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    そうこ

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    そうこ

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    #LH1dr1wr
    お題「引っ越し」所要時間1時間半程度

    ラーヒュンとキラーパンサーが3人で住んでる話。
    やまも落ちも意味もない感じです。
    キラーパンサーが可哀想な目にあっていたので苦手な方はご注意ください、今は幸せいっぱいです。

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    引っ越し「おい、止まれ!」
    ヒュンケルの必死の叫びも虚しく、大型の獣は素早く動き回る小さな影を追いかけ回す。
    掃除の為に開け放っていた玄関から入り込んだネズミは、いち早く大型の獣―キラーパンサーに補足され追いかけ回された結果、大混乱に陥っていた。
    迫り来る魔の手から逃れようとネズミが隠れようとするが、逃げ込んだ先は空の壺の裏。
    巨体に飛びかかられたそれは勢い良く倒れ、見るも無惨に砕け散った。
    大きな破壊音にさすがのキラーパンサーも我に帰ったのか、目の前の惨状に耳を伏せている。
    ヒュンケルは動きが止まったことに安堵し、手にしていた箒でネズミを追い立て外に逃がしてやった。
    きゅーん、とキラーパンサーが情けない声を上げる。
    「気にするな、それより怪我はないか」
    箒を玄関横に立てかけ、小さくなる同居人に怪我がないか屈みこみ見聞する。
    あちこち触れながら慎重に壺の破片が刺さっていないか確認していると、尋常ではない震えがヒュンケルの手に伝わった。

    このキラーパンサーとは、しばらく前にヒュンケルが町に出かけた際に出会った。
    本来であれば魔界にしか生息しないはずだが、まだ生まれて間もない頃に欲深い魔族に捕まり、地上の人間に売り飛ばされたらしい。
    立派に育つはずだった牙は折られ、酷い扱いを受けて育ったこのキラーパンサーはすっかり臆病になってしまった。
    そして大きく育ち過ぎ、飽きた人間により売り払われようとしていた所に偶然ヒュンケルが居合わせ、話を聞くと怒りに任せて買い取ってしまい今に至る。
    連れ帰った時は元々の同居人であるラーハルトに大層驚かれたが、境遇を聞くと酷く憐れみ、生活を共にすることを快諾され、三人での生活が始まった。
    最初は怯えてどうにもならなかったが、二人の献身的な世話により、ようやく元気を取り戻した所でこれだ。

    「破片は当たっていないようだな。 なに、壺はまた買えばいいさ」
    わしゃわしゃと目の前の獣を優しく撫でてやれば、次第に安心したように耳を戻し尻尾を振る。その姿にヒュンケルもつられるように微笑んだ。
    「帰ったぞ……なにが起こった?」
    開けっ放しのドアの前に立ち尽くすラーハルトの目に入ったのは、キラーパンサーを撫で回すヒュンケルと割れた壺。思わず顔を顰めてしまうのは無理もない。
    「おかえりラーハルト。なに、ちょっとネズミが出ただけだ」
    「ネズミ?」
    ラーハルトの眉間のシワが深くなる。
    「あぁ大丈夫、文字通りのネズミだ。 掃除で扉を開けていたオレが悪いんだ」
    その姿に苦笑しながらヒュンケルが答えれば、納得したようにラーハルトの表情が呆れに変わる。
    「お前たちに危害がないなら良いんだが、少々やんちゃが過ぎるな」
    ラーハルトもヒュンケルに続きキラーパンサーを撫で回す。
    二人分の手に構われすっかり上機嫌だ。
    「侵入者を追い払おうとしてくれたんだ、よく頑張った」
    「元気なのはいい事だが、やはりこいつにこの家は少し手狭か」
    ラーハルトは撫でる手は止めずに思案すると、隣から心配そうな視線が飛ぶ。
    ヒュンケルがなんとも言えない表情で見つめることに気付き、ラーハルトは安心させるように微笑んだ。
    「そんな顔をするな。 引っ越しでもしようかと考えてただけだ」
    「引っ越し?」
    ヒュンケルは思いもよらない発言に目を丸くした。
    「二人でも少し狭いと感じていたんだ、これを機にもっと広い家に変えるのも手だろう」
    「その発想はなかった」
    ヒュンケルはしきりに感心している。
    「お前は何を思ったんだ」
    その様子が可笑しく、からかうようにラーハルトは尋ねた。
    「この家を捨てて旅にでも出るのかと……そうだな、移り住めば良いんだ」
    引っ越しは初めてだな、とヒュンケルはキラーパンサーに嬉しそうに報告をするが、キラーパンサーは知ってか知らぬかグルグルとご機嫌に喉を鳴らしている。
    「この地も悪くはなかったが、コイツがいるならもう少し人里離れたほうがいいのかもしれんな」
    その言葉を聞いて、ヒュンケルの手が止まる。
    「手間ばかりかけてすまない」
    「気にするな、お前もコイツも家族なんだから当たり前だろう」
    ラーハルトは撫でる対象をヒュンケルに変える。
    ヒュンケルは、オレは魔獣じゃないぞ、と苦笑しているがどこか嬉しそうだ。
    「しかし、引っ越すとなるとどこが良いだろうか」
    ヒュンケルを撫でながら、ラーハルトはいくつか候補地を呟く。
    「世界は広いからなぁ……でも」
    ヒュンケルは己を撫でる手を取り、顔の横へ導く。
    「お前と一緒なら、どこでもいいさ」
    すり、と愛おしそうに頬を寄せれば優しく撫であげられ、ヒュンケルは心地良さに目を閉じる。
    2人の影が重なると同時に、そっと気配を殺しながら屋外に出たキラーパンサーによって玄関の扉は閉められた。
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