その香り、危険につき ロンドン、メイフェア。春の夕刻。
エードリアン・ヘアフィールドは、猫のエドガーを片腕に抱えたまま、届いたばかりの小包を開封していた。自身がオーナーを務める香水ブランドの、開発中の新作だった。
「えらく派手な箱だな」
彼はうんざりして小さくため息をつく。香水部門はどうやらまた妙な企画に手を出したらしい。外箱を開けて取り出してみると、試作品の小瓶のラベルには、小さな文字でこう書かれていた。
“Selective Aphrodisiac – Only effective on receptive temperament(選択的媚薬―受容的な気質にのみ効果あり)”
「何だそれ?」
エードリアンが眉をひそめながら蓋を取った瞬間、
947