Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    高間晴

    @hal483

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 387

    高間晴

    ☆quiet follow

    チェズモク800字。チェがモの遺書を見つけてしまった。

    #チェズモク
    chesmok
    ##BOND

    ■愛の言霊


     ヴィンウェイ、セーフハウスにて。
     昼過ぎ。チェズレイがモクマの部屋に、昨晩置き忘れた懐中時計を取りに入った。事前にいつでも部屋に入っていいと言われているので、こそこそする必要はない。部屋の中はいつもと同じで、意外と整理整頓されていた。
     ――あの人のことだから、もっと散らかった部屋になるかと思っていたけれど。よく考えればものをほとんど持たない放浪生活を二十年も続けていた彼の部屋が散らかるなんてないのだ。
     ベッドと机と椅子があって、ニンジャジャングッズが棚に並んでいる。彼が好きな酒類は「一緒に飲もう」と決めて以来はキッチンに置かれているので、その他にはなにもない。チェズレイはベッドサイドから懐中時計を取り上げる。と、ベッドのマットレスの下から何か白い紙? いや、封筒だ。そんなものがはみ出している。なんだか気になって――というよりは嫌な予感がして、半ば反射的にその封筒を引っ張り出した。
     その封筒の表には『遺書』と書かれていたので、チェズレイは硬直してしまう。封がされていないようだったので、中身の折りたたまれた便箋を引き抜く。そこには丁寧な縦書きの文字が並んでいて、それを目で辿っていく。

     チェズレイへ。
     一応俺のほうが先に死にそうだから、遺書を残しておく。
     お前のことだからこんなもん読む前に、黄泉路に付き合ってくれるのかもしれない。後追いするな、なんて言わないから安心してくれ。
     でももしこれを読んだのなら、ゆっくり休みを取って、美味いもん食べて温かい風呂に浸かってほしい。それからでも遅くない。
     地獄でのんびり待ってるよ。

     便箋にはそんな短い文章が綴られていた。
     読み終わったチェズレイは、しばらく便箋を見つめたままうつむいて固まっている。
     ヴィンウェイには遅い春が来て、窓からは暖かい陽の光が射し込んでいる。外から鳥のさえずりが聞こえていた。フローリングの床に、チェズレイの影がただ落ちている。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💗💗💗💗💗💖💗💖💖😭🙏😭😭😭😭😭🙏💗💘💕😭🙏🙏😭😭🙏😭💗💗😭😭😭🙏🙏🙏🙏❤😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works