いつもは悩みを抱えても誰にも話さず一人で抱え込むことの多い優等生タイプの和泉一織。だがこの日は珍しく弱音を吐いてくれた。仕事を終えへとへとな身体でなんとか寮へたどり着き、のんびりくつろいでる五人のメンバー達。なお、彼の兄である和泉一織は現場帰りで偶然会ったRe:valeの百さんとグラスを酌み交わしてるだろう。リビングのテーブルに肘をつき、重々しい溜息を吐きだしながら紡がれた言葉。
「はぁ。兄さんはかわいい人だともちろん持っていると分かっていましたが、最近は大人の色気をほのかに醸し出したり、または内なるエネルギッシュさを出した愛らしい姿を披露してくれます。なんて素敵なことなんでしょう。色んな要素を加味した兄さんの姿を見るのは喜ばしいです、しかし同時に大きな不安に駆られます。兄さんの魅力に引き寄せられた変な虫…言い方を変えます、変な輩が付きまとわないか?と。弟として生を受けたからには、迫りくる魔の手から兄さんを守りたいと強く願っているんです。だがしかし、そのためには兄さんの最近の動向を全部把握したいと思ってます…」
「えっと…。つまりイチはなにが言いたいわけ?」
缶ビールを傾けながら、引きつりそうな口を頑張って動かした二階堂大和。他の人たちも興味深そうに耳を傾ける。長い前口上を述べた一織が最終的になんと言ってのけるのか?皆気になることは同じだった。メンバーからの温かい視線に見守られながら、大きく息を吸って吐いてをし、まっすぐ前を見据える。
「…ぜひ、みなさんからお聞きしたいんです。兄さんの最近の一押しな姿を。どんな姿の兄さんに魅力を感じたのか。それは私の知らない兄さんなのか。題して”和泉三月コレクション2020”です。私は兄さんの全てを知っておきたいんです…」
「なんっじゃそりゃ!!!」
「いおりんやべー」
「えっと、それって僕たちにはなんの得にもないよねって感じるの、僕だけかな?」
「Oh、イオリ…あなた疲れてるのよ。もう休んだ方がいいわ。ってどこかのアニメで聞いたことあるセリフを使う時が来ようとは」
「うわぁぁぁ!!疲れすぎて一織が壊れちゃったよ!どうしよう…えっとひとまず三月に連絡して帰ってきてもらう?」
阿鼻叫喚という文字が似合うぐらい騒がしくなったリビング。ただ一人。問題発言をかました当の本人はいたって冷静なままだった。
「待ってください。兄さんがいないタイミングを狙って皆さんに相談したのですから。本人をここに呼び戻すのはタブーです。メンバー内で最年少の私のわがまま、たまには聞いてくれますよね?年上の皆さん?」
「んー、俺が一番下だと思うんだけど…」
「四葉さん空気読んで下さい。いま年下の特権使って丸め込もう作戦決行してるんですから。王様プリン買ってあげるので協力してください」
「わーい!するする!」
甘い誘惑に簡単に釣られてしまった環。いつも以上に圧の強い一織の姿に果たして残りの四人は従ってくれるのか。