社会的に死んじゃうからやめて!!社会人と学生間での恋は中々に都合が合わない。そんな日々の中。今度の休みはいかがなものか?とメッセージアプリでお伺いを立てれば、愛らしい猫のスタンプに一緒に過ごしたい!と秒での返信が帰ってきた。どう過ごすか?文字でのやりとりで、休みの前日にウツシの住まいに一緒に帰り、休みを恋人と楽しむ。ささやかではあるが、自分にとってはこれ以上ない幸せの確約。その日が来るのを今か今かと迎えた週末に甘やかな地獄を味わうとは思わなかった。
退勤の混雑があると言えど、鮨詰めになる事が珍しい家路までの路線。押し寄せる人の波から可愛い恋人を潰さないようにと、守りはするが、ぴたりと隙間なくくっついてしまう。不可抗力とはいえ、これはまずい。
「ごめんね。」
「いえ、満員電車ですから仕方ないです。それに…。ウツシさんだから平気です。」
二人きりであれば幸福であるはずの距離だが、今は緊張が走る。窮屈で我慢を強いてるはずなのに、健気さと自分への信頼に可愛いな…とウツシは思いつつも、内心は非常に危うい。下を向けば鼻先が頭に触れて鼻腔を擽り、車輌の揺れれば女性の柔い感触が伝わる。それらを意識しないようにあと何駅か?と小さな液晶パネルを凝視していると、もぞもぞと身動ぐ恋人が眉を八の字にして見上げていた。
「あ、あの…ウツシさん?」
「ナニ…カナ?マナデシサン…。」
自覚がありすぎるウツシは『頼むから今は何も言わないで!』と心の中で叫ぶが…。
「その…あたってるんですが…。」
顔を真っ赤にして目線をそらすその仕草が、尻すぼみに己の生理現象を申告する恥じらいが、無慈悲にウツシの理性を殴りつけてくる。
「……。」
「…おっきい」
これ以上何が言われたら非常によろしくないと思ったウツシは恋人の頭を自分の肩に押し付けた。