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    こあめ

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    こあめ

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    現パロシルレス

    #シルレス
    sirles.

    花束 最近のシルヴァンは、週末にベレスの部屋を訪れる度、小さな花束を持ってくる。
    「俺だと思って可愛がってくださいね」
     なんてことを言いながら渡してくるのでいつも素直に受け取っていたのだが、毎週のように手土産として持参されるとさすがに申し訳なさを感じてしまった。
    「どうして毎回花束を持ってきてくれるの?」
     改めて疑問をぶつけると、彼はしゅんと肩を落とす。
    「もしかして迷惑でしたか?」
    「ううん、嬉しいよ。ただ、毎回買ってくるのは大変じゃないかと思って」
     貰ったばかりの花束を早速花瓶に活けようとリボンを解く。外装と包まれた花の色のバランスも毎回ぴったり合っていて、もしかしたら店の人と色々と相談しながら包んでいるのかな、なんて想像をする。
    「まったく大変じゃないですよ。俺がやりたくてやっていることですから」
     そう答えたシルヴァンの目が一瞬泳いだのを、ベレスは見逃さなかった。
    「もしかして、何か目的があったりする?」
    「……ベレスさんに嘘はつけないな」
     指摘をしてみると、彼は小さくため息を吐き出した。
    「この花束って、大体一週間くらいは楽しめるでしょう」
    「そうだね」
     貰った花をなるべく綺麗な状態で保ちたくて、念入りに手入れしている為一週間前後は楽しんでいられる。花が寿命を迎える頃にシルヴァンが新たな花束を持ってくるので、近頃はそれが日課となりベレスにとって楽しみの一つとなっていた。
    「疲れてるあなたの目の保養になればいい、というのも、もちろんあるんですけど」
     シルヴァンは活けたばかりの花弁にそっと触れた。淡い色の花びらを見つめ、言いづらそうに唇を動かす。
    「ベレスさんがこの花を見たり、手入れをする度に俺を思い出してくれるといいな、と……」
     俯いた彼の頬がゆっくりと朱色がかっていく。その姿を見て、ベレスの顔には微笑みが広がった。
    「結構可愛いことを考えるんだね」
    「ちょっと、笑わないでくださいよ……! 恥ずかしいから言うつもりなかったのに!」
    「ごめんね、シルヴァンが可愛くて、つい……。でも君の気持ちは嬉しいよ」
     実は枯れてしまった後もどうにか残せないかと試行錯誤して、こっそりドライフラワーや本の栞にしている。そしてそれを見る度にシルヴァンの顔を思い浮かべるので、まさに彼の願いは叶っていると言っていいだろう。
     だがすべてを打ち明けるのは、シルヴァンの手のひらの上で転がされている気分になって少し気恥ずかしい。
    「大方シルヴァンの狙い通りになっているから安心して」
     一部分を隠して告げると、彼の目がキラキラと輝いた。
    「それって、一日中俺のことを考えてるってことですか?」
     嬉しそうに弾む声を受け止めながら、ベレスは視線をシルヴァンから花へ移す。瑞々しく咲く花は見ているだけでも幸せな気分になるのに、さらにそれを贈ってくれた人が愛する彼とくれば、幸福度は倍増した。
    「そこまでは言っていないけどね」
     まああながち間違ってはいないのだけど、という言葉は、照れくさいので心の中だけに封じ込めた。
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