Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    koyubikitta

    @koyubikitta

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 44

    koyubikitta

    ☆quiet follow

    こわいめぐさく準備運動 暖気運転

    「俺だったら、とっとと子供作っちゃってたかな」
     そう言った巡が持っていたのは、色褪せた可愛らしい絵本で、タイトルには「シンデレラ」と書いてあった。舞奏社に落ちていた、誰かの忘れ物だ。佐久夜は絵本の愛らしさにそぐわないコメントに思わず顔をしかめた。巡は笑う。
    「いやー、違うよ? 王子様とシンデレラが運命だって分かりきってたら……って話! つま先や踵切るような人たちに彼女の靴履かせるくらいなら、逃げられる前に子供作っちゃうよ」
    「お前は自重を知らないのか? ……いや、知らなかったな。覚えろ」
     釈明が釈明の役割を果たせていない。佐久夜はさらに苦い顔をした。仮定の話としても軽薄すぎるそれを許容するわけには行かなかった。
    「うわ、不満そうな顔……佐久ちゃんはお堅いからなー。でもほら、なんか漫画みたいにさ、シンデレラ探してる最中の王子が舞踏会の夜に戻ったりしたらどう? 絶対に運命だって分かりきってて、絶対に逃げられちゃうって分かりきってる夜」
     なぜ巡はこんなにもシンデレラの話に執着しているのだろう。佐久夜は不思議に思った。いつもだったら『はいはい、お堅くてやだなー』なんて言ってさっさと終わっているような話題だ。
     佐久夜に、言わせたいのだろうか。運命を取り逃しかけた夜に、何をするのが最適解なのかを。佐久夜の正解を引きずり出したいのだろうか。
    「……俺だったら」
     口を開く。そうしないと終わらないのだろうから。佐久夜は巡の言いなりではないけれど、大抵のことは拒まずに請けてきた。
    「そんな不確実な手段は取らない。なんとかして素性を聞き出すか、靴など拾わずに追い続ける。一晩で子供ができる確率よりは高いだろう」
     佐久夜なりの偽らざる答えだった。一夜孕みは八百万たちの領分だ。人間が手を出そうとすべき場所ではないだろう。
     この回答で巡は満足だろうか、と様子を伺う。巡は相変わらず笑っていた。腹の底が見えない顔で笑っていた。
    「ばっかだなー、佐久ちゃんは」
     巡は何故か佐久夜へと近づく。手を伸ばして、佐久夜の腹に触れた。布の向こうにあるものを探るように、撫でる。
    「一晩って、ずっと起きてると結構長いんだよ」
     それくらい知っている、と佐久夜は言おうとして、何故か喉が詰まって言えなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏👏👏💖❤❤❤👏👏💖❤💴❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    さわら

    DOODLE貴方はさわらのアシュグレで『朝四時、ランデブー』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/587150

    当然のごとく140字を超える。付き合ってるアシュグレ
     はふ、と欠伸した。眠気で目をしょぼしょぼとさせながらミント味の歯磨き粉を歯ブラシに乗せ口に咥える。普段ならしゃっきりとさせてくれるような清涼感は今は眠気に勝てない。
     シャコシャコと音を立てつつ半分寝ているような緩慢な動きで磨いていると、扉の開く音がする。
     視線だけを動かせば、ぼやける視界に写ったのは同じく眠そうに大きく欠伸をする、ところどころ寝癖ではねた頭をした男の姿だ。視線に気づいたように、服の裾から腕を突っ込んでがりがりと腹を掻いていた男の瞳がこちらに向いて、呆れたような色になる。
    「テメェ、今何時だと思ってやがる」
    「…………四時、です」
     咎めるような声は普段よりも若干柔らかく聞こえるのは起き抜けでもあるからだろう。けれど、バツが悪いことには変わりない。
     明日はオフだからと少しだけ夜更しするつもりで始めたゲームに夢中になって、気がつけばふと視線を向けた時計に映し出されていた数字に驚いたものだ。流石に寝ようと思い、その前に歯を磨きに洗面所に来た。
     グレイとは正反対に、意外と規則正しい生活を送るアッシュは早朝トレーニングを欠かさない。いつもはもう少し遅い時間に活動をはじめ 1188

    Remma_KTG

    DOODLE診断メーカーで出たやつ書いてみた。

    蓮魔の長晋のBL本は
    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367
    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
    1132