一度あることは二度あるノックノックを開きメッセージ履歴を確認する。
明日の夜、新エリー都に用があるから泊めてくれないか?と送ったメッセージに了承の返事を再度確認しライトはフ…と1人笑う。
あえて日付を書き送らなかったが明日は2月13日、つまりバレンタインデーの前日だ。
去年は自分の衝動を抑えられず後先考えず突撃した結果情けない姿を見せただけでなくベンに心配をかけてしまった。
去年の二の舞を起こす訳には行かない。
今年も当日は平日、ベンの性格上お願いすれば休んでくれるかもしれないがそんなわがままを言うのも気が引ける。
しかし仕事が終わるのを待てば去年の再来が起こる可能性もある。
ならば答えは簡単だ。朝に会ってしまえばいいのだ。
つまりは明日ベンの家に泊まり朝にバレンタインのプレゼントを渡せば当日に会えるし渡せるしベンの仕事も休むことなく普段通りにできるというわけだ。
まさしく完璧な計画。
ちなみにあえて日付を言わなかったのはベンへのサプライズ…は建前で結局今年も恥ずかしさが拭えなかったからである。
「1人でドヤってやがりますわ…」
またアホなことでも考えてんですわね。
呆れたようにルーシーが言えばバーニスが楽しそうに笑う。
「んーでも本人楽しそうだし!また恋人のくまさんのことでも考えてるのかな〜?」
「頭の中お花畑のドアホですわね」
「そんなこと言って〜ライトに休みあげられるように調節してたクセに〜!」
このこの〜とバーニスが肘で小突くとぷい、とルーシーが顔を背けた。
「ライト大丈夫か?」
「……。」
日も完全に落ち外は暗くなっている時間。
ベンと待ち合わせて食事を一緒にとった。
久しぶりに火鍋を食べに行き楽しく会話なんかして、そこまでは良かったのだか心が浮ついていたライトは酒の配分をミスってしまった。
完結的に言うと酔った。割とベロベロに。
そんなライトを介抱しつつベンの家まで来て今は水を片手にトイレの前で背中をさすられている。
早々に去年とはまた違う醜態を晒してしまっている。
「すまん……」
明日も仕事だろうにこんなことに時間を使わせている。
予定では夜もイチャつく予定だったのに。
吐き気と悔しさで泣きそうになりながら謝れば気にしなくていいと優しいベンの声がして更に追い打ちをかける。
そんなライトにお構いなく襲って来る吐き気に本当に少し泣いた。
「本当に…迷惑かけた…」
数度にわたり胃の中を外に出した結果酔いも吐き気も治まったライトがベンに頭を下げる。
「気にするなって言っただろう?ほら、水分を撮ってから風呂でも入ろう。」
優しく頭を撫でられ水を渡される。それを素直に受けとって飲み干すとベンがライトを持ち上げる。それに対しベンが抱えやすいようにライトがもぞりと動く。
最初の頃は抱えられるのに慣れていなかったのに今では当たり前のように協力してくれる動きにベンが無意識に笑う。
「ベン?どうかしたか?」
そんなベンを不思議に思ったのか首を傾げるライトにいいや、と一言返し風呂場へと向かった。
「ライトの髪は柔らかいな」
「人間の髪なんてだいたいこんな硬さだろう」
熊のシリオンでも入れる大きめの、と言っても2人で入ればギリギリのサイズの風呂に2人で浸かりながらベンが眼下にある濡れた髪をちょいと掴む。
「ベンの毛も夏に比べると柔らかい気がするが」
まぁ今は濡れてるから分かりにくいが。ベンの間に収まっていたライトが自分を抱えてる腕の毛を触りながら言うとぼふ、とライトの頭の上に顔を乗せる。
「冬は毛量が増えるからなぁ」
抜け毛が面倒なんだ…と嘆くベンにライトがふっ、と笑う。
「もふもふで触り心地がいいから俺は好きだぞ」
「ライトがそう言うならいいんだが…」
満更でもなさげにベンがそういうのでライトの胸がふわふわと温かくなる。
「まぁ俺はベンだから特に好きってのはあるがな」
振り返りつつニヤリと笑えばベンがグゥと声を出す。
大体耐える時に出す声にライトが耐えきれず声を出して笑う。
「アンタホント素直だよな?そんな所も大好きだぞダーリン♡」
調子に乗ったライトが向きを変えてベンに跨るとちゅ、ちゅと鼻先にキスを落とす。
「ら、ライト、やめないか…!」
グル、グルル、と喉が鳴りだしたベンに楽しくなって口から除く牙をぺろりと舐めると後頭部をグッと押さえつけられる。
「ンッ!?、ふ」
がぶりと噛み付くように口を塞がれ舌が口内に入り込む。
べろりと中を舐め回すそれにびく、とライトが震える。
舌を絡める度に鳴る水音が風呂場の壁に反響して普段より響く、耳まで犯させるようなそれにグズりと重くなりだした腰にライトがベンに甘える様に擦り付ければベンの手が臀に回る。
続きを期待するように腰が揺れたところでザブンっ、と水しぶきを立てながらライトを抱えベンが立ち上がる。
「はっ、?」
突然のことに固まるライトを余所にそのまま風呂を出ると勢いよくバスタオルで包まれる。
「あんな所で…誘惑するんじゃぁない……」
風を引くだろう…と地を這うような声でベンが言う。
傍から聞けば悲鳴が上がりそうなほどの威圧感があるが単に全力で欲を押さえつけているためだと分かってるライトからすれば別段怖くは無い。
「すまん、つい」
それでも調子に乗った自覚はあったので謝るとまたグゥ、と唸り声が聞こえた。
「君は、……本当に…」
頭が下がっていくベンに特大サイズのバスタオルをとるとわしゃわしゃと全身を拭く。
「悪い悪い、アンタがあんまりにも可愛いもんだから調子に乗っちまったのさ」
拭きたてで湿っているベンの頭にちゅ、と啄むようなキスを落として再度謝ればぎゅう、と抱きしめられる。
「君が…わざと日付を言わないようにしていたから俺も黙っていたんだが、14日は俺も休みなんだ」
ライトの胸元に顔を埋めつつベンがボソボソと話す。
「もうバレンタインだろう…ライト、君が欲しい」
胸にくっついたまま顔を上げそんなことを言ってくるベンにライトは面食らって硬直する。
確かに介抱されていたせいで時間は押していたしもう日付は変わってるかもしれない。
しかしもうこの際そんなことはどうでもいい。ライトは混乱した。
まさか自ら休みを取っていたとは思わなかったし自分がわざと日付を言わなかったのも気づかれていたのも恥ずかしい。
もしかしたらその他諸々の思惑もバレていたのだろうか…?
嬉しいと恥ずかしいが同時に押し寄せ更に甘えるように自分の胸元にもたれ掛かるベンに先程から心臓が暴れ回って仕方ないのだ。
耳まで赤くなっていくライトにベンが悪戯にべろりと首を舐める。
ヒッッ!?と小さく悲鳴をあげたライトにベンがかぷ、と甘噛みする。
かぷかぷと肩や首を甘噛みされつつ腰や臀、脚の付け根と際どい所をベンの大きな手が這わされていく。
恥ずかしさとは別の熱に震え出した身体にライトがきゅ、とベンの毛を掴むとべろ、と口を舐められた。
「君が仕掛けたんだぞライト」
「…ッ!!…ずるい……」
首まで赤くなったライトが悔しそうに呟いた。