しゃしんとる!「ガッちゃん、こっち向いて」
「なんだ? っうお」
何年ぶりかに聞くシャッター音に、思わず肩が跳ねる。伊月が俺に向けていたそれは随分長い間見ていなかった、緑色のパッケージのインスタントカメラだ。
「懐かしいモン持ってるな」
「だろ? この間仕事の合間に寄ったカメラ店で見かけてさ、つい買っちゃったんだよね」
きちんとフィルムを巻きながら伊月は答えた。フィルムカメラに慣れていない人間だと忘れがちな動作だ。伊月も俺も写真を撮るときはスマホしか使わないから慣れているとは程遠い。世代的にあのインスタントカメラをいじったことくらいはあるから、思い出しつつやっているのだらうか。それにしても、カメラ店になんの用事があったのだか。
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