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    mori3022

    森です
    20↑成人済/aokb

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    mori3022

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    アオカブオンリー開催おめでとうございます。

    既に両想いの二人です。
    恋愛感情にともなうアレコレを自覚し始めるaokくんを書きました。
    平凡であり続けることを望む男がじわじわと揺らいでいく様は、
    良いものですね……。

    #アオカブ

    甘い唇ジムトレーナーのみんなに教えてもらったんだ、と彼はたいそう嬉しそうに笑った。
    「……そうですか」
    「ここを押して、次は、これを、選んで……できたよ、アオキくん!」
    指さし確認よろしく慎重に操作していたスマートフォンをこちらに向ける。画面には幾つかのトッピングが選択された、読み上げるだけでも既に甘いカスタマイズの珈琲が表示されていた。
    「あとは注文するだけですね」
    「うん! アオキくんの分も注文しようか」
    「いえ、自分はコーヒーチケットがありますので……」
    名刺入れのポケットに挟んでおいた紙きれを取り出して見せた。カブさんは目を丸くして「チケットなんてあるんだね」と驚く。
    十杯分の価格で十一枚綴りというお得なチケットだが、季節商品が対象外の為かあまり知られていない。
    「アオキくんは詳しいね! ああ、買ってくるよ」
    「お言葉に甘えます……」
    自然に差し出された手にチケットを託し、店内へ入るカブさんを見送った。
    カスタマイズが豊富なことで有名な珈琲チェーン店は、どの地方、どの地域の店舗も若い女性客で賑わっており、自分のようなおじさんは入りにくい。珈琲そのものは良質な豆を使っており、店舗に必ず一人は腕の良いバリスタが配置されていて、どこで注文しても美味い珈琲が出てくるのは有難いのだが。
    臆することなく堂々と店内に入る様は姿勢正しく、試合の入場の時と変わらない。それはカブさんの性格、性分もあるだろうが、それだけではない。
    みな知っているのだ。カブさんが甘党だということを。
    ここはガラル、エンジンシティ。カブさんが所属するほのおジムの本拠地で、街の人々にとって彼は地域を代表するポケモントレーナーだ。誰もが彼を慕っており、知っている。
    カブさんが甘いものを多く扱う飲食店に並んだとて、今さら驚かれやしない。
    その事実に、ぐちゃりと腹の奥底で暗い感情が音を立てる。
    瞳を閉じ深呼吸し、それが発露するのを抑え込んだ。
    これは嫉妬……いや、悔しさだろうか。自分だけが知っていると思っていた隠れ名店が、実は食通の界隈では知られた店だったと知ったときのような。
    ……パシオでは、パシオに招かれたパルデアのトレーナーの間では、カブさんが甘党だという事を知っているのは自分だけだった。その自分だけという点に勝手な優越感を抱いていた。
    だがガラルでは違う。エンジンシティの誰もが知っていることであり、ひょっとしたら他のガラルリーグのジムリーダーにも知れ渡っているかも知れない。
    自分だけではない、自分だけではないのだ……。それに対して暗い感情を抱くのは、それをカブさんに向けるのは。
    (あまりにも身勝手ですね、いけません……)
    もう一度、深呼吸をして感情のリセットを計る。社会人としての処世術だ。
    「待たせたね、アオキくん!」
    「いえ……ありがとうございます……」
    戻ってきたカブさんがテイクアウトのカップを差し出している。礼を言って受け取り早速、ひとくち頂いた。
    酸味がほど良くコクがあり苦味の強い、いつもの味だ。珈琲と聞いて誰もが思い浮かべるであろうスタンダードな。
    (そう……こういうのでいいんです……。フルーティな酸味だとかナッツのような香りだとか、奇を衒う小細工は余計なんですよ……)
    「うまい……」
    「それは良かった!」
    にっこりと満足げに笑い、カブさんも手にした珈琲を飲んだ。瞬間。頬が少し紅く染まり目元が緩む。お気に召したのだろう。小さく「甘いね」と溢した。
    美味いものを食べるのも好きだが、美味いものを口にして顔が綻ぶのを見るのも好きだ。カブさんならば尚更。
    だが今は先ほどの暗い感情を呼び起こしてしまう。
    この可愛らしい表情を知っているのは自分だけではないのだと。口に残る苦味が喉を焼くように主張する。我慢ならなかった。
    「……カブさん、味見させていただいても?」
    「もちろんだよ! アオキくんには、甘過ぎるかもしれないね!」
    快く差し出されたカップを無視し、その手の向こう、甘い珈琲を飲んだばかりの唇に口づける。少し開いたそこから舌を差し入れて、舌を絡めとって、味わった。
    (ああ、たしかに、あまい……)
    突然のことにぴくりと身体を震わせるも、ぎゅっと目を瞑って受け入れているのが、なんともいじらしい。視界の端で、彼の指先から力が抜けそうなのを捉え、そっと自分の手を重ねてカップを支えた。
    それさえも刺激として感じてしまう。唇を離してやれば、頬を上気させ息を乱しつつも、自分を咎めるでもなく切なげに見上げている。たまらない。
    そんな彼の姿は、間違いないなく自分だけのもの。自分だけが知っているカブだ。
    再び手に入れた優越感。自分はようやくこの暗い感情の正体が独占欲であると分かったのだった。

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