『仮面』「人は誰しもが何らかの仮面を被っている。ただその仮面はいつか人の手に引き剥がされ本来の自分を引きずり出される」
いつかどこかで読んだ本の受け売りを類は思い出す。その時はなんてことないと思っていたが司によって『仮面』を引き剥がされてから類はだいぶ楽になった。司はいつだって類の望みを叶えてくれる、そういわば神様に等しい存在だ。司は類に温もりを与えてくれた。その温もりは類にとって探し続けた温もりであると同時に離れ難いものだった。
仮面のことを思い出したのは類が司のことを意識し始めてからだった。気づけば彼を目で追っていてそして気づいた自分が彼に向ける想い。綺麗な思いばかりでは無いその思いに類は大きくため息をついた。外したはずの仮面をまたつけなくては。偽ることは苦ではない。ずっとそうしてきた。だから大丈夫。彼の望む神代類を演じればいい。そうすればずっと彼のそばにいることが出来る。ずっと。
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