「 」の果てにあるものは。なんの変哲もない、一般的な、茶色いそれ。
それがまさか、彼の核心に触れられるなんて、思いもよらなかった。
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「……ちょっと司くん。それ、どうしたんだい?」
びくりと震えたのを見て、思わず低音になってしまったのは許してほしい、なんて思いながら返事を待つ。
司くんは司くんで、僕が返事待ちだと悟ったんだろう。ため息をつきながら答えてくれた。
「……片付け途中に、ちょっとささくれに引っかかっただけだ。着ぐるみには報告したぞ」
「報告はありがとう。でも、消毒はしなかったのかい?」
「消毒はしたぞ。絆創膏は持ち合わせがなくてな」
「なら、僕が持ってるから。ほら行こう」
返事を待たずに、彼の手を引いて控え室に向かう。
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