にゃん。ライトとのデートの日、少し約束の時間に合わせるには早い時間だがまぁ待てばいいかとベンは家を後にした。
「ライトさんはいないのか…?」
待ち合わせ場所に近づくにつれ嗅ぎなれたライトの匂いに気づき歩く速度を速めて目的地に到着してみればライトの姿はなかった。
まだ待ち合わせ時間より30分ほど早いため居ないこと自体はおかしくない。ただ確かにライトの匂いがするのだ。
この付近にいるのは間違いない。
そう判断し、ベンは周囲を探索する。
と街中の隅、小さな公園のベンチに座っているライトが居た。
近づくと数匹の猫に囲まれ猫じゃらしを振っている。
その猫じゃらしに向かって1匹の猫が飛びかかるがすい、と器用に動かし猫じゃらしが逃げる。それを幾度と繰り返し頃合いを見て猫に捕まってやる。
ご機嫌な猫にライトがふ、と笑った。
「君は猫の扱いにも長けているんだな」
近寄りつつ声をかけるとそに反応したライトが顔を上げる。
「ベンさん、悪いもう約束の時間になってたか?」
ベンを見て立とうとするライトに首を振って否定しベンもライトの横に座る。
ライトが動いたことで足元で転がっていた猫がまたもたれかかり直した。
「いや、まだ30分はある。早く来たらライトさんの匂いがしたもんで気になって来たんだ。」
ベンがちょいちょいと猫に手を寄越すと1匹の猫がスンスンと鼻を近ずけた後すり、と顔を寄せる。
ベンがよしよしと頭を撫でた。
「アンタも随分と猫に好かれているようだな」
そんな猫とベンの様子を眺めつつライトが笑えばベンもへによ、と笑う。
その様子を眺めていた他の猫もベンの元へ寄ってくる。
「ここの子達は人懐っこいな」
猫を順番に撫でつつ嬉しそうにベンが呟く。
「猫が好きなのか?」
「そうだな…そういう訳でもないがこう甘えてくれると癒されるな」
ライトの問にベンが猫を眺めつつ答える。
その答えにライトが癒されるね、と独りごちる。
「ベンさん」
「どうしたライトさ、」
ライトの呼び掛けに前のめりになっていた体を起こした隙をついてごろんとベンの膝の上に寝転がる。
さ、の口のままベンが固まる。
固まったままのベンを余所に腹にすりすりと顔を擦り寄せライトが甘えるような素振りを見せる。
ちら、と上目遣いで見上げた目がパチリと合った瞬間ベンがはっと動く。
「らららライトさん!?どうしたんだ急に、」
今までも家ではベンの膝によく乗ってくるライトだったが外での触れ合いは殆どなかった。
だと言うのに唐突に膝の上に寝転がり甘えてこられてベンの心臓が心配になるほどドッドッドッと忙しなく動いていた。
「……にゃー」
そんな様子のベンに目を細めてにこりと笑うと一言。
「グッ」
クリーンヒットとはまさにこの事。ベンは顔を己の手で抑え天を仰ぐ。
「そんな…可愛いことをしないでくれ……」
致命傷を負ったベンが力なくそう言うと心外だとばかりにライトが肩をすくめる。
「俺じゃ癒しにならないか?」
「君は刺激が強過ぎる…それにこんなに魅力的な猫が居たら手離したく無くなる…」
「ほう?」
ライトが嬉しそうにベンの首に腕を回す。
すり、と猫がするようにライトがベンの胸元に甘える。
「なら連れて帰るか?…ご主人様?」
誘うように囁けばベンの喉が地響きのように鳴る。
「君は、そうやって…!」
耐えるように力み歯をむき出しにするベンに尚もライトは楽しそうに身体を擦り付ける。
「俺を飼ってくれないのか?」
追い打ちをかけるようにライトが鼻先にキスを落とすとベンがばっと立ち上がる。
もちろんライトを抱えて。
「ライトさん、すまないが今日の予定を変更してもいいだろうか…」
ライトから誘惑したのに律儀にそんな伺いを立ててくるベンに思わずふは、とライトが笑う。
「もちろん、たーんと可愛がってくれよご主人様?」