夜陰に乗じて夜陰に乗じて
天井まで続く大きな窓枠は室内空間の上限に向かって半円と矩形が組み合わさり、その中を格子という白線が何分割かに夜空を区分けする。その少しだけクラシカルな窓は下窓だけが上下にスライドする仕様になっていて、片方だけ動くシングルハングが温暖なこの国の夜風を迎え入れる。窓越しの空はいわゆる“夜の帳が下りて”いて、赤道直下の国では永々と変わらない日の入り姿が――そこに帰ってくる者をどことなく安堵させる。
アスランは窓格子を眺めながらその先にある夜空までを視界に入れると、日没から目ばたきの間ごとに藍色深まる光景に…少しだけ懐かしさを感じた。昔こうして同じようにこの部屋で同じ人を待っていた思い出は、アスランの心を再び…強くする。
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