そう。ところでオウミ君こそ治る兆しはないのかい」
    み「あれはもうそういう性格だと納得するしかないでしょう」
    ズ「オウミ君はそうだろうな」

    ズ「でも僕はああは言ったものの、花筏の本来の優しさを見てみたいと思ってもいる。我儘だけどさ。彼女が過去の自分を受け入れて、1人で生きていけるようになってほしい」
    み「それで気長にやっていくと」
    ズ「君は?」
    み「私は別にオウミ様に変わってもらう必要はないので」

    ズ「確かに自分が居なくなれば相手は生きていけない状況は甘美だよね。少しだけ分かる」
    み「趣味悪ぅ〜ですね」
    ズ「まあね。でもだからこそ花筏を手放すつもりはないし、巣立つ時が来たら彼女には後腐れの感情なく飛び立ってほしい」
    み「ご立派です。そんな日が来れば良いですね」
    ズ「君も悔いが残らない着地ができるといいね」




    ○その42
    オ「皆、大した怪我はしておらんな?お前もよくやった」
    み「オウミ様。誉れにございます」
    オ「どうした。頭でも打っていたか」
    み「いえ、何も悪いところはありません。それよりも彼らとの会話にお戻りください」
    オ「そうか?ズイウンに診てもらえよ」
    み「はい」

    深都、宿
    オ「彼らには裏というものは無さそうに見えた。ということはやはり第三者によって狂わされたと考えるのが…、おい、人の顔を眺めているな」
    み「オウミ様はだいぶ元気になりましたね。良かったです」
    オ「そういえばそうだな。お前が尽力してくれたおかげだろう。感謝している」
    み「そうですか」

    オ「…本当にどうしたのだ?何があった?」
    み「人を2人も殺したじゃないですか。でもそういうオウミ様も好きですよ。まあ俺が、私が元気が無いのは、自分と彼らをうっかり重ねてしまったからですねえ。東洋風剣士と王族でしたから」

    オ「そうか。それは、俺が弱くなったせいでもあるのか?」
    み「オウミ様は強くなったんです。元々図太いですしね。私が思い知らされただけです。この街に来る前のオウミ様と再開した時と、今日のこと。なので弱くなったのは私の方です。こうやって人は弱いところが増えていくのでしょうか」

    オ「人は死にやすい、と知ったか」
    み「ちょっと違います。オウミ様は死ぬ可能性があることと、私はオウミ様を失うのが何よりも恐ろしいと感じていることを知りました」
    オ「俺を失うのが恐ろしい?そんなことを思うのか。相当に難儀だ。それとも俺がいることによって何か利益があるのか?ああ、体か」

    み「1人で勝手に納得しないでください。オウミ様がいると全ての物事が楽しくなりますよ。己の生に意義を見出すことができます」
    オ「そういう冗談はタカラブネにでも言ってやれ」
    み「俺の本心なのに〜」
    オ「そうか」
    み「俺が死んだ後のオウミ様が何をするのか考えると、こう胸の辺りがキュンとするんですよ」
    オ「ああ」

    み「あーあ。でもま、とりあえずオウミ様、死なないでくださいね。あなたが死んだら私も憂さ晴らししてから死にますから」
    オ「そうだな。死ぬのはただの無責任だと最近は思うようになった。死ぬのは俺の役割を燃やし尽くしてからだ」
    み「それってどういう意味ですか?」
    オ「察せよ」

    み「オウミ様も味方が増えましたしね。でもあなたの国のことは許してません」
    オ「それは俺に言うな」
    み「この手からオウミ様を奪う輩は何人も許しません」
    オ「おい」
    み「あなたを含めてです。そんなことは許しません」
    オ「…牙は隠せ。勝手にしろ」

    み「愛の告白したから気が済みました。さて寝ますか」
    オ「そうだな。今日はもう休むか」
    み「ではお体お借りしますね」
    オ「好きにしろ」
    ラ「ええ!ちょっと、今日くらいゆっくり寝たいです!」
    み「起きてたんですか。なら床で寝てください」
    ラ「う〜。端に寄ってますから、突き落とさないでくださいよ!」


    ○その43
    み「ラブネさん、あなたにオウミ親衛隊の一員としての証を与えようと思うのです」
    ラ「は!この上なき幸せ!」
    み「正三角形の焼き鏝を作ってもらいました。これで根性焼きです」
    ラ「謹んで辞退させていただきます」

    み「そう言わず」
    ラ「すんません、ホント腕はなしてください」
    み「でもきっと後でやって良かったと思いますよ?」
    ラ「思わないですよ」
    み「え、だってふとした時に腕触ると三角形があるんですよ。しかも私が刻んだやつですよ」
    ラ「ええー……。…………ひひっ……確かに?………いひっ。ゔんっ。あり、かもしれませんね」
    み「うわイカれてますね。キモ」
    ラ「みつうろこさんが言ったんですけど」

    ラ「やりたくないです」
    み「はい、押し当てますね〜」
    ラ「どうせ熱くなギャッ!っがぁ〜!!」
    み「後2回ありますからね、頑張ってください😉」
    ラ「ぐううううッッ〜!!」💢

    ……
    ラ「わあーい……、…あははっ!」
    み「それが三つ鱗です。嬉しいですよね。これであなたもオウミ親衛隊メンバーです。喜びなさいNo.弐」
    ラ「みつうろこさんはこれやったんですか」
    み「やりませんよ」
    ラ「ズルくないですか、No.壱さん」
    み「だってこれが私に刻まれてて嬉しいですか?」
    ラ「いやそうすけどぉ…」
    み「ダレてますね」

    ラ「めっちゃ嬉しいです。毎日この焼き跡みて日々の訓練に励みます」
    み「はい。ちなみに私の名前は片瀬波です」
    ラ「か」
    み「この名前で呼んだらぶっ殺します。それではこれからもよろしくお願いします」
    ラ「はあっ!このタカラブネ、みつうろこ様と我が主人のためっ、この身果てるまで尽くしつかまつれることぉっ!恐悦至極にございます!!!」
    み「っるせーな」

    一旦終わり!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    C7lE1o

    MOURNING推し作家さんのマシュマロに投げ込んだら素敵に仕上げて頂いて成仏した妄想

    成仏先↓
    【番外編】心の壁を壊すには、茨の本心を知るべきです | 琉 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17307253
    Edenの3人になにかに誘われても断る茨(一緒に帰りませんか、これ一緒に見ない?、ご飯食べにいこうetc)、それは自分が嫌われていると思っているからで、それを偶然会った弓弦に零すと歩み寄るのも大切、みたいな感じに諭され、ちょっとずつお誘いを受けるようになり、こういうのも悪くないかもな、と思っていたある日レッスンか何かで日和を怒らせてしまって、キツめのことを言われてしまい、やっぱり自分が好かれることなんてありえない、ちょっとでも好かれているかもなんて思った自分が馬鹿だった、と心の中に分厚い壁を築いてしまう、やっぱり駄目だった、俺なんかが好かれるわけないんだと弓弦に吐き出すと、少なくともここに一人おりますが、と言われてこのときばかりは素直に弓弦にお礼を言う茨(ここでくっつく?)、そして表向きはそれまでとは何も変わらないけどお誘いを再び断るようになり、Edenの3人もあれ、なんか距離遠くね?と気づき始めたころ、いつものように食事の誘いを断った茨が弓弦と一緒にご飯を食べているところを目撃、その二人の表情はとても穏やかで、言い合いをしている二人しか知らなかったEdenの3人は複雑な感情を持ち、Edenの3人が見ていることに気づいた弓弦(茨は気づいていない)がこれみよがしにイチャイチャ()するのでめちゃくちゃ嫉妬する、
    614