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    なんなの

    @honmani_nannano

    日本語 トテモ むずかしネ

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    なんなの

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    洋で推し活してる拗らせリアコ三の話

    【再掲】推して圧されていつも通りの昼休み、いつも通り購買でパンを買い、いつも通りのメンバーで、いつも通り屋上に集合した。
    円を描くように地べたへ座り込み、冬の肌寒さに少し背中を丸めて馬鹿騒ぎをしながら過ごすこの時間は俺のお気に入りだ。
    特に花道がリハビリから戻った最近は以前に増して騒がしく、誰もがどんな話題でもゲラゲラと笑っている。

    「なあ、ミッチーは何であんなに洋平が好きなんだ」
    「は」

    ところが今日は突然何の脈絡も無く高宮の発した言葉に空気がガラリと変わり、俺はパンに噛り付こうとして開いた口のまま間抜けな声を出した。
    誰が、誰を好きだって
    一向にパンを下ろさず全員の反応を確認すると八つの目玉は全て俺に集中していた。
    どういうことだ、全員グルになって俺をからかっているのか。
    ミッチーと言われて思い当たる人物は一人しか居ないし、全員にとってもそうだろう。
    うちの三年生、そして花道と同じバスケ部の三井寿だ。
    あのミッチーが何であんなに俺を好きなのか、そう聞いたのか
    いやいや、好きだという好意を感じるも何も俺との交流は殆ど無いぞ。
    半年前とは言えあれだけ殴ったのだ、トラウマの対象となっていてもおかしくはない。
    まさか俺が殴ったせいで今更バグでも起こしているのならばあれは連帯責任だ。

    「おい高宮、その話は内緒の約束だぞ」
    「あーあ、俺知らねえからな」
    「お前のせいでもう洋平の写真が売れなくなったら責任取れよ」
    「あー…やばい。洋平、今のは冗談だ。全部忘れてくれ」
    「待て待て待て待て」

    俺が固まっているのをいいことに全員が好き勝手に喋り、挙句に忘れろときた。
    そのまま昼食を続けようとしたので両手を振って制し、冷静になる為に深呼吸をした。
    こいつらとは長い付き合いだし、どういう性格かもよく理解しているつもりだ。
    だからこれが冗談でもドッキリでもなく本当の話だとも分かる。
    しかも俺の写真で小銭稼ぎまでしていたらしく、大楠は太客だったのに、とまで零した。
    あの人が俺を好きそれも写真まで買い取るほどだって
    いや、そんな馬鹿な話があるものか。
    何度も言うが俺とあの人に個人的な交流は殆ど無いに等しく、花道がリハビリで不在の間は校内ですれ違う際に軽く挨拶をし、見舞いで遭遇すれば雑談をする程度だった。
    そんな僅かな交流から特別な感情は一切感じられず、悪徳業者大楠から俺の写真を買い取るほどの熱狂ぶりは一ミリも窺えなかった。
    やはりこれは罠だ、嘘だ、俺をからかって遊んでいる、そうであってくれ。

    「お前らちゃんと説明しろよ」
    「洋平、忘れた方が身の為だぞ。両思いが必ずしも幸せとは限らねえんだ」
    「いや何で慰めモードなんだよ。説明しろって」
    「さ、撤収だ」
    「あっおい待て」

    何故か花道は俺の背を摩り、うんうんと悲し気に微笑みながら慰める。
    更に混乱して説明を要求してもまだ食いかけの飯を両手に全員が一斉に脱走した。
    すかさず俺も立ち上がって連中を追いかけようとしたものの、不格好にも足がもつれて尻もちをついてしまった。
    再び立ち上がる気にはなれず、乱暴に両足を投げ出して溜息をついた。
    なんてことだ、どうやら全て事実の話らしい。
    ただし何か事情があるのか、あの花道までもが真剣に忠告をしてきたのが気にかかる。
    だからこの際どうして俺の片思いがバレているのかはさて置き、事実確認が最優先だ。
    いつも通り花道の部活を冷やかしに行けば本人に会えるのだし、そこで大楠から写真を買い取っている理由を聞いてしまえば自白するのではないだろうか。
    素直に告白されようものならカップルとして成立し、めでたくハッピーエンドだ。
    嘘が得意ではないだろうから誤魔化そうとしてもしつこく問えばボロも出るだろう。
    これ以上のチャンスは無い、早速放課後はバイトを休んででも体育館へ直行だ。

    「…初デートを考えねえとな」

    勝利を確信し、一人屋上に寝転ぶ俺はその先に待つ過酷な未来を知らなかった。





    「どうした、今日は随分と早いんだな」
    「あー…まあね、ちょっと気になることがあって」

    放課後、教室を飛び出て一目散に体育館へ向かえば幸運にも部員は揃っていなかった。
    出入り口から顔を覗かせるとすぐに目的の人物と目が合い、リズム良くドリブル音を響かせながらこちらへ歩み寄ってくる。
    やはり何か特別な感情があるとは思えない普通ぶりで、目の前で立ち止まると何が気になるんだ、と首を傾げる姿は自然体そのものだ。
    俺から続く言葉を待っている間もドリブルを続け、体にまで響く振動や音が鼓動と被る。
    あまりにいつも通りの様子に戸惑いはするがここまで来てやっぱりやめたは無しだ。
    先ずはいきなり俺が好きなのかと問うよりも何故俺の写真を買い取っているのかを聞く。
    そうすれば最終目標の水戸が好きです、付き合ってくださいに繋がるはずだ。

    「ミッチーが俺を好きってマジ」

    作戦失敗。誰でも良いから今すぐ俺に撤退を命じてくれ。
    昼休みからずっとここへ来るまでに何度もイメトレを行ったのに、結局は早く本当のことが知りたくて勝手に口が動いてしまった。
    これではまるで耳にした噂に浮かれてわざわざ本人へ確認を取りに来たみたいだ。
    いや、実際のところはそうなのだが。
    俺としてはもっとスマートに聞き出し、俺も好きだけどね、とキメてみせる予定だった。
    こんな姿を花道たちに見られようものなら思春期かと指をさして笑われるに違いない。
    花道たちどころか本人にさえ笑われたっておかしくはない大失態だ。

    「そうか、もうバレたか」
    「え、それどういう感情」

    笑われるどころか、ミッチーはドリブルをやめるとボールを片手に真っすぐ俺を見た。
    諦めのような台詞を言いはしたが珍しいほど冷静で感情が見えず、今になって聞くべきではなかったかも知れないと若干の後悔を覚えた。
    あの花道までもが忠告したのだ、何かでかい事情があるのは間違いない。
    それでも両思いは両思いだと舞い上がってしまった己が恥ずかしい。

    「悪いな水戸、俺はお前のリアコだ」
    「………なんて」
    「かつ厄介オタクの自覚はあるから一定の距離は守るし繋がり目的でもないからどうか安心してくれ。な」

    悪いとは口ばかりで、ミッチーはニコリと笑って謎の呪文を続けた。
    何一つ理解できるものは無く、頭上にいくつもの疑問符が飛び散らかりそうだ。
    一つ一つの単語の意味を考えている内に着替え終えた花道が現れ、俺と目が合うと全てを察して静かに十字を切りながら他の部員の元へ逃げやがった。
    忠告を無視した俺が悪い。それは認めよう。
    しかし少しくらいは助けるなり情報を寄越すなりしてくれても良かったじゃないか。
    ミッチーが俺を好き、これは揺るぎない事実として間違いないだろう。
    ただし少々厄介なことにその好きは俺が持つ好きとは大きく異なるようだ。

    「ええっと…その、つまり、つまりさ、俺と付き合いたい…とか」
    「んだよお前、人の話全く聞いてねえのか。繋がり目的じゃねえって」

    会話が成り立っていない原因は明らかにミッチーにあるだろうに、何故不機嫌になれるのか俺は不思議でたまらない。
    そもそも繋がりって何だ、カップル成立のことを最近はそう言うのか
    好きなのは確実なのに付き合いたくないとはどういうことなんだ。
    ああそうか、俺がミッチーにどう思われているかばかりを考えているからいけないのか。
    ここは男らしく俺もミッチーが好きなんだと打ち明ければこの状況は打開されるはずだ。

    「あのさ、便乗するようで悪いけど実は俺もミッチーが好きなんだよね」
    「あー…悪い、解釈違いだ」

    これにて無事新たなカップル成立となるはずなのにまたしても聞き慣れない単語が飛び出し、申し訳なさそうに片手を上げて謝罪する姿に混乱は深まるばかりだ。
    百歩譲って、ミッチーが片思いを大切に楽しみたいタイプだとしよう。
    それならば隠していた理由も分かるし、偶然耳にした情報を頼りにその秘密を暴くような真似をした俺が悪い。
    自分勝手でデリカシーに欠ける行いだったと認めよう。
    ただ俺だってずっとミッチーが好きだったわけで、どうせ無理だと諦めていたのに両思いとくればそりゃあ付き合いたいとなって当り前だろう。
    なのにどうだ、好きな相手から好きと言われて眉間に皺を寄せるこのモンスターは何を考えているんだ。

    「ごめん、つまりそれってどういう意味」
    「俺とお前が付き合うのは無理って意味」
    「え、だってその…両思い…だよね」
    「うわ本当に無理、地雷過ぎる」

    マジで無理、とまで言ったミッチーはついに片手で口元を覆い、うぷ、と顔を青くした。
    ここまで来るといっそ殴ってやろうかとも思うが体育館での鉄拳制裁は洒落にならない。
    怒り任せに殴ってみろ、あの時と同じように教師が集まりでもすれば全員の前で三井くんが俺と両思いなのに付き合ってくれないなんて言うからちょっと頭きて…やっちまいました、と言うはめになる。
    それで二度目の謹慎処分となれば一生の恥だ。

    「待って本当によく分からないんだけど…俺が好きなんだよね」
    「お前なあ…俺ほどのガチ勢の気持ちを疑うなんてプロとして恥ずかしくないのか」
    「…肯定として受け取るよ。それでさ、お互いに好きなのに付き合えない理由は」
    「馬鹿だなお前。俺がお前みてえな男前で救世主でもある恩人と付き合うなんておこがましいにもほどがあるだろ。確かにお前を好きだ。大好きだ。そりゃあもう知っての通り大楠から買い取った写真を硬質ケースに入れて下敷き代わりにしているくらいだ。けどな、自分の立場くらいはきちんと理解しているつもりだ。そもそも一ファンが推しと密かに繋がるなんてことは許されねえんだよ。そんなことも知らないなんてお前は本当にプロ意識に欠けてるぞ。運営はどこだ桜木か物販はあの三人だろうけど運営方針に少し問題があるんじゃないかファンが自分を好きと知るなり歩み寄ろうとする行いは万死に値する。俺じゃなかったら炎上待った無しだと分かってるのかこれに懲りたら今後は水戸として活動することにしっかりと責任とプロ意識をもって励むようにな。あ、でも稀にファンサをくれるのは大歓迎だ。頻繁にされると価値が落ちるからな。それからお前もまあまだ十五だ、恋だの愛だのに浮かれる気持ちは分からないでもないが一番は自分を水戸だと意識してファンを悲しませることのないよう徹底しろよ。特に俺のようなリアコは熱愛報道が出ようものなら即死間違い無しだからな。その時はこの湘北から…いや、この国から貴重なエースを奪った罰として安西先生へ土下座しろ。出来ることならお前の幸せを一番に願ってやりたいがこればかりは難しいところだからな…恋人が出来た時は頼むから絶対に匂わせなんてせず徹底的に隠してくれ。そしていつか結婚報告をする時はいつからの交際だったのか、相手は誰なのかは慎重にしろよ。下手に交際期間を発表すると俺が推してたあの頃には既に恋人が居たのかと発狂してやるからな。相手についても一般人だと曖昧にするのが一番かも知れないがそれはそれで俺だって一般の三井だぞとキレ散らかす自信がある。だから俺のような厄介オタクの為にもどうか軽率なことはしないでくれ。そうは言っても俺だってお前の幸せを願っている。これは本当だ。嘘じゃあない。だから俺なりに考えた一番のシナリオは卒業を機にお前との縁も切れて長い年月が経ったある日、すっかり大人になった俺がバーで一人グラスを片手に黄昏ているところに徳男が現れ三っちゃん…水戸のやつ、ついに結婚したんだって、と伝えに来るんだ。そこで俺は暫く俯き、お前がどんな風に成長したのかと想像し、校内や試合会場でお前を目にするだけで幸せだった当時に思いを馳せ、熱くなった目頭から涙が零れ落ちないよう再び顔を上げると一気にグラスを飲み干すんだ。そして健気にも笑顔でマスターに一番キツい酒を頼み、お前の知らないところでお前の幸せを願いながら徳男と乾杯する。どうだ」
    「今の言葉、俺でも理解出来るよう補習授業してくれない」
    「ちったあ自分で考えろい」
    「そんな無茶苦茶な」

    ド級の呪文を浴びて脳が麻痺したのか、いよいよ考えるのも億劫になってきた。
    最早病気の域だし、俺の手には余る問題だ。
    だからって奇跡的に叶った両思いを諦める気にもなれず、腕を組み頭を悩ませた。
    ミッチーの肩越しに体育館を見れば既に部員全員が集まり、練習に励んでいる。
    その中で俺の視線に気付いた宮城さんが両手を合わせ、謝罪のポーズを見せた。
    どうやら俺だけがミッチーの症状を知らなかったらしく、誰の手にも負えないようだ。

    「ねえミッチー、改めて言うよ。俺もミッチーが大好きだよ。付き合おう」
    「おい桜木お前のとこの事務所はどうなってんだ」

    そもそも無理、どうせ無理。
    そう分かってはいたが、俺の告白にブチ切れて花道へ駆け寄る姿に殺意が沸いた。





    あれから何度もミッチーに交際を申し込み、その度に花道が叱られる日々が続いた。
    そのくせ自分が俺に愛情を示すのは何も問題が無いようで、体育の授業でサッカーをしていれば三年の教室から大声で応援してくるし、廊下で遭遇すればニコニコと目を細め、部活にスポーツドリンクの差し入れを持ち込めばこれは家宝にすると両手で大事そうに持ち、部活終わりに校門前で偶然を装って遭遇すると一緒に帰ろうぜと自分から誘って来るのだ。
    その勝手さに腹が立ち、いい加減付き合いたいと言えと叱ればお決まりの地雷です。
    本人が開き直ってくれたお陰で以前よりも交流が増え、しかも両思いというのは有難い。
    が、それ以上は無理だと突っぱねられて誰が素直に喜べるだろう。

    「なーお前ら、これ見てくれよ。徳男が夜なべして作ってくれたんだ」
    「うわなんて恰好して…なに、またグレようって」

    その上今日はいつも通りのメンツで昼休みを過ごしているところに堀田さんたちを連れ、何故か羽織っている長ランを嬉しそうに自慢しにやって来た。
    薄情にも流れ弾を食らわないよう一斉に逃げ出した友人への制裁は後回しだ。
    それよりもまるで応援団長のような可愛い…いや、見慣れない恰好の理由が先だ。
    体育祭は随分と前に終わったし、俺が出場する競技はどれも全力で応援していたのを本人も忘れてはいないだろう。
    借り物競争で先輩という仕組まれたようなお題を引き当ててしまい、仕方が無くミッチーの元まで駆け寄ってお題の紙を見せると瞳を輝かせて喜んでいたのはまあ良かった。
    そのままルール通り手を繋いでゴールを目指す間は泣きじゃくり、嗚咽しながら一生の思い出にしますとまで言っていたほどだ。
    あれは絶対に堀田さんあたりに仕組まれていたに違いない。
    話を戻して、寒がりなこの人に長ランはさぞかし温かくて着心地が良いだろう。
    けれどただでさえグレていた時期があるのだ、教師の心臓に悪いことをするな。
    冬の選抜を前に素行が悪いと部活を禁止されたら進路も何もあったもんじゃない。

    「流石に長ランを一からは無理でしょ」
    「違う違う、これを良く見てくれ」

    じゃーんと見せつけるよう左右へ開かれた長ランの裏地を見て、俺は絶句した。
    右側に大きく水戸洋平命と青い糸で刺繍が入り、左側にはまた呪文のような詩らしき文字がずらりと並んでいる。
    それを縫ったらしい堀田さんはどうしてかミッチーの背後で誇らしげに背筋を伸ばし、他の連中も嬉しそうだ。
    元は不良グループのトップだったというこの人のこの豹変ぶりに何も思わないのか。
    俺ですらあれは夢だったんじゃないかと最近は自分の記憶を疑っているほどだぞ。

    「凄いだろ、水戸親衛隊団長仕様の長ランだ」
    「どうだ水戸、三っちゃんの愛は本物だ」
    「そうだそうだ、思い知れ」
    「二度と両思いだなんて言うなよ」
    「…とりあえずミッチー、ちょっとおいで」

    やんややんや騒がしい外野は無視で、ミッチーに手招きすると素直に頷いた。
    ファンサでもしてもらえると期待してか、口元を緩ませているのがまた可愛い。
    悲しいことに俺もこの状況に順応してしまい、ファンサまで出来るようになった。
    ファンサと言っても三日に一度の頻度で握手、または頭を撫ぜるだけのこと。
    それだけでも本人は涙目になりながら喜ぶのに付き合うのはやれ地雷だ解釈違いだと拒否し、挙句の果てにはしつこく好きだよと気持ちを伝える俺に向かってプロ意識が足りないと言う。
    とどめにこの長ランだ。ここまでしておいて何が付き合うのは無理なものか。
    そんな茶番はもう終わりにして、付き合った方が身の為だと分からせよう。

    「付き合いたいって言わなきゃ本気で落とすよ」

    頭を撫ぜるよう腕を伸ばせばそれに合わせて背中を丸めたので、すかさず背後に回れば簡単にチョークスリーパーがきまり、全員が声にならない悲鳴を上げた。
    ここまで楽に背後が取れてしまうと弱過ぎて何故不良となったのか本当に疑問だ。
    人質を取られたも同然の状況に堀田さんたちも動けなくなり、あとは肝心のミッチーが負けを認めて俺の望み通りの言葉を吐くだけだ。
    今日まで何度俺が優しく説得しても独自のルールでそれを全て拒否した罰だ。
    このくらいの乱暴は躾の範疇に入るだろう。

    「ミッチーだって苦しいのは嫌だろさっさと付き合いたいって言いな」
    「お、俺は推し活がしたいだけなのに…っ」

    こうまでしても頑なに首を左右に振り、あんまりだっと泣き出す腕の中のお馬鹿さんへいっそ俺だって泣きたいよと言いたくなった。
    間もなく冬の選抜が始まり、この人が卒業するまでの時間はそう長くない。
    卒業以降は縁を切ろうとしているのを本人から知らされた上で誰が逃してなるものか。
    こんなことをしているが俺なりに恋人らしいイベントを過ごしたいとは思うし、同じ高校生でいられる時間が限られているならなおのこと付き合うのなら早い方が良い。
    何より、ここまでしておいて結局片思いで終わるのは絶対に納得出来ない。

    「俺だってミッチーが大好きなんだからさ、付き合いたいって言って欲しいな」
    「水戸はそんなこと言わないっ」

    だからこうして必死になっている俺の苦労も知らず、喉を閉められながらも精一杯の声量で拒絶する姿へ本人以外の全員が項垂れる結末となってしまった。
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