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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。口内炎。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    しみるから 敦の作った朝食を目の前にして、太宰は一口だけ食べたと思ったら、箸を持ったまま難しい顔をしている。
    「どうしました? 食べないんですか?」
    「いやほら……ちょっと口の中が痛くて」
     左側の頬を手で押さえたまま、太宰は憂鬱そうな表情でいる。
     卓袱台の向かいにいた敦が近づいてきて、「見せて下さい」と云うので太宰は素直に口を開ける。敦がよく見ると、左の頬、その内側にぽつんと白い点ができていた。
    「あー……口内炎ですね」
    「やっぱり?」
     太宰は口を閉じると、箸を置いてため息をついた。
    「敦君の作ってくれたご飯、無駄になっちゃうね」
     寂しそうな顔で敦を見てくるものだから、敦は困ったように笑う。
    「食べたければ何時でも幾らでも作りますから」
     太宰は湯呑に注がれたほうじ茶に口をつけるが、熱い茶が滲みたのか眉をしかめる。
    「あとでゼリー飲料でも買ってきますから、それ飲んで大人しくしていて下さい」
     そう云われてしまうと太宰も返す言葉がないのか、黙り込んでしまう。
     敦は、宥めるように太宰の髪を撫でて左の頬に音を立ててくちづけた。
    「はい。早く治るおまじないです」
     太宰は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐにとろけるような笑顔を浮かべて敦に抱きついた。
    「ありがと」
     微笑みを含んだ言葉。お返しに敦の頬に唇で触れると、二人して幸せな顔で見つめ合う。
    「――それにしても、どうしましょうね。太宰さんの分の朝ごはん」
     敦が食卓に目をやる。
     今日の朝食は焼き鮭と具沢山の味噌汁とご飯。捨てるのは忍びないが、太宰の口内炎が治るまでは保ちそうもない。
    「敦君が食べなよ。育ち盛りなんだからこれくらい入るでしょ?」
    「そうですね。じゃあ頂きます」
     敦は箸を持つと食事を始めた。その様子を傍らで太宰がじっと見ているので、少し居心地が悪い。
    「そ、そんなに見ないでもらえます?」
    「いいじゃないか。私は君がものを食べている姿が好きなんだ」
     太宰は卓袱台に頬杖をつくと、目を細めてそう云った。
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    高間晴

    MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで


     極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
     キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
     コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
    「モクマさん、できましたよ」
     声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
    「あ、できた?
     ――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
     そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010