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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    明治大正日本風パロ飯P。
    最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。

    章番02ですが、01はプロローグというか、15年前にワンシーンだけ書きたくて書いた話、その前後を捏造したのが02以降になります。01読まなくても問題ないです。

    #空P
    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/02.せきれい お父さんは、自由な人だった。
     ふらりと旅に出たかと思えば、手紙のひとつも寄越さず、突然に帰ってくる。一ヶ月戻らない時もあれば、ほんの三日で引き返して来ることもある。身勝手にも思えるが、必ず僕に、旅先で見つけた興味深いものや美しいもの、何もなければ思い出話を持ち帰ってくれたので、寂しさや悲しさを感じることはなかった。
     秋の夕まぐれ、お父さんが持ち帰ったものは、これまで見たどんなものより興味深く、そして美しかった。
     新芽色の膚と、一目でここいらの出身ではないと分かる面立ち。着物の奥に存在を知らせる手足は長く、全体的にしなやかな印象で、長躯でも威圧感はない。旅姿の割に極端に荷物が少なく、手にしたまっすぐな杖ばかりが無闇と象徴的だった。
     「ピッコロだ、帰り道で知り合った。こっちは悟飯、十六になる息子だ」
    「悟飯です、はじめまして……」
     頭を下げたピッコロさんの腕を引いて、お父さんが目を輝かせた。
    「悟飯、お前にも見せたかったぞぉ。これで頗る腕がたつ。すぐそこで、町娘がやくざ者に囲まれているのを一瞬で引き離してなァ!」
     お父さんは高揚した様子だったが、僕は戸惑っていた。つまり、本当につい今しがた、知り合ったばかりの人と言うことだ。
     「少し話したら、宿が満室で行くあてがないって言うんで、連れてきたんだ。長く旅しているそうだから、今夜だけと言わずゆっくり休んで行けば良い。なぁ、悟飯」
    「もちろん、歓迎するけど……ピッコロさんは良いんですか?」
     お父さんが無理に引きずってきたんじゃあ、ないだろうか? 僕は心配になり、ピッコロさんの顔を窺った。切れ長のひとみは険しいようでいて、じっと覗き込むとその光を和らげてくれる。
     「迷惑でないなら、二、三日休ませてもらえると、助かる」
    「二、三日? ずーっといたって良いんだぞ、部屋は余ってるんだ」
    「お父さん、ピッコロさんも旅の目的があるんでしょう……無理を言ったらだめだよ」
     僕が嗜めると、ピッコロさんははじめて微笑んだ。少し目を撓ませるだけで途端に柔和な面差しになり、何だか不思議な人だ。
     「もう何年も旅をしている。何日か留まったところで同じことだ」
    「……じゃあ僕、空いてる部屋に案内するね。こっちです」
     おじいちゃんから受け継いだこの家は古く、あまり人が訪ねてくることもない。廊下はぎしぎしと鳴るところもあるし、決して広くはないが、お父さんと二人で暮らすには、確かに部屋は余っていた。
     「この部屋、どうぞ。布団はここ、打ち直しのものですけど……。向かいが僕の部屋なので、何かあればいつでも」
     部屋を見回していたピッコロさんは、僕に返事をすると屈んで荷物を下ろした。大きく抜いた衿から覗くうなじの若葉色が眩しくて、僕は思わず目を逸らす。
     閉めきっていた部屋の窓を開けると、ピッコロさんも歩いてきて、並んで窓の桟に手をついた。
     「良い部屋だな。野宿にならず、助かった」
    「野宿? そんなことしてるんですか?」
    「宿がない時は、仕方がない」
     何だか、危なっかしい人だ……横顔を覗き見ると、落ち着いて大人びた風情なのに。
     北向きの部屋だが、外には夕焼けのやわらかな光が満ちており、窓の傍は十分に心地良い。
     土の地面を、せきれいが歩いている。可愛らしい小鳥が、恋教えとか、嫁ぎ教えとか、ずいぶんと詩的な名前で呼ばれていることを思い出す……。
     夕暮れに澄みわたる鳴き声が、秋が深まったことを知らせていた。

     その晩、ピッコロさんは食卓で何も口にしなかった。もともと水しか飲まないと聞いて、大食らいの僕らは驚いた。お父さんはすぐに「そういう民族もあるんだな」と納得していたが、僕はその驚きがずっと後を引いた。もしかすると、僕らに遠慮してそう言ったのではないか? そう思えて仕方なかったのだ。
     結局、気になった僕は床についても眠れず、起き上がって部屋を出た。静かに台所へ入り、すぐにとって返す。
     「ピッコロさん……」
     扉の外から呼び掛けると、ピッコロさんがそろそろと扉を開けてくれた。行灯がまだ部屋を照らしている。どうやら、起きていたらしい。
     「入って良いですか?」
    「ああ、もちろん」
     既に布団が敷いてあり、ピッコロさんが、客用の寝間着の裾を短く着ていることに気付くと、急に悪事を働いているような気分になる。
     「あの、何も食べてなかったじゃないですか……遠慮してないですか?」
     台所から持ち出したりんごを差し出すと、ピッコロさんは驚いた顔をした。灯影がその横顔に揺らめいて、現実感を薄れさせている。ピッコロさんは暫く、差し出されたりんごを無言で見つめていたが、やがてりんごを差し出す僕の手に自分の手を重ねた。
     「優しいんだな……でも、食べる必要がないのは本当なんだ。気を遣わせてすまない」
    「本当? それならいいけど……僕らのこと、家族と思って、遠慮しないでくださいね」
    「……家族?」
    「うん。今日はじめて会って、こんなこと言うの変かな……だけど何か縁があって、こうして一つ屋根の下で眠るんですから。仲良くなれたら、嬉しいです」
     ピッコロさんの手は、冷たかった。冷たいが、ひどく優しく重ねられていて、僕の心を奪うのに十分だった。


     お父さんから聞いた通り、ピッコロさんは武術の達人だった。夕食の席でお父さんがしきりに褒めるものだから僕も気になって、一夜明けて、庭で手合わせをお願いしたのだ。
     お父さん以外で、僕とまともに打ち合える人ははじめてだ。長い手足を活かした、舞うような動きに僕はたびたび翻弄された。町のやくざ者など、相手にもならないだろう。
     「親が武術に秀でていて、鍛えられたんだ」
    「じゃあ、僕と一緒ですね。だけど身体の動かし方は、僕らと全然違う。学ぶところが沢山あります」
     僕らは縁側に腰かけて、殺風景な庭を眺めていた。おじいちゃんが作った花壇はあるが、僕もお父さんも何も植えないものだから、猫の尾のようなえのころぐさだけが寂しく揺れていた。
     快い疲れが、全身を満たしている。ピッコロさんは乱れた服を整えながら、思いのほか明るく笑った。
     「久し振りに思い切り手合わせできた。強いな」
    「いえ……やっぱり、一人旅って危ない目に遭うこともありますか?」
    「……絡まれたことは何度もある。何も、金目のものなど持っていないんだが」
     金目のものではなくて、あなた自身が狙われていたのではと、出かかった言葉を飲み込んだ。汗ばんだ喉元が、上気した頬が、異様な艶っぽさだ。陽を透かす澄んだ膚の美しさ、ふと手首の紅が覗いた時の蠱惑を、この人は知っているのだろうか。決して華奢というわけではないのに、昨日はじめて見た時のように、どことなく線の細い印象もある。ピッコロさんが強くてよかったと、僕は心底思った。
     「ピッコロさん、長く旅をしてるって聞いたけど……どのくらい?」
    「六年ほど……いや、その前に二年間、親と旅していたから、八年になる」
    「八年も?」
     そんなに長い間、何が目的で旅をしているのだろうか。口に出さなかったが、沈黙が疑問を伝えてしまったのだろう、ピッコロさんは話を続けてくれる。
     「親の目的は、分からず終いだ。旅の途中で死んでしまってな」
    「そうなんですか……」
     事もなげに言い、ピッコロさんは縁に置いていた水をひとくち飲む。
     「一人で故郷に帰ったが、嵐にやられたとみえて、集落には墓だけが増えて誰もいなくなっていた。壊れた建物の様子を見るに、土砂崩れと、鉄砲水……旅暮らしをしながら、逃れた者を探している」
     今度こそ、僕は言葉を失った。
     あまりにも淡々と話すから、どれほどこの人が傷付き疲れているか、余計に伝わってきた。お父さんは、この話を聞いたのだろうか? もしかすると、聞いたからこそ、家へ連れてきたのかもしれない。
     「この国に流れ着いた者がいると聞いたが……しかし、いざ来てみれば噂すら聞けない。逃れた者など、いないのかもしれないな……」
     僕は咄嗟に、ピッコロさんの手を取った。僕より一回り大きいが、痩せた手だった。
     「お墓があったなら、それを作った誰かは無事ですよ」
     掴んだ手を、握りしめる。ピッコロさんはされるがまま、真っ直ぐに僕の目を見返してくれた。
     「だけど、旅には休息が必要です。何ヵ月でも、何年でも、休んで行ってください」
    「そうか……ありがとう」
     寂し気な微笑が、午前の眩しい陽射しとともに、まなうらに強く焼き付く。
     ピッコロさんの同郷の誰かが、きっと見つかると良い。けれど、家族も帰るところも失くしてしまったこの人に、いつまでもここにいてほしいとも、思った。
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    summeralley

    DONE前回のバーカウンターでネイPシーンいっぱい書いたらネイP好きになっちゃったので、書きます。

    龍族≒下半身凹、戦士型≒下半身凸、更にPは「龍族の先代神 の片割れのパッパ の生まれ変わり だから龍族」という勝手な思い込みで書いてます。そんなに触れないけど……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/01.夢より静かに、死より美しく 気味の悪いものが運び込まれた、とため息をついたのは、ムーリだった。
     第四処理室の照明は極端に抑えられ、気温は低く保たれている。静まり返った室内に、二つの足音が響いていた。
     「ナメックのことはナメックに、というわけですか」
     この研究所に何年も勤めているネイルも、この処理室では、自然と小声になってしまう。生きたものは自分とムーリだけのはずなのに、無数の視線を感じる気がしてならない。検体として提供されたもの、身元の分からないもの、司法解剖や病理解剖を待つもの、すべての処置を終え、月に二度の火葬処理日を待っているもの……。
     「標本はそこのケースだ。37番。発見された石室の気温と湿度を再現してある……いたって普通の気温だ。自治体の記録を辿るだけでも、少なくとも七百年は閉じ込められていたのに、腐敗も硬直もない」
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