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    あすと

    @aaast

    成人向け🔞NSFW / 全員受けで全員攻め

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    あすと

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    🚬?甲柴?柴甲?🚬

     煙草不味い、風邪ひいたかも。なにげなくそう零したらシバケンは言った。常に不味いだろあんなもん、って。味知ってるの? 吸ったことあったっけ? って聞いたら、美味いとか言ってるやつは全員頭ニコチンに支配されてる って返された。死ぬほどどうでも良さそうな顔してる。
     
    「深くは追求しないけどさ、犬飼にだけはバレないようにね。凌牙は多分、黙っててくれると思うけど」
    「なんで吸った前提で話してんだよ」
    「なんとなく」
    「あっそ」
     
     会話を始めてからシバケンは、俺と一度も目を合わせない。でも合わせないんじゃなく合わせられないんだろうな、スマホ横に持って忙しそうに指を動かしてるから多分ゲーム中。
     たまに苛ついたような声を上げたり、舌打ちしたり、スマホを布団に叩きつけようとしてやめたり、ゲームするのって楽しむためなんだと思ってたけど、そうじゃないことも多いみたいだ。でもまあ、解る。俺のはゲームじゃないけど。
     
    「そんなにイライラしないでさぁ、もっとリラックスして出来ない?」
    「ゲーム中にリラックスする意味がわかんねー」
    「煙草吸う?」
    「あ」
     
     クッソ! ふざけんな変なこと話しかけるんじゃねーよミスっただろ! 喚きながらやっと俺の顔を見たシバケンの目をにこっと笑って見つめ返す。勢い良く俺の方を向いたせいでずれたシバケンのヘッドフォンからゲームの音が小さく漏れてる。なんの音だろ、爆発音、みたいな。
     
    「それ、大丈夫? まだ終わってないんじゃない?」
    「もういいやめる。やってらんねーわ、つーか俺じゃねえ、あっちがクソ、マッチング運最悪」
    「イライラする?」
    「あ? 見りゃ分かんだろ」
    「煙草吸う?」
    「何回言うんだよワーキングメモリー死んでんじゃねーの!?」
    「不味いから?」
     
     畳み掛けるように質問攻めにした。そしたらそのうちぽろっと、実は吸った、なんて口滑らせたりしないかな、なんて期待して。だって面白いじゃん、あんなに嫌そうにしてたのに実は隠れて吸ってました、なんてさ。
     でも馬鹿にするつもりなんて全然ない、揶揄ったりもしない、ただ俺にだけ打ち明けてくれたら……打ち明けてくれたら、一体どう思うんだろう、なんで知りたいんだっけ。
     
    「ま、いいや。邪魔してごめん、煙草吸ってくる」
    「不味いんじゃねーのかよ」
    「不味くても吸わないと死んじゃう」
    「じゃあ死ね」
    「俺が死んだらシバケン泣いちゃうでしょ。一緒に行く?」
     
     いかねーよ、そんな感じの台詞と立てられた中指見せてくれたらそれで終わったはずだったし、それ以外のルートはないはず。俺も笑って手を振るはずだった。なのにシバケンはついてきた。何故か。
     一言だけ、行く、って言って、そのあとスマホを雑にポケットに入れて、フードを被って、それから両手もポケットに入れて、下向いてついてきた。
     ついて行ってるって思われるのが嫌だったのか、そう思われないギリギリの距離感でパタパタと着いてくる。途中段差でシバケンのスリッパが引っかかってちょっと躓いたの、音に反応して振り返りかけたとき視界の端に見切れたけど、気づかないふりしてあげた。こう言うので笑われるの、結構ムカつくしね。見てみぬふりしろよって思うじゃん。あと単純に、いちいち指摘すんの面倒くさかった。早く煙草吸いたくて。
     
     外に出て、昨日の雨で出来た水たまりを避けて歩いて灰皿のあるところまで。避けきれずに少し踏んでしまった水たまりの中の泥がぐにゅっとする嫌な感触にうわって思って、乾いた場所でつま先をとんとんして軽く落とした。シバケンはまだ後ろにいる。
     壁に寄りかかってポケットから煙草とライターを取り出して、一本咥えようとしたところでシバケンが到着。俺と同じように壁に寄りかかって、さっきとは逆に上を、空を見ていた。
     
    「吸う?」
    「しつけーな」
    「吸わないの?」
    「うるせー」
     
     確定かな、と思った。吸ってない、吸いたくない、吸わない、とは一度も言っていないのだ。しつこく聞いたのはどうでもいいやり取りを楽しんでいたのもあるし、それを確かめたかったのもあった。 
     さてどうしようか。一本あげたっていいし、もっとほしいなら残り全部あげたっていい。100円ライターで良ければ予備もある。素直に受け取るとは思えないから、無理矢理ポケットに突っ込んでやろうか。どんな反応するかな、楽しくなってきた。
     ふぅ、と少し大げさに煙を吐き出しながらシバケンを横目で盗み見る。まだ同じポーズで空を見上げていた。指の間の短くなった煙草とシバケンを交互に見る。楽しいこと、思いついちゃった。

     咽るギリギリに深く吸い込んで、煙草を灰皿にねじ込んで、そのままシバケンの方へ歩く。横目で俺を見て、もう終わったのか、って感じで下げかけたシバケンの顎に軽く触れてそれを制して、そのままキスをした。そーっと煙を送り込んでから、至近距離のシバケンの、きっとびっくりして丸くしてるはずの目を見る。それは意外にも閉じられていた。
     なのでついでとばかりに下唇を軽く噛んで、舐めて、離れたあとは横を向いて残りの煙を吐き出した。怒鳴られるか掴みかかられるかと思ったのにシバケンは、真っ赤な顔で目を閉じて、下を向いている。
     
    「吸ってるとこ犬飼に見られたらかなりやばいことになるじゃん? だから今はこれで我慢して。足りなかったらあとで声かけて」
     
     ついでのついでで頭を撫でて、さあ部屋に戻ろうと一歩踏み出したとき、シバケンは消え入りそうな声でおい、と言った。
     
    「なぁに?」
    「……やっぱ不味いじゃん」
    「ん?」
    「……初めて、吸った。俺の肺、勝手に汚染してんじゃねーよ」
    「あれ?」
     
     俺読み違えてたみたい。吸ったことあるんじゃなくて、吸ってみたかったんだ。みんな吸ってるのに俺だけ、って思ったのかな。好奇心じゃなくて仲間はずれがいやだったのかな。俺はシバケンじゃないからわかんないけど、もしそうなら、俺も、わかるよ。
     
    「もしかしてシバケンのハジメテ貰っちゃった? もっと欲しくなったらいつでも言って、好きなだけあげるよ」
    「きめぇ」
     
     いらないとは言わないの、可愛いね。素直じゃないのはわかってるし、わかってるからこそ全部裏返しなのも同時にわかっちゃう。シバケンそこに気づいてるのかな。まだまだ気づかないでいてほしいな、気付けない子どものままがいい。大人になるのは、まだ早いから。
     
     さっきシバケンがしてたみたいに上を向いて空を見た。もしかしたらもうすぐ雨が降るかもしれない。雲はすごい速度で流れていた。湿った空気に乗って、濡れた草の匂い、錆びた金属の匂い、色んな匂いが妙に生々しく感じるのに、煙草の味は、触れた肌の温度は、重ねた唇の感触は、全部変にリアルで逆に偽物みたいだ。
     
    「このままだと濡れちゃうよ、ナカ、イこ?」
    「……ああ」
     
     ねえ調子狂うからいつものシバケンでいてよ、俺までいつもどおりでいられなくなるじゃない。
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    Replies from the creator

    あすと

    DOODLE夏の終わりの眠れないかいだくん(と誰か)の話
     別に、セックスなんてしなくたって死ぬわけじゃない。性欲なんて一人でだって満たせるし、そしたらあとは眠ればいいだけ。夢は見ない。寂しさは持っていかない。
     本当にほしいものが何なのかなんて自分でもわからない。繋がり、ほしいけど、繋がるってどういうことか本当はわからない。経験のないことは想像するしかないけど、経験がないからその材料すらも持ち合わせてはいない。仮に誰かが教えてくれたとしても、それはそいつの見解であって俺も同じとは限らない。
     だから、わからないことはずっとわからないまま、なんとなくわかった気になって欲しがり続けるしかないってこと。

     さっきまで生ぬるく感じてた扇風機の風は、今は少し寒いくらいだ。暇だな、暇だからこんなに余計なこと考えちゃうんだ。眠りたい。でも今眠ったら連れて行ってしまう。そんなのは嫌だから、目の前の背中にしがみつく。冷えた汗に頬をつける。ゆっくりと、同じリズムで震える体温。 どうして置いてくの、俺も一緒につれてってよ。一緒ならきっと、夢を見るのだって怖くない。ねえお願い、俺よりあとに眠って。置いて行かないで。俺が眠るまで、抱きしめて頭撫でてよ。子供扱いしたっていい、馬鹿にしたっていい、毎晩一緒に眠ってくれるなら、俺、誰よりもいい子になれるから。
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