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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【指輪】

    なんとか書いたよ、まだくっついてない飯P

    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #腐女子向け
    #飯P

    【飯P】金属の温度 神殿の奥、久々に訪れたピッコロさんの部屋の机には、見慣れないものが沢山積んであった。歯車にネジ、鍵、コインやメダルのようなもの。大小様々なナイフ、万年筆、文鎮、動物や乗り物を象った無数の置物のようなもの。どれも片手に載るほどの大きさで、どうやら金属で作られているという点で共通している。
     じろじろと無遠慮に眺めていると、ピッコロさんはややきまり悪そうに口を開いた。
     「昔、お前に服を出してやっただろう? 服は簡単だが、硬い素材の小さなものが得意ではないから、色々と試しているんだ、最近」
    「じゃあこれみんな、ピッて出したんだ」
     僕は感心して、ひとつひとつをあらためた。手にとってみると、どれも冬の空気にすっかり冷やされている。動物の置物はちょっと粗く大きめのものから、鱗まで美しく整った爬虫類まで様々だ。この粗いものが、試しはじめた頃のものなのだろう。
     コインの文字はでたらめに彫られているが、目視する限りきちんと真円だった。歯車の形やネジの螺旋も美しいし、ナイフもよく切れそうだ。必ず必要な技術というわけでもないだろうに、どこまでも自分を高める努力を惜しまない人だ。
     「この鍵は?」
    「この部屋の鍵だ。扉の方も作り替えてみたが、ちゃんと機能するぞ。だいぶ精緻に作れるようになった」
     振り返ると、確かに扉に鍵が取り付けられている。元々この部屋には、鍵などついていなかった。
     よく触ってみると、どれも、鉄とも銀とも、アルミともステンレスとも違う気がした。金や銅のように赤味を帯びたものも、指先で撫でてみればそれらとは違う。金属には違いないが……ナメック星の金属鉱物なのだろうか?
     ふと、フォークとスプーンの側に、小さな指輪があるのを見つけた。
     「ピッコロさん、これも自分で?」
    「それは昨日の晩に……はじめて、この大きさで納得いく出来になった」
    「じゃあこれ、記念品ですね! すごいですよ、綺麗。これで商売できちゃいますよ」
     表面にうっすらと幾何学模様が彫られ、かなり精密な細工の指輪だ。店頭で売られているようなものと遜色ないどころか、専門の職人にオーダーメイドで求めるような……特別なもののように出来ている。
     思えば、商売などする必要のない人たちだから、こんな能力が与えられているのかもしれない。商売どころか、きちんと数字を彫ったコインだって、作ろうと思えば作れてしまうのだ。
     僕が掲げた指輪を一度受け取り、ピッコロさんはしげしげと眺めた。
     「これが気に入ったのか?」
    「はい、だってすごく綺麗ですよ! 特にその模様……」
     思わず身を乗り出して指さした僕の手を、ピッコロさんの右手がそっと取った。おや、と思う間もなくピッコロさんは、掴んだ僕の手を自らの胸の前まで引き寄せる。それから左手で摘まんだ指輪を、右手で支える僕の指に……僕の左手の薬指に、すっと着けた。
     「大きいな、少し」
     一瞬、指輪のまわりが温かくなり、僕の指へぴったりの大きさに変わる。
     「気に入ったなら、お前に贈る。着飾る機会にでも、使ってくれ」
     指輪を眺める僕が何も言わないでいるのを悪い意味にとったのか、ピッコロさんの表情がかすかに翳る。
     「不要なら他のものと一緒に処分するが……装飾品の類はよく分からん、すまないな」
     申し訳なさそうに肩を竦め、指輪を受け取ろうと手を差し出すピッコロさんに、慌てて首を振った。
     「違うんです!」
     自分で思った以上に大きな声が出て、驚いた。
     「地球人の間では、指輪を贈るのって、特別な意味があって……だから、本当に僕がもらっていいのかなって狼狽えちゃって」
    「意味とは?」
     改めて尋ねられると、答えにくい。それも、僕が「贈られた方」だから尚更だ。
     ピッコロさんは、気に入ったならやる、と何気なく僕へ与えただけだろう。なのにこんな説明をされては、きまりが悪いのではないだろうか……。言い淀んでいたが、ピッコロさんが目で促すので仕方なく口を開いた。
     「あの、指輪を……左手の薬指へ贈るのは、あなたが世界一好きですって」
     ちらとピッコロさんの顔色を窺う。今のところ、いたって穏やかないつも通りのピッコロさんで、大きな戸惑いは感じられなかった。
     「ずっと一緒に過ごしたい、っていうような……意味があります、地球人には。贈れる相手は一人だけで……そんな意味で僕へくれたんじゃないって、分かりますけど、びっくりして」
     婚約、結婚、とは言い出しにくく、僕は抽象的な表現に留める。ピッコロさんは、暫くの沈黙の後に僕の左手を持ち上げ、指輪を着けた指にまなざしを落とした。
     「そうか……勉強不足だった」
     きっと返せと言われるだろうと、僕は指輪を外しかける。しかしピッコロさんは、持ち上げていた僕の手を、両手で掬うように握った。
     「ならば、やはりこれは、改めてお前に贈る」
    「え?」
    「お前のことは好いているし、できる限り長く……お前が許す限り、近くで過ごしたい。そういう意味を理解した上で、改めて贈らせてくれ」
    「……いいの?」
     僕だけのサイズになった指輪が、ピッコロさんに指輪を着けてもらった指が、若葉色の手と手の間に覗いていた。はじめに手にした時は冷たかった指輪が、今はもう体温にまであたたまっている。
     「新しいものを作ることもできるが……はじめて納得いく出来になったという意味でも、それは特別なんだ。お前が受け取ってくれないか」
    「はい……勿論です。すごく嬉しいです」
     僕はたちどころに浮き足立って、窓からの光に手をかざしてみる。冬の弱々しい陽射しが、彫りこまれた指輪に反射していた。指輪のやわらかな光り方は、見覚えのあるどんな金属とも、やはりほんの少し違う。
     「戦うには邪魔だ、仕舞っておけよ」
    「そんな、勿体ないな……でも、傷が入っても嫌だし、そうした方がいいのかな」
     ピッコロさんは、地球人にとっての「指輪を贈る」という行為を本当の意味では理解はしていないだろう。でも、贈れる相手は世界に一人だけということは理解した上で、その一人に迷わず僕を選んでくれた。今はそれで、十分だった。
     「今度は、二人で同じものを一緒に作りたいですね。いつか」
    「一緒に? そうだな……」
     何だかよく分からないという顔をしているピッコロさんに、いつか、指輪を贈る本当の意味を、生涯を共にしたいという意味を、分かってもらえるだろうか。
     その時こそ僕から先に、指輪を贈ろう。それでも多分、仕舞っておけと言われてしまうだろうなと想像すると、可笑しかった。
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