私のお気に入り「かまぼこは嫌いですが、薬味のネギは好きです」
「なんだいきなり」
馴染みの茶屋でうどんを食べながらそう言うと、山田先生は目を丸くした。私の分のかまぼこはいつも通り、山田先生の器に旅行中だ。きっと帰ることはないだろう。
「いえ、いつも山田先生には教えてもらってばかりなので、私も何か山田先生に教えてみたいなと思いまして」
「なるほど?」
わかったようなわからないような相槌が返る。山田先生がずばずばとうどんを啜るのを見ながら、続きを口にする。
「この間、火薬について話してみたのですが、あまりご興味がなさそうだったので、違う話を」
「ああ、あれ、そういう話だったのか。いきなり始まったから、なにやらストレスでも溜まっているのかと思っていた」
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