Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tohli

    フェムレオ沼の住人。
    隣のスティレオ沼もよく掘削してます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    tohli

    ☆quiet follow

    部下の相談に乗るいい上司がかわいそうな話

    フェムレオ。

    #腐界戦線
    #フェムレオ
    femleo

    部下の相談にはもうのらない「友達と、その、き……キスしちゃったこととかって」

     なにやらもそもそ指をこねくり回しながら少年が相談してくるから何事かと思えばそんな話だった。
     スティーブンは苦笑すると、「そんなこともあるだろう」と受け流した。
     スティーブンの言葉に何処かホッとした様子のレオナルドは「そうっすよね!」と元気を取り戻す。
     さては寄った勢いか遊んでてテンション上がりすぎでもしたか、友人と事故があったらしい。
     若い頃にはよくあることだ。


     そんな相談があってしばらくしたある日。
     二日酔いなのか頭を抱えて項垂れていたレオナルドが、小さくくしゃみをした。
     風邪か? と聞けば昨日裸で寝ちゃって、という。
    「スティーブンさん、そういう……ええと、起きたら裸だったとか、そういえことしたことなさそうですよね」
    「そんなことないさ」
     肩をすくめて言葉を返せば、レオナルドがやや青かった顔色にほんのり期待の色をのせた。
    「スティーブンさんでもそんなことが? ……ええと、その、一人じゃなくて、友達と騒いでて、とか」
    「あるある。だいぶ前だけどな。メキシコで冷房もないような宿舎で眷属討伐の祝勝会してて。飲みすぎて騒いで暑くて朝にはもう下着一枚で転がってたな」
    「えと……どなたと」
    「クラウス」
     名前を上げるとレオナルドは驚いたように目を丸くした。義眼が眩しい。
    「クラウスさんとスティーブンさんでもそんな事あるんですね」
     安心した、というように少年は息をつく。
     若気の至りや酒の席での失敗なんて誰にでもあることだ。
     眷属戦を無事に生き延びた高揚に酒が入りついでに暑く、一人が脱ぎ始めれば我もわれもと続きしまいには男だけなのをいいことにずいぶんと涼し気な格好での無礼講になっていた。
     懐かしい思い出だ。クラウスともあのあとずいぶん打ち解けたと懐かしむ。
     ところであの場にはブリゲイド達もいたということについては言いそびれた。


     それからさらに月日は経ち。
     レオナルドは日々細かな失敗を重ねつつも反省し、少しずつ成長しているようだった。
     たまにスティーブンに相談してはそれを指針として動いているらしい。上司として、人生の先達としてよく導いてきたつもりだった。

     バレンタインに贈るプレゼントは?
    「花がいいよ」

     奢られたりばっかりって気になるんですけど。
    「はっきりと言っておくことだな。経済格差のある友人関係はそのへんをきっちりと」

     料理スキルがなくてもなんとかなるレシピ教えてください。
    「うちの家政婦のレシピで良ければ」

     腕枕ってやっぱりしびれるものですか?
    「あれは起きた時に結構クる。さり気なく夜のうちに頭を外すのがポイントだ」


     途中から、おやこれは? と思った。
     友人の話として聞いていたが、どうも方向性が変わってないか、と。
    「少年、もしかして誰か付き合ってる相手でもいるんじゃないか?」
     クラウスと二人でチェスをしている時にそんな話をふれば、頷かれた。
     聞けば先日、本人曰く友人にもらった花束を保存するための相談に来たらしい。
     へぇ? 取っておきたい花束ねぇ?
     それを聞いて顔が笑いにゆがむ。
     ライブラに入ったばかりの頃にはほんの子供のように思えていたのに、いつのまにやら彼も成長したようだ。
     それにしてもレオナルドの相手とは誰だろう。心当たりがない。探らせるか。
     考えを巡らせるスティーブンの向かいで、白のナイトを手にしたクラウスが静かな声音で名を呼んだ。
     なんだい? と顔を上げればスティーブンの親友は眼鏡の奥で緑の目を光らせていた。
    「レオナルドくんのことだ。きっとすぐにでも私達に話してくれるだろう。だから」
    「……事前に少し調査をするくらい」
    「スティーブン」
     もう一度名を呼ばれ、スティーブンは「はいはい」と諦めて頷いた。
     チェスは負けた。


     それからもうしばらくたったある日。
     レオナルドは、スティーブンに明後日の予定を聞いてきた。特に重要な用事はなく、そう答えるとレオナルドはほっとしたように緊張していた顔を緩める。
     明後日、みなさんにお話したいことがあって、と指をもじもじとさせながら言う。
     そのつむじを見下ろしながら、おやこれはとにまりと笑った。
     どうやらとうとう、クラウスの言っていた話してくれる日が来るらしい。
     こころよく、予定は入れないでおくよと答えればレオナルドはどこか幸せそうな、ぽやっとした顔で頭を下げた。


     そして二日後。
     事務所の中には、レオナルド以外のメンバーがすでに集まっていてみなどこかそわそわとしている。なにかしら察しているのだろう。
     気の早いクラウスがパーティにちょうどいい店の確保を老執事に指示しているが、それはすくなくともレオナルドの話が済んでからのほうがいいんじゃないだろうか。
     恋人できましたー! なのか、結婚しますー! なのか、同棲しますー! なのか。どの段階かによって祝い方も違うだろう。

     そわそわそわそわとしながらレオナルドが指定した時間を待ちわびる。
     今日ばかりはなんの事件も起こらなければいい。そう願っていたが、残念なことにそうはいかないのがこの街だった。

     プツリ、という音を立てて消えていたモニターの電源が入る。そこに映し出されるのは、もう見飽きるほどに見飽きた仮面の王の姿。
     悪夢の到来を告げる電波ジャックのお時間だ。
     あーあ、と息をつきながら片手で端末を操作し王が何事か口を開くよりも早く構成員に緊急招集を指示する。
     レオナルドも可哀想に、めでたい日のはずなのに堕落王のゲームがあっては……

    『結婚することにしたよ!』

     出動の準備をしていた一同の顎が落ちた。
     ヤッハー! と浮かれる堕落王の横で、テレテレとしながらもその腕に抱きつくようにしている癖毛の少年には見覚えがありすぎる。
     カメラを構えているだろう偏執王の間延びしたインタビューに、いちゃいちゃとしながら答えている。

    『馴れ初めは〜?』
    『僕がしかけた術式をレオナルドが指でぷちっと』
    『付き合い出したキッカケは〜?』
    『えー。恥ずかしいからそれは内緒で』
    『言いなさいよぅー』
    『いいなと思って僕からキスを』
    『きゃー♥ らぶらぶー♥』

     虚ろな目でモニターを見上げるスティーブンは、あのとき「よくあること」と流したりせず、とことん否定して思い直させるべきだったと膝から崩れ落ちそうになった。おそらく、あそこが始まりだった。

     画面の向こうでは二人揃って指輪をはめた左手を翳してみせたりしている。
     婚約会見か。婚約会見だった。

    「スティーブン……」
     項垂れるスティーブンの背に、親友が慰めるように手を添える。
     あの時、調査させておけば。そう言っても詮無いことだ。
     床に膝をつくスティーブンの背を優しく撫でるクラウスを、救いを求める目で見上げる。

     堕落王とレオナルドの会見は新婚旅行の予定にまで及んでいる。カプリ島? 結界の外なんですけど。

    「結婚祝いは連名にするかね?」
    「僕は! もう! 部下の! 恋愛相談には! のらない!」
     スティーブンは床に突っ伏した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏💒👏👏👏💞💘💒💍💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works