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    akariya0309

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    さめししワンドロ 20240207
    第29回 お題「笑顔」より
    さめししですが、同じ空間にいるのはさめとまふだけです。

    #smssonedrow
    #さめしし

    #smssonedrow
    #さめしし

    さめししワンドロ第29回題「笑顔」より 村雨礼二が笑っている。本人としては鼻歌が出そうなほど上機嫌なので笑みが収まらないだけなのだが、同じ空間にいる者にとってはいささか気まずい。笑っている顔が怖いのだ。仕事場の人間であれば避けるし、道を歩いていても避けられる。だが真経津には逃げ場がなかった。ここが自分の家だからだ。飽きたもので溢れる家に友人一人残して少し外に出る事に抵抗はないが、出会ったばかりの頃とは事情が異なる。
     仲が深まれば関係性も変わるというもの。それは真経津と担当行員の話でもあるし、友人たちとの話でもある。皆、真経津と会った時よりも数段面白い。それは喜ばしい。
     集まると決めたのは真経津だった。いつもの面子に声をかけ、集まれる者のみ集まる。叶黎明と天道弓彦の二名は仕事の都合で来られず、獅子神敬一からは一回渋ったものの了承の返事が来た。村雨は医者であるからして都合をつけるのが最も難しいのであるが、夜勤明けなので可とのことだった。獅子神がいるからこそ来ることを決めたのであろう。誰かの家に集まる時に獅子神の出席が確定するというのは、満足に足りる味と量の食事が約束されたに等しいからだ。
     想定外だったのは昼頃から集まる予定だったのが、夜勤明けの村雨がほぼそのまま来た事だった。一回獅子神の家を経由して二人で来ればいいのにと思いながらも迎え入れた。そのうち寝るだろうなと思っていたからだ。
     そういえば三人だけで集まるのは始めて会った時以来かな。そう思いながらオレンジジュースをすすり、村雨を見る。着いた時から今現在までの三十分あまり、村雨はずっと顔に笑みを浮かべたままだ。真経津が一応供したジュースに口をつける時も顔が固定されている。なんらかのペナルティーである可能性もあるが、そうではないということはなんとなくわかる。検討もついているが、なんとなくつついてあげる気になれない。
    「……フ、フフ」
    「…………」
    「フフ……ジュースがなくなった。貰うぞ、真経津」
    「ああうん、どうぞ」
     村雨は慣れた様子で冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、自分のコップに注ぐ。村雨が自分で持ってきたものなのだから好きにすればいい。とは思っても言わない。値段などは関係なしにお持たせという意識なのだろうから。この男は基本的に育ちがいいのだ。
    「ねえ、そんなに聞いてほしい?」
    「獅子神の愛想笑いを偶然目撃し、それを指摘したら驚いたあと恥ずかしそうに悪態をつかれた事についてか?」
    「全部言ってるよ」
    「ちょっとしたパーティーとやらの帰りだったのだろうな、男女どちらの誘いも社交辞令と訓練された笑みで躱していた。あの男は表情筋もよく鍛えられている。いつもは見られない表情故、二人きりの時に求めたら悪態をつかれたというわけだ。フフ、照れ隠しも可愛らしい男で実に楽しい」
     水を向けたつもりはなく、ほぼ皮肉のつもりだった。獅子神が来たあとで気の済むまでやってほしいという意思も込めていた。村雨がそれを読み取れないはずはないが、意図的に無視をしたか獅子神への気持ちが走りすぎて視野狭窄になっている可能性はいる。後者だろうなぁと思いながら、ぺらぺらと語り続ける村雨を横目にスマホを取り出す。
    『獅子神さん早く来て』
    『来ないと獅子神さんの笑顔についての講義が終わらないよ』
     大学教授でもないし医者の仕事でもここまで喋りはしないだろう村雨先生は未だに語りをやめない。
    『あいつ何言ってんだよ、とりあえずなんか食わせて一回寝かせろ』
    「……わかってるけどわかってないなぁ」
     うーん、と短く唸り、部屋にあったチョコなどを渡してみる。誰かが持ち込んで置いていった菓子だ。
     少しでも寝てくれたならラッキー、寝てくれなかったら獅子神に早く来るようメッセージを送るだけだ。笑顔にまつわる賭けにならないゲームは果たしてハイになった村雨の勝ちであった。
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    akariya0309

    DONEさめししワンドロ 20240207
    第29回 お題「笑顔」より
    さめししですが、同じ空間にいるのはさめとまふだけです。

    #smssonedrow
    #さめしし
    さめししワンドロ第29回題「笑顔」より 村雨礼二が笑っている。本人としては鼻歌が出そうなほど上機嫌なので笑みが収まらないだけなのだが、同じ空間にいる者にとってはいささか気まずい。笑っている顔が怖いのだ。仕事場の人間であれば避けるし、道を歩いていても避けられる。だが真経津には逃げ場がなかった。ここが自分の家だからだ。飽きたもので溢れる家に友人一人残して少し外に出る事に抵抗はないが、出会ったばかりの頃とは事情が異なる。
     仲が深まれば関係性も変わるというもの。それは真経津と担当行員の話でもあるし、友人たちとの話でもある。皆、真経津と会った時よりも数段面白い。それは喜ばしい。
     集まると決めたのは真経津だった。いつもの面子に声をかけ、集まれる者のみ集まる。叶黎明と天道弓彦の二名は仕事の都合で来られず、獅子神敬一からは一回渋ったものの了承の返事が来た。村雨は医者であるからして都合をつけるのが最も難しいのであるが、夜勤明けなので可とのことだった。獅子神がいるからこそ来ることを決めたのであろう。誰かの家に集まる時に獅子神の出席が確定するというのは、満足に足りる味と量の食事が約束されたに等しいからだ。
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    akariya0309

    CAN’T MAKE第1回さめししワンドロのやつ!
    7月19日(金)22:00〜23:00
    お題「雨」「ハート」
    #smssonedrow
    文庫メーカーに落としてALTもやるのしんどくてごめんねこっちにあげるね……。
    四季ブロークン日本に梅雨はあるか?ここ数年の異常気象からすると珍しく、長雨が続いている。六月になるとああ梅雨かと思うのに、実際はゲリラ豪雨や雨上がりの蒸し暑さのみで、しとしとふりつづく雨の憂鬱さみたいなものは遠のいていた。乱高下する天気は気象予報士だけでなく我々資格のない人間も悩みどころであるため、雨の降る日が続くのであればそれはそれでよかった。予定は立てやすいし、断りやすくもある。靴やスラックスの裾が濡れるのは面倒だが、仕方ない。突発的な豪雨よりはマシである。きちんと準備をして毎日を過ごせばいい。それだけだ。
    それだけのはずだったのだが、私は今、情けなくもいつも着用しているバイカラーのシャツを十枚抱え、獅子神邸にいた。食中毒やら子供の風邪が感染したのやらで一時的に人手不足となり、本職の勤務が長引いた。賭場にも行かなくてはならない。それらが重なり、クリーニングに出しても取りに行くのが間に合わないことが多くなってしまった。自分で洗えないことはないのだが、気力がない。自宅にあるアイロンは兄貴に押し付けられて以来開封していないし、アイロン台もどこに片したか忘れた。愚痴を重ねるならば濡れた衣類の重みや湿り気が嫌いだ。触りたくない。かといってやらなければ職場に着ていくものがない。決まったものでなければ落ち着かない性分が憎いが、こればかりは仕方がなかった。
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    akariya0309

    DONEさめししワンドロ 20240207
    第29回 お題「笑顔」より
    さめししですが、同じ空間にいるのはさめとまふだけです。

    #smssonedrow
    #さめしし
    さめししワンドロ第29回題「笑顔」より 村雨礼二が笑っている。本人としては鼻歌が出そうなほど上機嫌なので笑みが収まらないだけなのだが、同じ空間にいる者にとってはいささか気まずい。笑っている顔が怖いのだ。仕事場の人間であれば避けるし、道を歩いていても避けられる。だが真経津には逃げ場がなかった。ここが自分の家だからだ。飽きたもので溢れる家に友人一人残して少し外に出る事に抵抗はないが、出会ったばかりの頃とは事情が異なる。
     仲が深まれば関係性も変わるというもの。それは真経津と担当行員の話でもあるし、友人たちとの話でもある。皆、真経津と会った時よりも数段面白い。それは喜ばしい。
     集まると決めたのは真経津だった。いつもの面子に声をかけ、集まれる者のみ集まる。叶黎明と天道弓彦の二名は仕事の都合で来られず、獅子神敬一からは一回渋ったものの了承の返事が来た。村雨は医者であるからして都合をつけるのが最も難しいのであるが、夜勤明けなので可とのことだった。獅子神がいるからこそ来ることを決めたのであろう。誰かの家に集まる時に獅子神の出席が確定するというのは、満足に足りる味と量の食事が約束されたに等しいからだ。
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    takamura_lmw

    DONE🎉ししさんお誕生日おめでとうございます🎉
    ししさんお誕生日のさめしし、もしくはししさめです。
    一月に書いたさめせんお誕生日SSの続きです。

    あなたのこれからの人生が、あなたにとって素晴らしいものでありますように。
    できれば長生きしてください…頼む…ギャンブルなんかやめろ…ワンへなんか行くな…
    「誕生日、おめでとう」『村雨、八月二十七日って空いてたりするか』
     恋人の声を聞いた途端、村雨礼二はいざという時の切り札に確保していた上司の弱みを、ここで行使することを決めた。空いた片手で猛然と上司にビジネスチャットを打ちながら、頭の中では担当の患者とそのタスクについて素早くチェックをかける。どうしても村雨でなければならない仕事はないはずだ。あのネタをちらつかせれば上司は確実に休みを寄越すだろう。
    「休みは取れる。どうした」
    『即答だな』
    「偶然ここのところ手が空いていてな」
     嘘だった。所属する医局もいわゆる「バイト」先も相応に多忙だ。だがそれを彼に悟らせるつもりはさらさらなかった。
     村雨がここまで即座に恋人の―――獅子神敬一の、願いとも言えないような言葉に応えたのは、彼の声になにか特別なものを感じたからだった。不安でも、歓喜でもない。怒りでもなく、愉楽でもない。ただどこか尋常でなく、特別なもの。絶対に逃してはならないなにか。ほとんど第六感のようなものだが、村雨はそういった感覚を重視する性質(たち)だった。
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