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    竹のしお

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    竹のしお

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    前に書いた作品の加筆修正版。
    4章前に4章後&両片思い期を追加したジャミカリのお話

    #ジャミカリ
    jami-kari
    #twst腐

    渡り廊下にて 飛行術の授業の帰り。微かに汗ばんだ肌に運動着が吸い付く。それを少し煩わしく思いながら校舎へ戻る。背後から、さも親しげなふりをして話しかけてくる同級生には無視を決め込んで、次の授業は何だったかと思いを巡らせていると、聞き飽きたほどに聞き慣れた声が降ってきた。
    「ジャミル~!」
     わざわざ誰何も、方向も探る必要も無く、頭上を向くと、満面の笑みを浮かべた銀髪が手を振っていた。渡り廊下から身を半分乗り出している。
    「カリム」
    「飛行術の授業だったのか?俺はさっきまで魔法史の授業でさぁ!」
     相手は、ジャミルが言ってたところが授業に出てた、など気楽な事を言って、あっけらかんと笑っている。それに深々と溜め息を吐き、半眼を送った。
    「落ちたらどうする。次は錬金術だろう。白衣は持ったのか?」
     自分の授業と共に、この手がかかる幼馴染――カリムの時間割は把握している。カリムは紅い目を一瞬彷徨わせた後、自信たっぷりに声を張った。
    「大丈夫だぜ。昨日ジャミルが用意してくれたもんな!」
     それを聞いてまたもため息が漏れる。わざわざ洗濯をしてアイロンをかけて用意してやったのはこちらだ。自分でもう少しすればいいと思わないでもないし、用意してもらったならもう少し感謝というものを表してもらいたい。
    「いつもありがとな、ジャミル!確かに落っこちたら危ないし、もう行くよ」
     こちらの心を読んだのかと思うようなタイミングで謝意が届く。偶然だ。カリムにこちらを慮るような技量はないのだから。
     銀髪が陽光をきらきらと反射して、そして消えていく。遠くから、同級生の名前を呼ぶ声が聞こえたので、その人物と合流して錬金術の教室へ行くのだろう。
    「相変わらず、仲がよろしいんですね」
     皮肉るように、今まで無視を決め込んでいた同級生から声がかかる。
    「どこが」
     思わず返答をしてしまった。反応を得たことににんまりと満足げに同級生は口角を釣り上げた。
    「おや、ジャミルさんほどの方が説明しないと分からないと仰られる?」
    「……アズール、君は俺を高く評価しすぎているようだ」
     苦笑という皮を被るようにして、咄嗟に誤魔化す。出そうになった本音は飲み込んだ。
     カリムと仲良く、というのは怖気が走るような話だ。あくまで向こうは仕えるべき家の跡取りであって、自分は従者。その前提と幼馴染という腐れ縁が、親しく見せているだけのこと。
     ――本当のことを言えば――……。
     目を瞑り、身を翻す。
    「ジャミルさん?」
    「俺とカリムは家の仕事上、古い付き合いだ。それ以上でも以下でもないんだ」
     半ば強引に同級生から離れ、次の授業の準備へ向かう。
     ――本当のことを言えば、カリムのことは嫌いだ。
     そう自分の心の中だけで呟く。強くも無く、激しさも無く、淡々と。
     ――本当は俺が……。
     言いながらも、ちらりと視線を持ち上げる。無意識だった。
     目線の先には、もう誰もいない渡り廊下がある。自分としては、何となく視線を巡らせただけのつもり。それ以上の意味はない。
     だが、同級生から見れば、いなくなった幼馴染の姿を目で追っているように見えている。そんなことをジャミル本人が気付くことはなかった。





      *





    「カリム、どうした?」
    「あ、シルバー」
     珍しく目が覚めている同級生を振り返ってカリムは苦笑を浮かべた。
    「実は渡り廊下の下にジャミルがいたんだけど…」
     もういない。それでもつい小声になってしまうのは、彼に見つかりたくない、という気持ちの表れだった。
    「声をかけなかったのか」
    「うん……、何て言えばいいのか分からなくて」
     ジャミルの本音を突きつけられて、複雑な状態になったのはごく最近のことだ。自分は今まで通り――では駄目だからより良い関係を築きたいと思っているのだが、ジャミルはそうではない。最低限の義務は果たすものの、それ以上は関わり合いになりたくないと言わんばかりにすぐいなくなってしまう。
     だから、どう声をかけていいものか、カリムには見当もつかなかった。
    「喧嘩をしたのか?」
    「うん……まあ……そうなのかな」
    「どちらかに非があるのか」
    「多分、俺……」
     今までジャミルの気持ちを慮ってこなかったのはカリムだ。カリムがジャミルを好きなように――とまではいかないが、嫌われてはいないと思っていた。せめて幼馴染程度の愛着は持ってくれているのだと。
     それがまさかあそこまで嫌悪されていたとは。
     思わず深いため息が漏れる。
    「……少し、距離を置いてみたらどうだ。相手にも考える時間が必要だと思う」
     カリムの寂しげな溜め息にシルバーも心配そうに眉根を寄せた。
    「そうかな…」
     本当は今すぐにでも解決したいが、それは叶わない。カリムもどうしていいか分からない。だから、渋々ながらでもシルバーの意見を聞き入れるしかなかった。それに彼の提案が理にかなっているような気もした。
     カリムは渡り廊下の手すりから身体を起こすと、先に歩き始めたシルバーを追いかけるようにして、次の授業へと向かうことにした。
     最後にちらりと後ろを振り返る。
    「ジャミル……」
     呼んだ声は小さく弱々しすぎて、誰にも聞こえなかった。





     カリムがシルバーと遠のいていく。ジャミルは遠目にそれを見送った。
     今までは、人を見かけたら鬱陶しいほどに声をかけてきたのに。
     それはここ最近だって、そうだったのに。どうして今日に限って。
    「次の移動教室…一緒に行きませんか?」
    「断る」
     少し前まではまろやかに断っていた同級生の誘いも、今ではにべもなく切り捨てる。そう対応するのをやめたからだ。
     寒さのこたえる季節の飛行術はいかに早く屋内へ戻るかが重要だ。大股に校内へ戻ろうとすると、くすぐるような笑い声が背後から聞こえた。
    「最近は少し、厳しくされているみたいですね」
    「別に」
    「誤魔化し切れていませんよ。でも――厳しくしている割に随分と気にかけているみたいですけど」
     明らかに人を茶化す物言いに神経が逆なでされる。だが、ここで言い返しては負けだと思い、無視を決め込む。
     ――気にかけている?俺がカリムを?
     そんなはずはない。
     ――俺はあいつのことが大嫌いなのに。
     一時期は顔も見たくないほどに嫌っていたのに。それなのに、何故そんな言われ方をされるのか分からない。
     胸中に渦巻く疑問に、ジャミルはひっそりと首を傾げた。





     *





     ――何だか、最近、ジャミルをよく探している気がする。
     カリムは渡り廊下の階下にジャミルを見つけて跳ね上がった。跳ね上がったのは身体だけではなく、心臓もそうだ。
    「ジャミル!」
     手すりから身を乗り出して手を振れば、朝一緒に寮を出たぶりのジャミルが呆れた顔でこちらを見上げた。運動着だから飛行術の帰りだ。
    「カリム。身を乗り出すな、落ちたらどうする」
    「へっへへ、ジャミルが見えたからつい」
     長きにわたる冷戦のような喧嘩は最近、一時中断のような様相になり、そのまま曖昧に時が経った今。こうしてジャミルに話しかけても、言葉が返ってくるようになった。
    「飛行術だったのか?どんな課題が出たんだ?」
    「一定の高さを維持してずっと飛び続ける課題……ってお前、そんなことを話している場合じゃないだろう。次の時間は」
    「うん、分かってる。錬金術の時間だろ。ちゃんとジャミルが用意してくれた実験着も持ってるから」
     いつまでも同じように手のかかる幼馴染ではない。少しは成長しているんだと胸を張る。何でもできるジャミルに並び立てるように頑張っているのだと。
    「……そうか」
     ジャミルは複雑そうな顔で押し黙った。
     何かまずいことでも言っただろうか。カリムは目を瞬かせて、ジャミルの方を見つめる。だが、背後から甘ったるい間延びした声がかかった。
    「ラッコちゃ~ん、次の錬金術、俺のクラスと合同だってぇ~。楽しみだね」
    「あ、フロイド!分かった、すぐ行く。それじゃあ、ジャミル、また後で!」
     昼食の時にもまた会えるだろう。カリムは手すりから身を引くと、わざわざ呼びに来てくれるほどご機嫌なフロイドの方へ走って行った。
     たくさん話せた分、頬が緩んでしまう。
     ――少しでもジャミルが、俺を認めてくれるといいんだけど。
     そうすれば、もっと。
     ――俺のこと、見てくれるかな





    「まったく。フロイドが上機嫌で錬金術の授業へ行くなど、何が起きるか恐ろしいですね。……いえ、機嫌が悪いよりましか」
     真横で友人気取りを続ける同級生が長い指で眼鏡を押し上げる。
    「機嫌がいいならそれに越したことはない。悪いことは起こらないからな」
     おや、と同級生はレンズの奥の目を丸くした。
    「ジャミルさんもご機嫌なようですね」
    「あのな、アズール。飛行術の度に俺にまとわりつくのはやめてくれ。お前には飛び方のコツなら伝授しただろう」
    「その件については今更何も。後、訂正を差し上げるなら、毎回の飛行術ではなく、毎週この曜日の飛行術の後、です」
     アズールの言いたいことが掴めず眉根を寄せる。飛行術の最中なら分かる。残念ながらアズールは飛行術が大の苦手で、逆にジャミルは人並み程度には十分こなせるからだ。
     だが、飛行術が終わった後にまとわりついて何のメリットがあるのやら。
    「僕としては、これからも仲良くしておきたいお二方の動向がはっきりと知れるので」
     との言だ。
     彼がすり寄ってくる相手は分かりやすい。自分にメリットがある相手だ。それで言うとジャミルは何故かずっと狙われている。そして、もう1人と言えば……考えるまでもない。大富豪の息子、カリムのことだ。
     つまり、アズールはジャミルとカリムの動向見たさに毎週この飛行術の後、引っ付いて回っているらしい。
    「何か収穫がありそうでもないが」
     自分たちを見て何が楽しい。と言外に含んで尋ねると、アズールは弾んだ声で答えた。よく分からないが彼なりのメリットがあるようだ。
    「意外にあるんですよ、これがね。ジャミルさんならご存知でしょうけど、毎週この曜日のこのタイミングはちょうどお二人の移動ルートが重なるので分かりやすいんです」
    「そんなタイミング、他にもたくさんあるだろう」
    「この時間帯がちょうどいいんです。お二人の間に物理的に距離があるので、とても距離感を測りやすい」
    「はあ」
     聞けば聞くほど言いたいことが掴めずにため息が漏れる。とにかくアズールに、カリムの仲を勘ぐられるというのは良い気がしないものなので、話は適当なところで切り上げる。
    「聞いた時間が無駄になったな」
     さっさと背中を向けて校舎の中へ向かう。冬が終わったので、急ぐ必要はない。
     行きがけに何とはなしに視線を彷徨わせる。すると、背後から引き続き、からかうような声が聞こえた。
    「ジャミルさん」
     アズールは言った。
    「あなた、ずっと、カリムさんがいた手すりを目で追っているのに、お気付きでしたか?」





     *





     随分と温かくなってきた。カリムは手すりにもたれかかって、いつものように待っている。校内ではチャイムの名残がまだ響いていた。
    「あっ」
     遠目にジャミルの姿が見えてカリムは身体を起こした。
    「ジャミル~!」
     大きな声で名前を呼ぶ。前は顔を顰められたが、今はそんなことはない。“大声で呼ぶんじゃない”と口だけで咎めながらも、軽く手を挙げてくれる。
     それに嬉しくなってカリムはその場で跳ねるように手を振り返した。
    「今日、5分早く終わったんだ!トレイン先生が、急に学園長に呼び出されて。学園長が顔色悪かったから何かあったのかなぁ」
    「だから、ここで待ってたのか?」
     階下のジャミルが呆れたように言う。
    「うん、だってここにいたらジャミルが来るだろ!」
    「そうじゃなくて……。下に下りて来ていればよかっただろう」
     冷静な指摘を受け、カリムはハッとした。5分早く終わったのなら、その分下に行っていればもっと近くでジャミルと話せただろう。それをすっかり忘れていた。
    「確かに……!」
    「お前なぁ……」
     この階上と階下に分かれて話すのがあまりにお決まりの流れになっていたから全く思いつかなかった。それに、この物理的な距離はジャミルにとって必要なもののようにカリムは感じていた。
     隣じゃなくて階上と階下。そのくらいの距離感をずっと取られているような気がしていた。
     ――俺はジャミルともっと仲良くなりたかったけど。
     昔みたいに。あるいは、昔以上に。
     ――ジャミルはそうじゃなかったみたいだから。
     だからずっとこの時間は、この距離感を保っていた。
     けれど、ジャミルから“下りてきていい”なんて言われるなんて。
     ――それってジャミルの傍にいてもいいってことなのかな。
     今回たまたまかも知れない。そんな風に思いながら手すりをぎゅっと握る。ジャミルの真意が分からないから、どう返していいかも迷ってしまう。
    「えっと、そう、だよな………」
     ――次はそうする、でいいのかな。こういうときは。次はないのかもしれないけど…。
     距離が離れているから、カリムが急に押し黙ったように見えたらしい。ジャミルが怪訝そうな顔をして、首を傾げる。
    「どうしたんだ、カリム」
    「えっ、あ、何でも……!」
    「何かあったのなら話せ。今から下りてきてもいい」
     唐突にジャミルのそんな言葉。またも想定外が起こってカリムは紅い目を真ん丸に見開く。
     ――ジャミルが下りてきてもいいって言った。
     それがどんなに感動的なことなのか、ジャミル本人は知らないのだろう。
     きゅう、と胸が熱くなる。
     ――いいのかな。いいんだよな。
    「どうしたんだ、カリム。何かあるなら上に行く……」
    「っ、ジャミル!」
     カリムはぎゅっと手すりをもう一度掴むと階下のジャミルに向かって飛び降りた。





    「――えっ、なッ、待て」
     目の前にカリムが降ってくる。いくら2階からとはいえ、落ちてきていい高さではない。
     ジャミルは咄嗟に駆け寄りながらマジカルペンを抜く。カリムの右手に持ったマジカルペンも光を集める。
    「「【浮遊せよ】!」」
     2人分の声が重なって、ぶわりと風が巻き起こった。一瞬浮いたカリムの身体が地面に着く前にジャミルは抱き留める。
     鼻腔をくすぐる柔らかい香り。人より少し高めの体温。大きな紅い目。どれをとっても、まさしくカリムのものだ。
    「お、前、なぁ……!」
    「な、なはははは…」
    「危ないことはあれほどするなと言ってるだろ!」
     本気の怒声を浴びてカリムは首を竦める。
    「ごめんな、ジャミル。前にフロイドが浮遊魔法使えば下りれるって言ってたから…」
    「人が言えば、何でもしていいわけじゃない!」
    「だからごめんって…!」
     ――あの愉快犯人魚、部活で覚えてろよ。
     ぎりっと歯軋りをしつつ、反省した様子のカリムに向き直る。
    「気を付けるならもういい。それで、何の用だったんだ?」
    「うん、それなんだけど……えっと、下ろしてくれて大丈夫だぞ」
     カリムはジャミルに抱え上げられたままだ。さすがに恥ずかしいのか、顔がどんどん赤らんでいく。
    「いい。このまま聞く」
     ――こうでもしないと懲りないだろう。
     それに、カリムの朱に染まった顔は何故か目を引くものがあった。もう少し見ていたいと思う自分の感情が何なのか、ジャミルにはまだ定義できない。
    「うう……ジャミルはいじわるだ……」
    「そう思うんだったらさっさと用件を済ませるんだな」
     意地悪で結構、と思いながら口角を釣り上げる。幸いにして、ジャミルの説教が始まったあたりで、同級生たちは捌けてしまっている。ここにはジャミルとカリムしかいないのだから、多少性格の悪さを露呈しても構わない。
    「えっとな………その……」
     しどろもどろになりながら、カリムはジャミルの耳に唇を寄せた。
    「あの、な」
     かかる吐息がくすぐったい。思わず緩みそうになる表情を引きしめ、なんてことはないような顔をしてジャミルは話を促した。
    「俺、嬉しくって…その、ジャミルが話を聞いてくれるって言ったのが……」
     いまいち取り留めのないままカリムの話は始まった。それはいつものことだから、まとまりのないまま話が終わるのだろう。ジャミルはこの話が曖昧に終わることを覚悟した。
     ――なら適当に話を聞いて頷いてやれば……。
    「だから、その………やっぱり俺、ジャミルのこと、大好きだ」
     想定外の言葉が飛び出た。
     ジャミルは目を見開いてカリムを見上げる。いつものまとまりのない喋り方なら、眉を八の字にして必死に言い募っているだろうに、何故か今は妙に綺麗に微笑んでいる。こんな微笑み方ができたのかと思うほどに。
    「……は?」
     処理しきれずに間の抜けた声が漏れる。
     ――カリムが俺を好きと言った?どうして?
     友達になろう、とは言われた。何度もしつこく。そのたびに跳ねのけてきた相手にどうしてそんなことが言えるのか。
     ――この“好き”はどういう意味なんだ?
     カリムのことだ。友情以外のそれではないはず。なのに、どうしてそんなに綺麗に微笑むのだろう。
     混乱するジャミルに反して、言い切ったカリムはスッキリした様子で彼の肩を叩いた。
    「それをどうしても伝えたくってさ。言えたらすっきりしたし、下ろしてもらえるか」
    「待て、カリム、それは」
     ――どういう意味なんだ。
     ジャミルが脳処理にかかって腕の力が緩んだ隙に、カリムはとっとと下りて校舎へ向かって駆け出す。
    「また昼ごはんの時に会おうぜ、ジャミル!」
     嬉しげに手を振って走って行く姿は、いつものカリムと変わらない。だからこそ、さっきのカリムの真意が掴めなかった。
    「…くそ」
     ジャミルは額に手を当て、呻いた。言った直後に確認し損ねたのが非常に痛い。確認するにしても自分から話題にはしづらい。
     ――口にしたら、俺が気にしていると思われかねないし、どうすれば…。
     そもそもこうして悩むこと自体、気にしていることに他ならないのだが、ジャミルはまだ気付いていない。
     こうしてカリムの発言に振り回されるジャミルの日々が始まったのであった。

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