江澄は蓮花塢に戻るなり、ぽいぽいと衣を脱ぎ捨て、蓮花湖に入った。
「宗主⁉︎」
驚く師弟たちには、「雲深不知処で肩が凝った」と言えば何故だか納得してもらえた。
秋の深まりつつある蓮花湖の水はそれなりに冷たい。
江澄はあてもなく湖中を泳ぐ。蓮花塢に着くまで、ずっと体の奥が熱かった。自分が信じられないが、藍曦臣に触れられた熱が溜まったまま逃げていかないのだ。
江澄は湖面に浮いて、空を見上げた。
涼しい風の通る、薄青の澄んだ空だ。
白雲が薄く、たなびいている。
「はあ」
安堵のため息がこぼれた。なんとか体は冷えてくれたが、胸中のうっとおしさはそのままだ。
視線を落とせば袷の合間に傷痕が見える。指先でなぞればでこぼことおもしろくない感触がある。
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