セックスしないと恋人が死ぬ部屋ガヤガヤと騒がしい居酒屋で久々に2人きりで飲んでいた、前に会ったのはいつだったか、最近は忙しくてなかなか会えなかっただけに目の前にいる銀色は嬉しそうに酒を飲んで笑っているのを見て仕事ばかりで荒みかけていた心が癒されていくのを感じていた。
「ねえ土方くん、このあとどうするの?」
「ん?あぁ、どうしたい?」
頬杖をついて愛おしい男の顔を見ると、白い頬を赤く染めて目をうろうろとさせ始めた。
可愛いやつめ、と頬を撫でてやると目を細めて手のひらにすりすりと頬を押し付けてきた。
抱きてぇな、むくむくと湧き上がる欲望を必死に抑えて酒を飲むとカランコロンという音と共に大きな声が聞こえた。
「金時〜!金時やいか!久しぶりじゃのぅ!」
「んあ?お前か…てか金時じゃねえってば」
鬱陶しそうに言うけれど顔は嬉しそうな銀時、突然現れた声の大きい音、辰馬?は図々しくも銀時の隣にどかりと座り通りすがりの店員に声をかけて酒を頼んだ。
「あはは!お邪魔します〜!」
「あ〜もう鬱陶しい!隣に来んなよ…で、なあに?お前いつ帰ってきたの」
「昨日じゃ!地球の近くに来たき久々にゃあ!丁度時間があったきおりょうちゃんに会いとうてのぅ、おまんにも会いたかったし万事屋探しよった!」
やけに距離の近い辰馬という男は酒を飲みながら銀時と仲良さげに話をしている、この男人のこと無視か?そして銀時、何故デート中なのに相席を拒否をしないんだとモヤモヤする気持ちを抑えながら男をやんわりと席を外させるように声を掛けようと言葉を選び始めると辰馬がこちらを見た。
「金時、友達と飲みよったがかえ?すまんのう!でも飲むがやったら大勢の方が楽しいぜよ!」
あ、辰馬と申します〜と名刺を差し出してきたのであ、どうもとうっかりかしこまって受け取ってしまう。
なんだこの男、自分のペースに引きずり込むのが随分上手いな、なんて思いながら貰った名刺をポケットに入れて酒を飲む。
目の前で楽しそうに笑い合う2人を見て面白くない気持ちになってくる、じっと銀時を見つめると銀時はこちらに気づく様子もなく辰馬の話す宇宙の話と貿易で儲けた話をツッコミを入れながら楽しそうに聞いていた。
せっかくのデート、楽しくなかったのかよ
なんて嫌な感情が芽生えてくる
自分はこんなにも女々しい男だったろうか?
そんなにその男が良いのか、と。
彼氏だろ?俺は、なんで放って他の男と話すんだよと歯を食いしばって酒を一気に流し込む。
「なあ、ちょっといいか?」
「あ、土方くんごめんね、どうした?」
「2人はどういう関係で?」
イライラする気持ちを抑えながらひくひくと引き攣る顔で笑いながら気になっていたことを聞くことにしてみた、随分と仲が良さそうで昔からの付き合いのような気がしたのだ。
「幼なじみっつーやつかなぁ、こいつとは戦時中に出会ってね」
「おん、付き合いはまあそれなりに長い方ぜよ、こいつは昔っから」
そこからはもうあまり覚えていない、そうかやっぱり幼なじみか。
そりゃ仲もいいわけだ、出会って1年やそこらの自分よりも心のおける関係性を築いていて、恋人を置いて話込めるくらいには一緒にいて楽しい存在なのだ……なんだこれ。
俺は本当にいつの間にこんなに情けない男になってしまったんだ、こんな女々しい感情。
あぁ、情けないやめだやめだと酒を一気に煽り立ち上がる。
「銀時、俺ァもう帰るよ」
「え!?あ、ちょまって土方」
「お?もう帰るがかえ?早うないかえ?」
外まで追いかけてきた銀時に手を握られる。
トゲトゲした気持ちがそれだけで一気に丸くなる感覚に自分でも呆れるくらいこの男に惚れているのだと感じた。
「土方くんごめんね、あいつあんまり帰って来ないからさ、嬉しくて」
「あぁ、もういいよ」
少しだけ口調がぶっきらぼうになる、すると銀時が申し訳なさそうに眉を下げてこちらを見てくるので頭を撫でてやると安心したように微笑んだ。
「満足するまで話しとけ、また宇宙に行っちまうんだろ?」
「うん、ありがとうね土方くん…ねぇ土方くん、明日また会える?」
「あ?あぁ、非番だからな」
「じゃあ明日またデートしよ、やり直しデート」
「あぁ、わかった」
本当にごめんね、ありがとうと微笑む銀時にキスをして、屯所への暗い帰り道を歩く。
まだ少しだけモヤモヤする気持ちを真冬の寒い風が冷やして凍らせていく。
どれだけ付き合いが長かろうがもう銀時は自分のものだ、大丈夫だと凍りついた感情を白い息と共に吐き出して空を見上げた。
星が綺麗だ、青白く輝く星が何だか青空の下にいる銀時の髪の色と似て見えた。
ああ、綺麗だ…星もあいつの髪も、なんて考えていたら突然懐で携帯が鳴る、液晶に表示されたのは非表示という文字でなんだ?と片眉をあげ恐る恐る電話に出ると無言電話だった。
「イタズラか?」
おい、返事しろよと言うが続くのは無音ばかりで苛立って切るからなと告げて乱暴に携帯の画面の受話器マークを叩いて消した。
「警察の携帯にイタ電すんじゃねえっての」
煮えくり返る腸を抑えつつ歩き出した途端膝から崩れ落ちる感覚と共に視界が真っ黒になって意識が遠くなった。
万事屋の台所にチョコレートの甘い香りが充満して、苦いコーヒーが飲みたくなる。
楽しそうにチョコマフィンを作る銀時の手伝いをしながらこれは誰に上げるのか、普通は渡される方なのでは?なんて考えていると銀時は嬉しそうに顔を上げる。
「上手にできた!」
「おん、のぅ銀時、これはおまんが食うがか?」
「え?あぁ、まあ…自分の分も味見用で作ってるけど違ぇよ?」
じゃあやはり誰かにあげるのか?と首を傾げる、思い出すのは昨日居酒屋で銀時と飲んでいたあの男だ。
「俺前に恋人できたって言ったじゃん」
「もしかして、あん男かえ?」
まさかな?と思い聞いてみれば顔を赤く染めて頷く銀時、しまった、じゃあ自分は昨日とんでもなく邪魔だったのではないか?と頭を抱えた。
「あ…えと…悪ぃ、気持ち悪い、よな…」
「そんなわけないろう?銀時、わしらぁがおまんに恋人できたって聞いた時にどんぱぁ喜んだと思うちゅうがで、高杉もヅラも勿論わしも嬉しかったがで?やっと銀時が恋できたって、春が来たって」
恥ずかしそうに俯く銀時を見て本気なんだな、とやっと幸せになるのだなと嬉しくて銀時を抱きしめた。
「銀時がようやっと幸せになってくれた、皆ぁこじゃんち喜んじゅうき安心しぃや、わしももちろん嬉しいきに、そうや、今度お祝いせないかんねゃ」
「ん、ありがとう辰馬…」
「高杉とヅラも呼ばんといかんねゃ銀時!ああ〜こりゃめでたい!こじゃんちめでたい!」
あはは、と笑うと銀時は照れくさそうにはにかんで、うるさいよと呟いた。
銀時のことは大切な親友で、戦場では辛い時に肩を支え合ってきた戦友でもある。
ただの親友よりももっと深い関係性なのだ、そんな男が漸く幸せになろうと1歩を踏み出したとあれば朗報だ、愛おしい親友のために何か盛大にお祝いパーティをと色々考えていた。
ふんふんと鼻歌を歌いながらマフィンに飾り付けをする銀時を眺める、すっかり彼女だななんて思いながら見ていると突然部屋に響き渡る黒電話の呼出音に銀時は驚いて手を止めた。
なんだよ、と気だるげに電話を取って「はい万事屋です」とだるそうな様子で応対をするがそこから続かない、眉を潜めてもう一度「はい万事屋ですけど〜」と言う銀時。
無言電話か?と近づいて耳を潜めるが受話器からは何も音が鳴らない。
だんだんと眉間に皺が寄る銀時はがちゃんっと電話を切った。
「まあまあ」
「んだよ本当にイタ電とか今どき流行んないぞ!?」
あはは、と笑いながら銀時の背中を撫でてやるとぷりぷり怒りながら台所に戻ろうとした、そこから突然強い目眩のようなものを感じ、膝から崩れ落ちて意識はブラックアウトした。
浮上する意識とともに感じたのはふわふわとしたものに包まれる感覚と温もり、もう少し、もう少し寝ていたいなんて考えつつもこれ以上はマズい、陸奥のやつに蹴り飛ばされると理性が働き目を開くと真っ白な天井が見えた。
どこだ、ここは?と気だるく重たい体を起こすと隣でもぞもぞと動く気配がありちらりと見やると白銀の髪が見えた。
「銀時…」
ふわりと頭を撫でてやるとうーんと1度唸り声をあげふにゃりと笑う、一瞬緩みかけた警戒を再びいけないいけないと戻す。
「どこじゃあここ…」
キョロキョロと見回した部屋は1面病室かと思うほど無機質な白、ベッドから降りるとギジリと音が鳴りスプリングで微かに揺れる銀時はもぞりと動く。
起こしてしまったかと心配したがむにゃりと口を動かしただけでまだ夢の中のようだ、安心して部屋を捜索しはじめる。
それなりに大きくはあるが簡素なもので部屋の真ん中にベッド、そしてその傍には壁につけられた大きなモニター、ベッドの傍にはサイドテーブルがあり上に乗っているのはテーブルランプだ。
…あちこちから視線を感じる、ねっとりと全身を舐めるような嫌な視線だ、色々と調べて見たが壁に軽い違和感を覚える箇所があるというくらいだ、たぶんこの中に何かがあるが懐を探っても隠し持っていた短刀も拳銃も懐にはない、銀時もどうやら木刀を取り上げられているらしく腰に差していないし見渡した部屋にはどこにもない、違和感のある壁をコンコンと叩いてみれば軽い音がした。
「なんかあるけんど…」
ゴンッと殴ってもビクともしない、なんなんだここはと痛む拳を軽く撫でると背後からむぅと声がして振り返ると銀時がもぞりと動きゆっくり起き上がる。
「…うるせぇ…」
「おはようさん、銀時、すまんのぅ起こしてしもうて」
銀時は気だるげに目を擦り眠たげな赤い瞳をこちらに向けてきた。
「ん…ここ、どこだ?」
「わからん、わしも今目覚ましたばっかりやきにゃあ、今ようやっとこの部屋の探索が終わった所ぜよ」
「俺が寝てる間に…悪ぃな…」
銀時が頭をガリガリと掻き気だるげに立ち上がろうとした所でモニターがプッと音をたてて起動する、すると陽気な音楽とともに子供番組のような絵柄のアニメの少女が映る。
『こんにちは、坂田銀時さん、坂本辰馬さん、体調はいかがですか?』
「は?」
なんだ、なんで名前を知っている。
女の子の無機質な機械音声が耳にねっとりとまとわりつくような感覚。
言いようのない気味の悪さに体が冷えていく。
陽気な音楽は半音下がっているのか不協和音でしかない、しかも音が篭っていてそれが余計に君の悪さを醸し出している。
『元気そうで嬉しいです、私は元気です、ご安心ください』
「聞いてねえし日本語が気持ち悪ぃな」
銀時が隣で不快そうに眉をひそめて苛立つのか項をガリガリと掻く、とりあえず銀時の隣に座りモニターを睨みあげるとにこやかな女の子からまた不快な機械音声が聞こえる。
『彼も元気そうです、とてもとても』
カチリと音がしたと思えばゆっくりと地響きを立てながら壁が動き土方十四郎が現れた、彼の体は椅子に縛り付けられ頭には何かを被せられた状態で俯いている。
「土方!?」
ばっと立ち上がり土方に近づく銀時、だがこの部屋と土方のいる部屋には分厚い強化ガラスが貼られており近づけない。
ぺたりと手をつけて土方、土方と声をかける銀時の傍に行き震える背中を撫でた。
『元気そうで私も嬉しいです、私も元気ですよ』
「うるせえ!てめぇ土方くんに何する気だ!!!」
苛立った銀時は不愉快な機械音を出すスピーカーに向けて怒声をぶつけるとザザッとスピーカーから雑音が聞こえた。
『私は元気ですよ』
「だから聞いてないちや」
苛立つ銀時の頭を撫でて落ち着かせながら呆れてモニターをみると女の子はにこやかな表情を浮かべたまま機械音を響かせる。
『土方十四郎さんの頭にある機械は頭を潰します』
「は…え…?」
『土方十四郎さんには死んでもらいます、ですが、土方十四郎さんを生かすますか?』
「条件はなんじゃあ?」
勿論タダで返してくれるわけがあるまい、そんな美味い話はない、震える銀時を抱きしめ宥めながらそう聞いた。
『助けますか?助けるです。では土方十四郎の目の前でセックスしてください』
「は?」
頭の中が一気に冷えていく、思考は1度停止した。
なんだそれ、聞き間違いか?と黙ったまま瞬きを繰り返しているとスピーカーから不快な機械音が聞こえる。
『坂田銀時さん、坂本辰馬さん、おふたりでセックスをする、でなければ土方十四郎は死ぬ、御遊びです、楽しいね、私は楽しい、あなたも楽しい』
「ちょっと待てぇや、そんな話し合ってたまぁるか!わしらは恋人じゃないき!親友じゃ!そんなことできるわけ」
『できない?できない?死にます、土方十四郎は、可哀想、可哀想、でもセックスしないと決めた』
ガラス越しに機械が作動し鉄の軋む音が聞こえた、銀時は腕の中でハッと動き泣きそうな顔で口を開く。
「ぁ…やる!やるから!待てよ!」
『やるですか?わかった、では止めます、安心するください、土方十四郎からは見えない、では、始めてください』
機械の音が止まりほっとしたのか銀時の体から力が抜けて縋り付く様に抱きついてきた。
大丈夫か?と背中を撫でると銀時は震えながら上目使いにこちらを見つめてくる。
「たつま…」
ー正直に言えば、坂田銀時という男はとても綺麗な男だった。
決して惚れているわけではない、芸術品に対する感想のようなものだ、そもそも自分は自他ともに認める女好きである。
けれど時々この男にはどきりとさせられる瞬間が何度もある、戦場を敵の血を花びらのように散らしながら舞い踊る姿だったり、視線が合った時にふっと小さく微笑む顔だったり。
満月の夜に、満開の夜桜の下で人ならざるものの気配をさせながら寂しそうに笑う姿だったり。
この男は時折人を狂わせることがある、実際隊を持たないはずのこの男の元には自ら白夜叉の隊だと名乗り勝手に結束していたもの達がいた、みんな気が触れたかのように白夜叉を信仰し崇拝していた。
それを酷く気味悪がり悲しそうにしていた。
銀時が懐いた日からずっと親友なのだ、高杉も桂も認めてくれた銀時の親友。
大切な、それなのにどうして。
「辰馬…お願い…抱いて…」
そうじゃないと、土方くん死んじゃう…。
髪と同じ色の長いまつ毛に縁取られた宝石のような赤い瞳からぼろぼろと溢れる涙が紅潮した頬を伝っていく。
「ぎん…」
「ごめん、ごめん…こんなこと…頼んで…でも、土方くんを守りたいんだ…もう、好きな人が死ぬのは嫌だ…!」
「…わかった、できるだけ痛うないように抱くき…」
「うん…」
土方からはこちらは見えないという言葉を信じていいのであれば少しは安心できた、銀時を抱きしめてそっとベッドに押し倒して、まだ溢れ出る涙を親指で掬い拭って目尻にキスを落とす。
1枚1枚着ている服を脱がせて見えるのは雪のように白い肌で、陶器のようにきめ細やかなそれに触れるとひくりと反応した。
「擽ったい」
「すまん銀時…」
くすりと笑う銀時の顔は緊張で少し強ばっていた、嫌だろうそりゃあ、惚れた男がいると言うのにこんなこと。
薄く脂肪ののった肌は柔らかい、抱き心地の良さそうな体だ。
胸筋で膨らんだ胸の先にある桃色の突起に触れるとぴくりと反応を示す、男のそれよりも幾分か大きいそれは土方に開発されたのか。
随分と反応がいい、土方に少しだけ嫉妬心のようなものが湧いてくる。
この感情はなんなのか、なぜ嫉妬など。
「ん…辰馬…」
クリクリと指の腹で弄って、弾いて、口に含んで吸って、噛んでと遊ぶと銀時は興奮してきたのか少し息を荒らげて固く熱を持ち始めた下半身を押し付けてきた。
「銀時、触るで」
「うん…辰馬のも…」
「わしのはかまん、マグロでかまんき大人しゅうしより」
起き上がり始めたそれはとろとろと先走りを垂らしていて、触れればくちゅくちゅと音をたてる、乳首を舌で転がしながら軽く擦ると銀時は耐えられないのか小さく声を出し始めた。
「ぁっ…んっ…んっ…ふぁ…」
女性のような声を出す銀時目をきゅっと閉じて切なげな顔をする。
時折小さくひじかたと呼ぶのだ、彼にしてもらっているのを目を閉じて想像しているのだろう、言いようのない感情に襲われそうになる。
この感覚は何なのだろうか。
「銀時、ここ…入れるで」
「んぅ…んっ…ぁっ…」
とろとろと溢れた腸液と尻まで垂れた先走りのお陰で潤滑剤も必要なさそうなそこに指をくぷりと入れると暖かく、柔らかくて蕩けそうな感触だった、動かせばくちゅりといやらしい音をたてるそこは女のそれよりも具合がいいのがよくわかるほどにきゅんきゅんと締め付けてくる。
「もう3本も入った…」
「ぁっ!言わないで…」
恥ずかしそうに顔を手で覆う銀時、可愛いくて仕方ない。
…親友に抱く感情じゃないじゃないか。
「っ…」
痛いくらいに勃起した下腹部はテントになっている、早く、早く入れと言わんばかりに先端を濡らす。
軽衫を脱ぎ捨てて指を抜いたそこに当てるとびくりと銀時の体が震えた。
「ぁ…ゃ…」
「銀時…すまん…銀時…耐えてくれ…」
「ぅぅ…ひじ、かたぁ…」
「助けちゃらんと…いかん…すまん、すまん銀時…情けない…おまんを泣かせとうなかったのに…」
ぐぷりと入れるとすんなり受け入れたそこはやはり具合がよく己の逸物を受け入れてうねり締め付ける。
「ぁっ…!ぁぁぁ!…いやぁっ…んんんっ」
ボロボロと涙を零す銀時の頬を撫でて額をこつんと合わせる。
「銀時、すまん、すまん…」
「ひっく…うぅ…たつまぁ…ごめん、ごめん…泣いてごめん…」
「おまんは…なんちゃあ悪うない…」
そっと頭を抱えて抱き寄せる、今顔を見られたくない。
心臓が押しつぶされそうな感覚に陥る。
大切な親友になんてことをしているのか。
恋人の土方を想って泣く銀時があまりにも可哀想で、やっと人を愛することができたのに、何故彼ばかりがこんな目に遭わなければならないのかと。
何故、守れないのかと情けなくて悔しくてボロボロと涙が零れる。
それなのに一度も中で萎えることのない己の陰茎に嫌気がさす、男の性というのが今となっては気持ち悪くて、仕方ない。
「銀時、動くきねゃ」
「辰馬…?」
泣いてたの?と濡れた頬を撫でられた、もう何も考えたくない、頬を撫でる手に己の手を重ねて白い手にキスをした。
「おまんは、ほんまに優しい男じゃ…」
なんて可愛いくて優しい。
ぽたりと銀時の頬に涙が落ちた、こちらの顔を見て銀時は目を見開いて泣かないでと囁いた。
涙で濡れた頬が、汗ばんだ艶やかな髪が、潤む赤い瞳が。
全部、全部綺麗だ。
「ん…ぅ…」
銀時の声が聞こえた気がしてゆっくりと目を開ける、頭を上げるとがちゃがちゃと鉄の擦れぶつかり合う不愉快な音がして軽い頭痛がした。
頭を抑えようと手を動かそうとしたが両腕は椅子の肘掛に固定されていた。
頑丈そうな鉄の枷に腕は封じられていて動かせそうにない。
「なんだこれ…なんなんだ…?」
「ぁ”っぁぁん”っ!あ”っ!」
「銀時…!?」
辺りを見回そうと首を肩むけた時、銀時の声がして前を見ると銀時がいた。
ベッドの上で裸になって俺しか知らないはずの顔で乱れて気持ちよさそうにその白く艶やかな体をわずかに赤く熱らせ、うねらせ跳ねさせて汗ばんだ体を
乱れたシーツに押し付けて、淫靡な声をあげている。
「なん…は…?」
ぷつんと音がして壁につけられたスピーカーから向こうの部屋の音が流れる、嫌というほど鮮明に聞こえる。耳を塞ぎたくても塞げない、聞きたくもない銀時の他人との性行為の粘着質な水音と肌をぶつけ合う音、銀時の喘ぎ声も全部全部。
「嫌だ、やめてくれ、やめてくれよ…」
あれは誰だ、銀時を抱いている男、あれは…
確か、坂本とかいう男じゃないか?
なんで、お前あいつに抱かれているんだよ、なんで、レイプされているのか?でもならなんでそんな顔してるんだよ、声だってそんな、そんな…。
銀時の真っ白で淫靡な肢体と表情が自分じゃない誰かに汚されて行くのが苦しくて気持ち悪くて仕方ないはずなのに何故かこのだらしのない愚息は熱をもち固くなっていく、そんなにそいつのはいいのか、銀時。
なあ、お前俺以外は嫌だって、気持ち悪いって俺以外にこんなにならないって言ったじゃないか。
「ん”ぉ”っ!っひぎぃ!あ”っぁ”ぁ”〜〜っ!!」
びくんびくんと跳ねる体、銀時の色素の薄い薄い桃色の亀頭から吐き出される白濁、ビクビクと余韻に震える体を抱きしめて男はさらに奥を突き銀時は快感に悲鳴をあげて涙を溢しながら艶やかな声をあげて体を大きくくねらせて激しくなる突き上げに声を漏らし続ける。
握り締めたシーツはすっかりシワになってわずかに湿りげを帯びていた、もうずっと行為を続けているのだろう、銀時の表情は心なしか疲れているようにもみえた。
「お”ぐっだめ”っお”っ!お”っ!い”ぁ”っや”ぁぁ!!」
「っ…ぐっ、うぅ……う”ぇぇぇぇぇぇ」
ばちゅんばちゅんと腰を叩きつける音が耳にねっとりと耳にまとわりついてくるような感覚に吐き気に襲われて胃の内容物を全て吐き出した。
とは言え空っぽの胃袋からは胃液しか出てこず喉が焼かれる感覚に咳が出る。
「銀…時…」
目の前の地獄のような光景から目が離せずじっと睨みつけるように見つめた、お互い快感を貪り合うように夢中になって行為を続ける二人はもう自分の目には獣にしか見えなかった。
銀時の甘い体臭と部屋に満ちた性の匂いが混ざった匂いで頭がくらくらする、一度目の行為で鍵の開いた音がした気がしたけれど目の前で行為の余韻に浸る銀時の表情を見て耐えられなかった、むくむくと銀時の中で膨らむ欲望と耐え難い衝動に理性は吹き飛んでしまった。
「あ"ッ!やっ!はげしっ!」
ばちゅんばちゅんと腰を打ち付けると与えられた衝撃で銀時はびゅるりと精を吐き出す。
構わずにどちゅんどちゅんと打ち付けると銀時はいやいやと首を振りしがみついて来た。
「お"ッ!ん "ぁ"!…っあ"ぁ"ぁ"あ"ッ!!!」
きゅんきゅんと締め付けてくる襞に夢中で腰をふり擦り続ける。
「や"ッ!あ"ぁ"ぁ"…!しょこら、め"ぇぇ!!」
しこりのようなものを掠めてびくりと大きく跳ねる銀時の体、ここがいいのかと思い切り突き上げると銀時はしがみついて背中に爪を立ててガリガリと引っかかれる。
痛みが感じられずに血が流れて銀時の白い肌にぽたりぽたりと落ちていく。
ごんときの白い肌に小さく広がる血液が雪の中に咲いた花みたいだ、あまりにも綺麗で銀時の唇に噛み付くと銀時は顔を逸らしてダメと小さく泣きながら呟いた。
「っすまん」
「ォっん"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"!」
ばちゅんばちゅんと勢いよくピストンを繰り返してしこりを擦り上げながら最奥を突く、びくんびくんと跳ねる体を抱きしめて首筋に吸い付くと銀時はボロボロ涙を流しながら首元に抱きつき声をあげる。
「あ"っぁ"ぁ"ぁ"う"ゃ"ッんっ」
「銀時…銀時…」
ぎゅっと強く抱きしめて、ばちゅばちゅと腰を叩きつけて首筋にキスを繰り返す。
耳をべろりと舐めて耳の穴に舌を差し込んでじゅるじゅると舐めるときゅんきゅんと締め付けてくる。
「ぅっ出る」
「ん"ぁ"ん"っナカっだめぇぇ〜」
びゅるるるる〜♡とナカに出すと銀時はびくびくと震えて気持ちよさそうな顔で情けなく舌を出す。
「〜〜〜っ」
だらりと垂れた舌を吸い唇に貪りつくと銀時は力の入らない腕で胸を押して涙を流す。
ちゅくと音をたてて唇を離せば銀時はキスはしねぇでと涙を流しながら顔を逸らして手で自らの口を塞いだ。
「銀時…はぁ…ん…すまん…銀時、止まれそうにない…」
銀時、銀時と壊れたラジカセのように呟きながら首筋にキスをしてゆるゆると動くと銀時は苦しげに声を上げる。
ばちゅんばちゅんと激しく奥を突かれて、大きすぎる快感に体を跳ねさせて快感を逃そうと首をふる、襲い来る快感は次から次へと銀時を追い詰めていく。
理性を無くしそうな行為に初めての感覚を覚えて銀時は恐ろしくなって逃げ出そうとシーツを掴んで動こうとするが辰馬に腰を捕まれ引き戻されて強く抱きしめられる。
「あ"っ!い"ぎっん"ぉっも"っやらぁ」
「すまん…止まらん…」
ふーふーと獣の呻きのような荒い息を吐いて腰を振る、銀時はもう何度も潮をふかされて
構わずズンズンと最奥を突き、肉壁に先端を叩きつければ少しずつ開くような感触を覚える。
「あ"っ!ぁ"あ"!ん"ぉ"っ!やべでぇ!」
「はあ、はあ、ふーふー、ぎん、銀時…」
ぐんっと奥を突くともっと奥に入りそうな感覚に奥に奥に入れようと腰を打ちつけると銀時は何かに気付いたのか怯えた顔をした。
「い、いや!たつ、まぁ”っ!い”っだ、め”ぇ”ぇえ!!!!」
ぐぽっと音がして入り込んだ場所、きゅうきゅうと締め付けてくるその場所、おそらく結腸というものか、先ほどよりも激しく乱れる銀時に腰が止まらない。
「お”っ!お”っ!い”ぎぃ!!〜〜〜っ!あ”っ!あ”ぁ!!や”っああ!」
「ここ、えいか?ああ、すごい…」
ぐぽぐぽと抜き差しをくり返せば銀時は体を跳ねさせて舌を突き出して喘ぎ声を絶え間なく出し続ける。
「銀時…綺麗じゃ…」
己の下で組み敷いた美しい男の顔を見つめる、チラリとこちらを見た銀時の赤と目が合うたびにずぶりずぶりと沼に沈んで行く感覚に陥る。
どちゅんどちゅんと腰を叩きつけて、銀時の弱い部分を突きあげれば銀時は応えるように腰を動かして搾り取るようにキュンキュンと締め付けた。
「あ”ぁ”っ!ん”ぅ…ふあっ!あ”ぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」
つんと立っている乳首に吸い付いて、片手でもう片方を指でいじる。
「ん”お”っ!お”ぉ〜〜っ!!っっ!!」
びくんびくんと体を跳ねさせて、桃色の亀頭からぷしゅぷしゅと潮を吹いて、のけぞる銀時の体を片手で支えながら乳首と結腸を責め続けると銀時は狂ったように悲鳴のような喘ぎ声を漏らす。
「い”あ”あ”あ”あ”!!!!!らめらめえええええええ!!!!やらあああ!!!!」
ぢゅっと乳首に強く吸い付き奥を抉るように強く叩きつけると銀時は小さく「あ、や…」と声を出してしょろろ〜小便を漏らした。
生暖かい感覚に一気に現実に引き戻される。
「ぁ…ううう…」
ひぐひぐと泣き出した銀時に冷水を頭にかけられたような感覚に一気に冷静になった。
ずるりと入萎えた逸物を引き出して、開きっぱなしになってしまった穴からは何度も何度も吐き出した欲がごぽりと溢れてシーツを汚した。
「銀時、すまんかった、やりすぎた…」
「一回めで開いてたんじゃねえの…」
「そう…やな…」
「…んな顔しねぇでよ、もういいから…でも、ここでのことはもう忘れて…」
「あ、おん、もちろん…そんつもりじゃ」
悲しそうな顔でそう言う銀時に、そう応えるしかなかった、ごめんな、と小さく溢した言葉は無機質な部屋に誰にも届くことなく転がった。
『お疲れ様です、皆さんに、お疲れ様です。』
突然静かな部屋に響いた声にびくりと体が跳ねた、隣でぐったりと寝転んでいた銀時は体を勢いよく起こしてもにたーを睨みつける。
『お二人がセックスをしてくれたおかげです、私元気、みんなも元気』
「何言ってんだよ…そんなことより土方くんは!?」
ばっとベッドから降りた銀時はガクンと膝から地面に崩れ落ちた、慌ててベッドから降りて大丈夫か?と触れようとするが銀時は大丈夫だからと手を振り払って震える足で立ち上がり土方のいる方にふらふらと歩いて行った。
『鍵は空いていますので帰って大丈夫、副長さんも解放ずみですます、私またきたよ、またくる、さようなら』
「おい待てぇや、おまんこんなことしてタダで帰れるち思うちゅうがか!?どこにおるがで!出てこい!」
立ち上がってモニターを睨みつけるがモニターはプツンと音を立てて消えてしまう、扉に近づいて開こうとした時にガチャリと開かれ何かに弾き飛ばされる。
「ぐっ!!何じゃあ…」
目の端を黒い影が通りすぎていくのが見えた、なんだ?と黒の行方を追って振り返ると土方が銀時の目の前に立っていた。
解放されたのか、見た感じ怪我もなさそうでよかったと安心しつつ少しきまづく声をかけようか悩んでいたら銀時が嬉しそうに土方に抱きつこうとふらりと立ち上がり腕を伸ばしたところでパシンッと乾いた音がして銀時が倒れるのが見えた。
「は?」
なんだ、何が起こっている、頭が混乱している。
「他人に抱かれ体で俺に触るな」
「ひじ…かた…?」
「銀時、そいつのちんこはそんなに気持ちよかったか?あんなにはしたなく乱れて…ほんとに淫乱なんだな、正直呆れて物も言えない…」
汚いものを見るような目で土方は銀時を見下ろして絶望した顔で見上げる彼の顎を足の爪先で持ち上げると舌を打ち睨みつけた。
おかしい、土方からは見えないという話だったじゃないかと頭が混乱した、銀時は見られた、見られたとポロポロと涙をこぼし震える声で違う、違うと繰り返し呟く。
「何が違うんだよ、言ってみろ、あいつのちんこでヨがってたのは俺の見間違いだっていうのかよ」
「ちが…これは、土方くん、お願い、話を」
「くだらない言い訳に、耳を貸せと?」
「土方、待って、やだ、行かないでぇ…」
心底不快そうに銀時を捨て置いて去ろうとする土方に頭がカッとなって通りすがる土方の胸ぐらを掴むと土方は酷く冷たく鋭い瞳でこちらを睨みつけた。
「なんだ」
「銀時は、おまんのために…!」
「…今は、何も聞きたくねえ」
胸ぐらを掴む手をがしりと掴み骨が軋むほど強く握りしめられ掴んでいた手が剥がされる、灰青の瞳は暗く濁って以前の真っ直ぐな色は見受けられない。
扉から去っていく瞬間一度だけ銀時の方を見た、その目は一瞬、ひどく悲しげで今にも泣き出しそうな子供のような瞳に見えた。
「銀時、大丈夫やき、話し合えば土方くんもわかってくれるろう」
「たつま…土方くん…俺、俺…嫌われた…!」
蹲ったまま動かない銀時の背を撫でる、声を抑えて泣いている銀時はゆっくり顔をあげてぼろぼろと大粒の涙を流して抱きついて肩に顔を埋めて声をあげて泣いた、もう終わったと、もうダメだと、恋人に、恋人以外の男に抱かれているところを見られた恥ずかしさも、絶望も、想像し難くけれど銀時の胸の痛みは重ねられた胸の鼓動から伝わってくるような気がした。
気を失った銀時を背負い帰った万事屋で1週間ほど熱を出した銀時の様子を見続けた。
熱は下がったがまだ眠り続ける銀時を置いて家を出ることにした、そろそろこの問題に方をつけなければならない。
向かう場所は真選組の屯所だ、爽やかな春の朝は雲ひとつない晴天だが心の方はどんよりと鉛色の重たい雲がかかっっている。
あの男はどうやら真選組の副長とそれなりの地位のある男、会ってもらえるかもわからないがこんな状態で宇宙へは行けない、銀時の幸せを取り戻さなければ。
広い江戸の街を真選組の屯所を目指して歩く、だがおかしい、なんだこの街は。
「迷うてしもうた」
生来どがつくほどの方向音痴にはこの広い街はどうやら相性が悪いようでどんどんおかしな方向に進んで行ってしまう、怪しげな雰囲気の廃墟の立ち並ぶ寂れた地域に入り込んだようで参ったなと頭を掻く。
「うーん、戻るにしてもどこから来たがか思い出せんぜよ」
「おにいさーん、こんにちは、何やってんの?」
「お?」
困って彷徨っていればニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた男たちがゾロゾロと近寄ってきた、ああ、まあこういう場所にはありがちだよなあと考えながら冗談めかして笑う。
「道に迷うてしもうて、まっこと江戸は広うてかなわんぜよ、ちっくと散歩に出かけてみただけでこれやきに、どういてこんなことになるがで」
「あんたかっぺか?訛りがきついな、まあいいや、金だしな、そしたら案内してやるよ」
「んー、それはありがたいけんど、どうせなら綺麗なお姉ちゃんのがえいにゃあ、遠慮します〜」
「んなつれねえこと言うなよ、ほら、金、通行料も込みな」
ああ、やっぱりこうなるかと肩に腕を回され組まれると体重をかけて耳元で喋ってくる、たばこと酒臭いその不快な口臭に眉を顰めそうになるがあははと笑顔でやめえやと回された腕を解こうとするが男たちはニヤニヤと取り囲み逃さないようにして刀を抜いてむけてくる。
「あー、たかが金のためにここまでするかえ」
参ったにゃあと頭を掻くと男たちは怒声をあげてかかってきた、ああ、面倒くさいと銃を抜こうと懐に手を入れると特徴的なハスキーボイスが聞こえた。
「何やっている、お前ら」
ぴたりと男たちの動きが止まりだるそうに声のした方を見ると男たちはそのまま固まった。
ふわりと香るタバコの匂い、全身真っ黒な隊服、視線だけで人を殺せそうなほどの鋭い眼光、そんな男の姿を見てやっと会えたかと小さくため息をついた。
呆れるほどにあっけなく男たちを薙ぎ倒して携帯電話を取り出し屯所に電話をかける男を見ているとまあ見れば見るほど端正な顔をした色男だと思う、この顔なら女に困ることはないだろうにおそらくは銀時のあの色気にやられたのか、あれは人を簡単に沼に引き摺り込むのだから厄介だ。
「なんだ、人の顔をじろじろと見るんじゃねえよ」
「おまん、綺麗な顔しちゅうと思うて」
「気持ち悪ぃこと言うんじゃねぇよ」
「けんど、銀時に言われたら嬉しいがじゃろ?」「…あいつは関係ねぇよ」
「関係無いわけないろう、おまんまだ銀時のこと好きながやろう?やったらちゃんと話しあわんかぇ、おまんまだ事情も知らんろう」
「…どんな理由があれ、あいつは俺以外の男に抱かれたんだよ、許せるわけねぇ」
おやおや、と土方の端正な顔を見る。
随分と嫉妬深い男なのだな、と、以外な気がしたのだ。
同性同士の恋愛など性欲を満たし合うだけの関係性が多いのに、こいつはちゃんと銀時のことを心の底から愛しているからこそ嫉妬深く裏切りを1ミリも許せないのだ。
まだ、愛しているからこそ、酷いことを言ってしまった自分に後悔しているのだ、けれど許せない気持ちもある。
どうやら、まだ大丈夫らしい。
「…わしと銀時がセックスをせんかったらおまんは死んじょった、頭に機械つけられちょったろう、あれは頭を潰す機械ぜよ。」
「…」
「ほんまやったら1回で終わるつもりやった、けんど…止まれんかったがはわしじゃ、無理矢理何回も致した、すまんかった…わしをなんぼでも気ぃがすむまで殴ってくれてもかまわん、やき銀時のことを許しちゃってくれや」
「…」
「なあ土方くん、銀時はおまんの思うような男じゃないぜよ、銀時はな…おまんが初めてやったがよ、惚れた男は…女ですら惚れることが無かったに、心底おまんに惚れちゅう、案外うぶなやつぜよ、銀時っちゅー男は、やき浮気らあて絶対せん、するわけがないがよ」
「…わかってる、それくらい」
「…ほいたらどういて」
土方は何も言わずに去っていった、後から駆けつけたパトカーは「あれ?副長は?」とブツブツ言いながら気絶した男たちをパトカーに押し入れてさっさと帰って言ってしまった。
「まいったにゃあ、わしもう帰れんぜよ」
はあーあ、とため息をつきながら懐から携帯を取り出して陸奥に電話を入れた。
わかっていた、頭の中ではきちんと理由があるのだと、わかっていたはずなのに許せなくて、自分の心の狭さに嫌気がさして、あれは本当にただの八つ当たりなんだ。
子供のように、感情任せに銀時を傷つけた、未だに銀時の悲しそうに歪む顔が目に焼き付いて離れない、胸がずっと苦しくて仕方ない。
心底惚れているのは己の方なのだ、己ばかりが惚れているような気がして銀時の手を掴み続けることに必死になっていたような気がする。
だからこそ、少しの加虐心のようなものか、銀時が青ざめた顔でこちらを見て縋る姿に少しだけ嬉しく思ってしまった自分がいて、自分が一気に情けなくなり怒りなど一気に吹き飛んでしまった。
もう1週間も会えていないという事実に寂しさが勝ってしまった。
あの男は恐らく銀時に惚れている、惚れているが銀時の幸せを願ったのか、わざわざ中を取り持つような真似をして、まるで昔の自分を見ているようで心が抉られるような感覚を覚える。
それでいいのか、と思うが銀時を渡してやるつもりなど毛頭ない。
ぎしりと音をたてて階段を上がると見慣れた玄関が見えて1度深呼吸して心を落ち着けてからインターホンを押し込むとピンポーンと軽快に音が鳴る。
「謝らねぇとな、あんな酷いことを言った」
俯きかけた顔を上げて扉を見つめているとはーいと気だるげな声と共に銀時が出てくる。
少しやつれたか?やはり相当傷つけてしまったんだろう、白い肌も更に白くなって青白いと言ってもいいような肌色だ。
「ひじ…かた…」
気だるげな目が大きく見開かれて、揺れる赤い瞳、相変わらず綺麗な男だと思わずその思った以上に柔らかな頬を撫でたくなったがぐっと我慢してよぅと短く挨拶をした。
「…久しぶり、だな…えっと……入る…?」
そわそわと落ち着きのない態度で銀時は部屋に招き入れてくれた、ソファーに座ると銀時はお茶を出して落ち着かない様子で俯いたまま机を挟んで向いのソファーに座った。
「…で、なあに?」
「ん、ああ、えっと…その…」
「うん…」
気まずい空気が流れる、銀時は落ち着かないのか膝の上にある手をもぞもぞと動かしていた。
「すまなかった、銀時」
「へ?」
ゆっくり上がる顔、気だるげな目には涙の膜ができていて不覚にも綺麗だなんて思ってしまった。
「この間、俺は話も聞かずに一方的に怒ってお前を傷つけた、本当に申し訳ない」
「あ、え、いや…えと…」
頭を下げると銀時は戸惑った様子で慌ててこちらにきて頭を上げて、と困ったように言う。
頭を上げて銀時を見つめると銀時はへにゃりと安心したように笑った。
「土方くんが謝る必要ねぇよ…どんな事情かあれ土方くん以外に抱かれたことに変わりないし」
「…俺のために頑張ったんだろ、それを…おれは蔑ろにした、だがもう、俺のためにそんなことしねぇでくれ…」
「やだよ、俺土方くんにはずっと生きててほしい」
「…銀時…」
足元に座り込んだ銀時を抱き上げてギュッと抱きしめると銀時は大きなため息を吐いた。
「銀時…?」
「よかった、俺…今日、来たの…別れ話しにきたのかって…怖かった…」
「…はあ?俺がお前をフるとか…ねぇよんなこと…」
「怖かったんだよ、ずっと…土方くんに嫌われたって…」
「嫌いにならねぇよ」
「うん…うん…嬉しい…」
ギュッと抱きしめた手を離して銀時の頬に触れると銀時は猫のように目を細めて嬉しそうにわらう。
「銀時…」
「ん…」
ゆっくりと啄むようなキスを何度か繰り返して舌を絡ませる。
銀時は気持ちよさそうにはふはふと息をしながら閉じていた目を開いてこちらを見てきた。
「ん…どうした?」
「んーん、土方くんとキスしてるんだなあって思っただけ」
「んだそれ…可愛いやつだな…」
そっとソファーに押し倒して、白い肌に触れる、銀時は嬉しそうに笑って耳元で囁いた。
「1週間ぶんたくさん愛してよ、土方くん」
ごうんごうんと大きな音をたてて船が降りてくる、青い空にはやはり船だなと満足してうんうんと1人頷いていると気丈な女性の鋭い声が降ってきた。
「おまん今まで何しよったがで!」
「おー陸奥〜!すまんにゃあ、面倒かけた!」
陸奥は船から飛び降りて蹴りを食らわせてくる、痛い痛いと言うと心底呆れた表情で見下ろしてくる。
「ほんま、社長がそんなにフラフラしよったら会社は堕ちるだけやき、しゃんとしてくれ」
「すまんちや、もう戻るき勘弁して」
「ほいたら…あぁ、ちょっと用事思い出した…辰馬、おまんも終わらせないかん用があるろう、早う行ってきいや」
用事?そんなものもう終わらせてきたが、と陸奥がちらりと見た方向を見ると美しい銀髪が見えて目を見開く。
「銀時…?」
「早う行け」
どかっと尻を蹴り飛ばされてよたよたと銀時に近づくと銀時はこちらに気づいて笑顔で駆け寄ってきた。
「何も言わずに行くなよ辰馬」
「ああ、すまんすまん…おまんこっちに来てかまんがかえ?」
「んー、まあね、ちょっとしんどいけどへーき」
よく見れば首筋には愛し合った印が残って気だるげな彼の顔は数倍気だるさを増している。
無理をしてこちらに来たのか、ちゃんと中を取りもつことに成功したことを確認できたのは良かったが…と彼の体が心配になる。
「銀時、おまん…」
「ありがとうね辰馬」
「へ?」
ぐいっと胸ぐらを掴まれて引き寄せられる。
ぎゅうと抱きついてきた銀時を抱きしめ返すか迷って手が彷徨うがきゅっと控えめに抱き締めれば銀時は嬉しほうにへへっと笑った。
「本当にありがとう、土方くんのこと…説得してくれたんだろ?あんなことまでさせてしまったのに…感謝してる…」
「おん、かまんかまん、おまんが幸せやったらそれでえいきに」
ぽんっとフワフワの頭を撫でると銀時は髪が乱れる〜!と怒った顔をするが心無しか嬉しそうにしていた。
「…銀時」
「ん?」
後頭部をぐっと掴んで引き寄せて額にキスをする、すると銀時は驚いた顔をしてこちらを見つめてきた。
「今回のお礼はもろうた、なあ銀時、あん男が嫉妬に狂うて酷いことしたらいつでもわしに言えよ、いつでもおまんを宇宙に攫う準備は出来ちゅうきに」
「へ?辰馬?」
「そん時まで、ここは取っちょく」
するりと親指で銀時のぽってりとした柔らかい唇を撫でて、じゃあのと呆然と立ち尽くす銀時に背を向けて船に乗り込んだ。
ごうんごうんと大きな音をたてて船が飛び立つ、下を見下ろすと銀時がこちらを見あげて手を降っていた。
「惚れた方の負けかのう」
「なんじゃ、珍しく弱気かえ」
傍で興味なさげに空を見ていた陸奥が声を掛けてきた、弱気なものかと笑うと陸奥が隣に立ちふふっと笑う。
「商人はにゃあ陸奥、商品の価値が高ければ高いほど勝ち取り甲斐があるがじゃ、いつでも虎視眈々と狙うもんぜよ」
気づいてしまったからには親友の仮面は外さなければならない、次に来た時には黒い彼氏からどう奪ってやろうか、なんて腹黒い算段を立てながら銀時に手を振り返した。