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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    吸死ワンライ「思いがけない贈り物」。
    みっぴきのクリスマス。

    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.
    ##94SS

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    高間晴

    TRAININGロナドラ800字。■お手入れ


     ソファに座っていたロナルドは自分の唇の皮を剥いた。やっちゃいけないとは分かっているが、皮がめくれかかっているとついやってしまうのが人間の心理。
    「ッ、痛って」
     そう言って自分の唇をぺろりと舐めると鉄錆の味がした。同時にその声で気づいたのか、傍にいたドラルクが携帯ゲーム機から顔を上げる。
    「何してんの、きみ」
    「唇の皮むいてた」
     それを聞いたドラルクは「ハァ!?」と目を瞠って、信じられないものを見る目になる。続いて「ちょっとそのまま動くなよ」と言いおいてゲーム機を置くと自分の棺桶の方へ行く。蓋を開けてその中から何やら取り出した。何かの薬だろうか。小さなチューブを手にして戻ってくる。
    「なにそれ」
    「リップバーム。リップクリームより保湿力があるやつ」
     ロナルドの隣に座るとチューブの蓋を開けて中身を人指し指に適量取った。そして反対側の手でロナルドの顎を捕まえてそれを唇に塗りつける。ドラルクの冷たい指先がロナルドの唇を数回撫ぜていって離れた。丹念に唇にそれを塗られたロナルドは半ば呆然とドラルクの顔を見つめる。
    「まったく、きみは外見に無頓着だから困る」
     せっかく美しい 803

    高間晴

    TRAININGロナドラ800字。
    事後のひととき。
    ■明かりを消して


     だいたい事が終わった後には、ドラルクはなかば気絶するように眠り込んでしまう。体力がないせいだ。だがこれでも真っ最中に何度も死ぬのを繰り返していた頃を思えば、進歩したほうである。
     真っ暗な部屋のソファベッドの上で、ロナルドはドラルクの体に腕を回し抱きかかえるようにして横になっている。
     そういえば、初めてした時もこいつに「電気消して」って言われたっけ。
     恥ずかしいんだな、と思ってその通りにしたのはいいが、吸血鬼であるドラルクは夜目が効く。結局ロナルドの表情などで彼がどれほどドラルクを欲しがっていたかを見せつけられて、逆に死んでしまったのはそれなりに過去の話になる。
     ロナルドはドラルクの髪を梳くように撫でて、その額に唇で触れる。愛おしさがこみ上げて口から少し笑いが漏れた。
     初めて会った時はこの吸血鬼とこんな仲になるなんて想像もしていなかったのに、人生ってわからないもんだ。
     すると、ドラルクが腕の中で身動ぎした。くあ、とあくびを噛み殺す気配がする。
    「……私、また寝てた?」
     そう訊く声はかすれて渇いているようで、少し無茶させすぎたなとロナルドは少し反省する 832

    高間晴

    TRAININGロナドラ800字。
    ※死ネタ注意。
    ■ずっときみを待っている


     私は夜更けに墓地を訪れた。さすがにこの時間帯となれば他に人影もない。ジョンを肩に乗せ、近くの花屋で買った百合の花束を手にして歩いていく。吸血鬼ゆえに夜目が効くおかげで懐中電灯なんてものもいらない。
     やがて目指していたとある墓標の前に立つ。そこには彼が眠っている。
    「……こうしてここに来るの、何度目だろうね。ねぇロナルドくん」
     そう墓石に問いかける。
     彼はずっとずっと昔に死んだ。ひとつ言っておくけど、死因は老衰。最期は私とジョンと、彼と親しかった人々が看取った。
     墓の前にひざまずいて白百合の花束を捧げると、月明かりが辺りをまばゆく照らし出す。空を見上げる。見事な蒼い満月。ああ、彼が空の上からこっちを覗き込んでるみたいだ。眩しくて私は目の上に手をかざす。
    「何度でも言うけど、きみと過ごした時間はとても楽しかったよ」
     その昔に同じ台詞をベッドの上で意識が混濁し始めた彼に言ったら、こう返ってきた。「俺もだよ」って。
    「だから、きみも早く私のところに帰っておいで。そうしてまた私と馬鹿騒ぎしようじゃないか」
     私はポケットから小さな箱を取り出す。そこには彼 808

    高間晴

    TRAININGロナドラ800字。
    死別ネタ。
    ■しょっぱいジャム


     台所から立ち上るのは、煮詰められた甘い甘いジャムの匂いと湯気。それを嗅ぎつけたジョンが主人のもとへ駆け寄って足元で「ヌー」と鳴いた。
    「おや、ジョン。味見したいのかね? まだ煮詰めきれてないんだけど」
    「ヌヌヌーヌ!」
     そう胸を張って言えば、ドラルクが笑ってシンクの上にジョンを持ち上げて立たせる。
    「こぼすといけないからな。
     ――今日は特製クランベリージャムだ」
     そう言ってひとさじ、大きな鍋から真っ赤なジャムをすくうと充分吹き冷ましてからジョンの口元にやる。すぐに食いつくジョンにドラルクは顔をほころばせた。
    「オイシー!」
    「はははっ。そうだろう。これだけ作り置きしておけば、あの若造にだっていくらでも――」
     そこで思い出したようにドラルクの表情が曇る。
    「――……そうだ、もういないんだっけ」
     もうロナルドが死んでどれくらい経つのだろうか。もう彼が死んでしまったことすら忘れるくらい長い時を、使い魔と二人きりでドラルクは過ごしていた。
     その間ドラルクが感じたのは、空虚と退屈さだった。当然のことだが人間が一人死んだくらいではこの世界は変わらない。だがドラ 814

    高間晴

    TRAININGロナドラ800字。■好きなひと


     今回もロナルドはフクマになんとか原稿を渡すことができた。ついでにフクマは原稿を持っていく代わりにファンレターの束を置いていった。それが現在机の上に数十通散らばっている。
     ドラルクはその中の一通の封筒を手に、事務所のソファにぐったり伸び切ったロナルドに訊く。
    「きみ、好きな人とかいないの」
    「……は? 突然何言ってんだよ」
    「だってこれだけファンレターもらってるし、気になる人の一人や二人いないのかって」
     ロナルドは体を起こすと、ドラルクの手から封筒を引ったくった。
    「いたらいたでお前に教えると思うか? 絶対ネタにして笑うわ引っ掻き回してメチャクチャにするわだろ」
    「おや、私の行動が読めるようになったか」
     おりこうさんでちゅね~。とドラルクがふざけた口調でロナルドの頭をくしゃくしゃに撫でる。ムカついたので反射的に殴ったらドラルクは死んだ。
     ロナルドは手にした封筒を開けて中身の便箋を取り出す。そこには熱烈なメッセージが綴られている。女性らしいやわらかな文字と文章に見覚えがある。あ、この人確かロナ戦一巻からファンレター送ってくれてる人だ。曰く、ロナ戦ブログ時代からの 826

    recommended works

    高間晴

    DONEお題箱より頂いた、「ひたすらモさんを褒めちぎるチェズ」。
    なんか手違いで褒めるというよりは好きなところを挙げていますがご容赦ください。
    ■このあと美味しくいただきました。


     チェズレイは目的のためならかける手間を惜しまない男だ、とモクマは思う。
     ふらりと出かけ、数時間ほどでセーフハウスに帰ってきたチェズレイを玄関で出迎える。その手にはケーキが入っているらしき箱と茶色の紙袋があった。甘いものに目のないモクマは嬉しそうに笑う。
    「チェズレイ。それお土産? ケーキ?」
    「タルトです。苺が旬なのも今のうちですし、買ってきました。一緒に食べましょう」
     そう言いながらキッチンのダイニングテーブルに箱と紙袋を置く。待ちきれずにモクマが箱を開けてみると、たっぷりの真っ赤な苺がクリームの上に乗ったタルトが二切れ入っている。テーブルに手をついて箱を覗き込みながらモクマはお伺いを立てる。
    「あ、おじさんコーヒー淹れよっか? タルト甘いだろうからブラックで――」
    「いえ、クリームを使ったタルトに合わせるなら油分のあるコーヒーより、口の中がさっぱりするストレートの紅茶ですね」
     それを聞いてモクマは首を傾げる。紅茶。コーヒー豆ならあったけど、茶葉なんてなかったはずだ。そこで隣に置かれている紙袋に目が行く。チェズレイはその中からアルミの小 2964

    高間晴

    DONEチェズモクワンライ「傷跡」。一緒にお風呂。■揃いの傷跡


    「はぁ~いい湯だ……」
     二十年に渡る放浪時代や、あのミカグラ島であった一連の事件。その間、ゆっくり湯に浸かるなんて考えられなかった。
     場所はヴィンウェイのセーフハウス、バスルーム。広々とした大理石調のサーモタイルが敷かれた空間。そこに鎮座する大きめの猫足バスタブに湯を張って、モクマは風呂の時間を楽しんでいた。
     実は家主から先ほど連絡があり、『帰りが少し遅くなります』とのことだったので先に風呂を済ませてしまおうと思ったのだ。
     ざば、と湯船から湯をすくって顔に浴びると、生き返るような心地がする。鼻歌でも歌いたい気分だ。ふと顔を上げれば、ラックにはチェズレイが使っているシャンプーや洗顔料、ボディソープのたぐいがずらっと並んでいるのが目に入る。マメな男だなぁ、なんて感想しか出てこない。
     そこへ声が飛び込んできた。
    「モクマさん、入ってもいいですか?」
     ああ、あれか。あの洗顔料、確か洗面所に置いてあるやつだったはず。忘れてたのを取りに来たのかな、なんて思ったモクマは軽く返事した。
    「はいよ。どうぞ」
    「では失礼して」
    「……って、お前どうしたの!?」
     モクマが驚い 1663