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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【ハグ】

    ハイスク揺さぶり🍚

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】澄んだ西日はとうに落ちて 冬が近付いて、神殿にもほんの少しだけ寒さが忍び寄ってくるようになった。
     春にはハイスクールを卒業する悟飯は、ここ最近、どうにも態度がおかしい。
     じっと見ているくせに、こちらが視線を投げると目を逸らす。妙に距離が近く、不意に手が触れると、引くどころか握ってきたりする。
     それが何を意味するか……意味する"可能性"があるか、ピッコロとて分からないわけではなかった。けれど、向き合うのが怖くて、見て見ぬふりをしていた。
     「ピッコロさん、ちょっといいですか」
     晩秋の夕空は、夏の茜色とは違う澄きとおった金色に染まる。落陽の最後の一筋が目を射って、つい瞼を伏せたくなる。
     鞄も上着も身につけた帰りしな、デンデたちに手を振った悟飯が石畳の上を歩み寄ってくる。
     「試したいことがあって」
    「試す?」
    「はい。……"これ"を、どう感じるか」
     曖昧な物言いで、悟飯が一歩踏み出す。ピッコロの返事も待たず、迷いも躊躇いも見せず……両腕で思いきり、抱きしめてきた。
     跳ねっ返った黒髪が、驚きに硬直したピッコロの首を擽る。やわらかだったはずの少年の身体は、いつしか鍛え上げられ、大人のものに近付いていた。力強い抱擁だったが、戦いの緊張感はない。
     「……どうですか?」
    「どう、とは」
    「どんな風に感じるかなって。嬉しいとか、落ち着くとか、もっとしてほしいとか」
     声はあくまで穏やかで、優しく、けれど……ピッコロを見上げてくるまなざしの温度は、明らかにこれまでと違った。
     じわじわと悟飯の体温が伝わり、接した胸から鼓動を感じた。後ろに回された手が、ゆっくりと背骨を辿って、腰まで下りてくる。腰に置かれた腕で捕えられ、引き寄せられ、身体の前面と前面が密着する。たったそれだけのことで、呼吸が乱れる。どうですか、と、悟飯が再び小声で問うてくる。
     「……昔よく、こうしていたな……子供の頃……」
    「懐かしいの? それとも、逃げてる?」
    「こういう挨拶が……ハイスクールで、流行っているのか?」
     喉が渇くような感覚に、ピッコロは冗談めかした口振りで誤魔化す。けれど、悟飯の返答は真っ直ぐだった。
     「どっちも違います。分かってるくせに、意地悪ですね」
     悟飯の腕の力が、わずかに強まった。辺りは薄ら寒いはずなのに、ピッコロの手のひらが汗ばむ。自分の中で何が揺れているのか、はっきりとは分からなかった。
     「好きな人にしか、しないことですよ」
     熱っぽい声に耳元で囁かれ、首筋に吐息がかかる。ピッコロは咄嗟に返事もできず、一度開きかけた唇を閉じた。なんと言うべきか、分からなかったのだ。けれど悟飯は、返事がないことを予想していたように、そっと腕を離し、身体を引く。
     「びっくりした顔、見れたから、今日は終わりにしておきます」
     笑顔で上着を整える様子は、もういつもの悟飯だ。
     「でも、あんまり意地悪言うなら、もっともっと分かりやすい方法に変えますから……じゃあ、おやすみなさい」
     言い置いて、礼儀正しく頭を下げて出ていく。ピッコロは動けず、その後ろ姿を見送る。
     とうとう「仕掛けてきた」のだと思った。
     無邪気を言い訳にできないほど、明確に、意思のある一手を。気のせいだとか、思い違いだとかで見て見ぬふりを、できないようなやり方で。
     ただの抱擁ではなかった。少なくとも、子供のじゃれつきとは、明確に違った……。
     ピッコロはため息をつき、ざわつく心をもて余したまま、悟飯の去っていった空を見つめる。明るく澄んだ西日はとうに落ちて、宵の口の甘やかな藍色が満ちていた。
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    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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