いいこ、わるいこーーーーはらがへった
カガリは机の上に広げられた資料の山から目線を外し、先程からぐうぐうと鳴る原因と向き合うことにした。昼から何も食べていなかったせいか、胃が空っぽで思考が鈍くなっている。没頭している内は良かったものの、空腹を意識した瞬間集中力が切れてしまった。
深夜を回って、部屋にひとりきり。
「誰かにお願いして、食事を持ってきてもらうか……?」と考えたものの、こんな時間に頼むのは気が引けてしまう。腹を満たす為お茶か何かを入れようと席を立ちあがろうとした瞬間、『虎』から贈られてきたあるものを思い出した。
ケバブにヨーグルトソースをかけて食べるのを好むあの男とは、味の好みがまったく合わないことを自覚している。時折彼がブレンドした自作のコーヒーが遠くのプラントから送られてくるがその味は言葉では表現し難く、そんなこともあり彼からの贈り物を記憶の片隅に追いやってしまっていた。
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