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    Lupinus

    @lupi_eggplant

    テキストを投げ込むスペース/主刀/ファンチェズ

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    POIPOI 46

    Lupinus

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    男さにわ×鬼丸くん(さに鬼)の現パロのようなもの第2回
    この設定https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1092520&TD=3153950のようなものの続き すけべ導入への道(まだ全年齢)
    前回(出会い編)はhttps://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1092520&TD=3520184

    ##主刀

    ※その後鬼退治を終えた後もなんとなく粟田口の鬼丸さんちに通うようになった主人公が、しばらくして大学の先輩の鶴さん(五回生)に三条大橋西端のカフェに誘われる回
    ※ちょっとだけシリアス
    ※全体が書かれる予定はないです

     おごりだというからついてきたものの、新作のフラペチーノでもてなされる理由がわからない。見せられるようなノートは持っていないし、学食の割引情報に詳しいわけでもないのに。
    「で、その後調子はどうなんだい?」
     鶴さんはふだんから世話になっている先輩のひとりで、このところやけに運が悪くて凹んでいるという話はした。その後髭切先輩の紹介で出会った粟田口の鬼丸さんなる人物に鬼を切ってもらった話もしたし、その鬼丸さんが鶴さんとも知り合いだったのも聞いた。
     それにしたって、お茶をしながら最近どう?なんて尋ねられたのは初めてではないだろうか。
    「え。それはその、嘘みたいによくなりましたね。電車も遅れないし自転車もパンクしないし、忘れ物もなくなって」
    「だろう? やっぱりあいつが切ってくれたんだろうさ、きみにつきまとってた鬼を」
     旧友の活躍が嬉しいのか鶴さんは無邪気に笑っている。
    「は、はぁ……」
     あの日山科の廃墟で見た光景はやはり夢だったのではないかと思っている。あんな怪物が目の前に現れて、しかも鬼丸さんは日本刀を抜いたとたん時代劇の登場人物みたいな姿に変身するなんて、まるで映画のワンシーンだった。
     しかしあれ以来不運な出来事はぴたりと止まったし、鬼丸は今も粟田口の古い家で暮らしている。大学からの帰りに何となく足を向けては古い家の手入れを手伝ったり、時折彼を訪ねてくる知人たちと顔を合わせたりもしている。
     だが鬼丸本人のことは、今になっても何一つわかっていないのだ。
    「あの、鬼丸さんってどういう人なんですか。
     先輩たちと知り合いってことは同学年で、進学も留年もしないで卒業したってことでいいんですか。それにあの家、市内のど真ん中なのにあんなに古いまま残ってるし、もしかしてすごく由緒ある一族の出身とかなんですか」
     髭切先輩から紹介された時点で相当な変わり者だろうとは予想していたが、隠語でもたとえ話でも何でもなく文字通りの鬼退治をやってのける人間が現代に生きているなんて。この目で見なかったらとても信じられない。

     いちいちうなずきながらにこにこと話を聞いていた鶴さんが急に真顔になる。
    「なぁきみ、妙なことを聞くが」
     この顔が出たときはたいてい本当に妙な質問が飛び出すのだが、今回はそのなかでも度を超していた。
    「鬼丸の頭に角が生えてるのを見たことがないか? いや、太刀を抜いて鬼と戦ってる最中じゃなく、日常のふとした瞬間にだ」
     なぜ知っているのか。
     初めて会った日、薪割りをする鬼丸の後ろ姿を前にしたとき、側頭部から長く伸びる角が見えたことを。あのころはまだ刀を抜いたあとの姿など想像もしなかったのに、どうして鬼丸に角があると思ったのかは今もわからない。もちろん誰にも言ったりはしなかった一瞬の目の錯覚を、どうして鶴さんが知っているのだろう。
     答えられずにいるあいだの表情から鶴さんはすべてを察したらしい。
    「……なるほどなぁ。髭切がきみを鬼丸のところへやったのはそういうわけか」
     飲み干したずんだフラペチーノを脇に押しやり、鶴さんはわずかに身を乗り出した。
    「髭切に聞いたと思うが、鬼丸はこの街で鬼を切る仕事をしてる」
     昼日中の、鴨川に等間隔に並ぶカップルを眺められるカフェでする話題ではない。現場を見ていなかったら冗談はやめて下さいと今すぐ席を立っていた。

     オカルト映画のストーリーとしか聞こえない話を鶴さんは平然と続ける。むしろそうとしか聞こえないからこそ、学生だらけのこんなカフェで誰にも怪しまれずに済んでいるのかもしれない。
    「鬼を切るってことはつまり、鬼と接触する機会が増えるってことだ。戦いの中、間近で鬼の瘴気を浴びるうちに、だんだんとあいつ自身が鬼に近付いてくのは避けられない。
     刀を振るうときの姿はもとより、なんてことない日常でも、ある種の人間の目にはあいつ自身が鬼に見えちまうくらいにな」
    「な、なんなんですか、そのある種の人間って」
     答えはない。さらに顔をぐっとこちらに寄せて鶴さんは続ける。
    「それを止めるには、鬼の力と相反する霊力を持つ人間の助けが必要になる。
     そんな力を持った人間はめったにいないし、まず自分がそんな力を持ってることに気付いていない……が、見つけるのは実はさほど難しくない。そういうやつは鬼に狙われがちだからな、鬼退治をするあいつとは必然的にかかわることになる」
     ついこのあいだまで鬼に狙われていた人間相手の前でこんな話をされれば、さすがに隠れた意図も透けて見えるというものだ。
    「……あの。鬼に狙われがちってやつ、ちょっと心当たりがあるんですけど、なんでそんな危険な目に遭わなきゃいけないんですかね」
    「そりゃあきみ、鬼にとっては目障りな存在だからじゃないか?」
     鬼に聞いてみたわけじゃあないが、と鶴さんは笑う。この人なら鬼にインタビューしていたとしても驚かない。
    「髭切がわざわざきみを粟田口まで行かせて、あいつと引き合わせようとした時点で妙だと思ったぜ。
     いつもなら、あの辺で鬼が人を襲ってるよって鳩を飛ばして終わるからな」
     あの先輩が伝書鳩まで飼っているとは知らなかった。
    「ちょ、ちょっと待って下さいよ」
     自分になんだか特別な力があるらしいのはわかった。鬼丸さんの角が一瞬見えたのもそのせいかもしれない。しかし自分で意識して身につけたものではないし、最近になって鬼に狙われるまで特に困ったこともないから、それで何かが変わるわけではない。
     が、鬼丸がだんだんと鬼に近付くという話を思い出すと事情は変わってくる。
    「そんな力があるんだったら、これからもなるべく鬼丸さんのところに顔を出して、何か鬼にならないように儀式とかしたほうがいいんですかね」
     鬼を切ってもらった人だし、無愛想なりにいい人だから付き合いは続けていきたい。いっしょにセミの声を聞きながら井戸で冷やしたスイカを食べたり、親戚の小学生たちを相手に人生ゲームをやったり、大学ではできないような交流も楽しんでいることだし。
     ただ鬼になるのを止めるとか、そんな陰陽師みたいなスキルはまったくない。サークルの資料室をひっくり返せば参考書でも見つかるだろうかと途方に暮れている前で鶴さんは屈託なく笑う。
    「なぁに、そう難しいことじゃない。なるべく近くで、なるべく親密に過ごすだけでじゅうぶんだ」
    「親密って言われても。とりあえず今くらいのペースで、引きつづき放課後に顔出すようにすればいいですかね」
     学校からそう遠くないし、今も週に一度は足を運んでいる。そのくらいの協力なら無理なくできそうだ。
     が、鶴さんの合格ラインには達していなかった。
    「んー、もう一声」
    「泊めてもらったりしたほうがいいですか? あっ、もちろん鬼丸さんが許してくれればの話ですよ」
     見た目は古いがこざっぱりと整えられているし風呂はリフォームされていた。盆地のど真ん中だが、周囲を緑に囲まれているせいかこの季節でも快適に過ごせるし、電波も入るから自分としては宿泊は苦にならない。問題は鬼丸さんがうなずくかどうかだ。
    「泊めてもらってどうするんだい」
     それにしても鶴さんはさっきから何がそんなに楽しいのだろう。
    「遅くまでお酒でも飲んで語り明かすとかですかね。話弾むかわかりませんけど」
     いつの間にやら泊めてもらえる前提で話をしていた鶴さんが急に無表情になる。
    「なぁ、もしかして髭切は何も言ってなかったのか?」
     何を言われていてほしかったのかよくわからない。
    「何も、って何がですか。鬼を切ってくれるから会いに行ってごらん、くらいですよ」
     ははぁ、と溜息だか納得だかわからない音を出し、ぐぐっと額を寄せた鶴さんが今日いちばんに声を低くする。
    「霊力を分け与える一番手っ取り早い方法はなぁ、恋人同士みたいに一夜を過ごすことなんだよ」
    「はい?」
    「だから」
     本気にしたかい冗談だよと笑うかわりに、鶴さんはぜったいに周りから聞こえない声量でささやいた。
    「抱いてやれと言ってるんだ」
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