捨てる紙あれば拾う紙あり負けた。完膚なきまでに負けた。
入学した高校に男子バレーボール部がなかったから、自分で立ち上げた。どうにか人をかき集めて、指導者のいない中必死に練習して、出場した地区予選の1戦目。相手は全国大会常連の強豪校。唯一の経験者である小平太がいくら頑張ったとて、点差は開いていくばかりだった。
「私はサーブだけでももっと練習しておくべきだった」
「次があるさ、僕たちまだ一年生だもの」
「そうだな、次は俺もアタッカーをやりたい」
「お前のへなちょこアタックで点が取れるわけなぃだろ」
「なんだとぉ!?」
「もう二人とも~……」
いつもより暗い声のやり取りを聞きながら、涙が溢れないようにまばたきを繰り返す。他にいくらでも強い部活があるのに、一緒に練習してくれたみんなの優しさ。なのに結果を出せなかった悔しい気持ち。
それまで一言も喋っていなかった長次が、突然「あ」と声を出した。足元の地面に落ちている紙きれを指差す。
「これ」
一体なんだろうと凝視していた留三郎が大声を上げる。
「焼肉き◯ぐの割引券!?」
拾い上げた文次郎が文面を読み上げる。
「30%オフ、1枚につき1グループ様まで、有効期限は……今日だ!」
「これは行くしかないだろ」
「ここに割引券が落ちているということは、近くに店舗があるはず……やはりな、こっちだ」
素早くスマホを操作していた仙蔵が歩き出す。文次郎と留三郎も後に続いた。
「お前も行くだろう」
長次が確かめるように、小平太の顔を覗き込む。小平太は涙を払って頷いた。
「当たり前だ!」
「嘘、なんでこんないいことがあるわけ?怖い……」
長次と、青い顔で震えている伊作の手を引っ張って、小平太は走り出した。