告白(後編)そして到着したのは蒼天街の人通りの少ない奥まった場所。少しの草木と、石造りの塀と手すりのある場所だ。すっかり日が暮れ、街灯の明かりがぼやけて優しい光を灯す。
蒼天街など人が居る場所は限られている。
ふと周りを見ると、浴場の煙がふわふわとまっていたり、雪が溶けずに残り、小さな雪だるまが作られていたりする。
「ここなら落ち着いて話ができるかな、さて、要件を聞かせてもらっても良いだろうか」
「……うん」
どうやって伝えれば良いんだったかな。
きっとアイメリクのことだから、甘くてロマンチックな言葉が好みだろうか。しかしそんな性格じゃないし今までも何度も逞しい姿を見せて来てしまった。
「あのですね、アイメリクのことが…」
その後の言葉が出てこない。
本当に、言ってしまって良いだろうか。
この想いを伝えたとして、断られたら…
今まで積み上げてきたものが無くなってしまうのではないか。好きだったこの国にも少しだけ足を運ぶことに躊躇いが生じるだろうだとか、アイメリクとは話せなくなってしまうんじゃないか…ネガティブな未来しか見えなく俯いていた。
踏ん切りのつかない私の頭上に影を作ったのはアイメリクだった。
「あ、」
「お手をどうぞ、」
差し出された手を見つめて、嫌じゃないかとか、これで合っているだろうか、と不安になりながらそっと手を重ねると優しく握られて甲にちゅ、と温かく柔らかい唇を置かれてキスされる。
「すまない、私は魔法が使えないから、君の好きな花さえもすぐに出すことはできないが、きっと君なら受け止めてくれるだろうと」
「……」
「……恥ずかしながら、今年甲斐も無く緊張している」
「えっ、アイメリクが…?」
アイメリクは頬を少しだけ赤くし、困ったように顔を傾けて微笑んでいた。
「その……リコ、が可愛いくてな」
初めて名前で呼んでくれた。恥ずかしくて顔を真っ赤にした。
地に膝をついて目を合わせてくれる。
「好きだ」
「っ!」
「こんな伝え方、ひねりも無く格好悪いな、先にきっかけを作ってくれたのは君だし」
伏せた顔はバツが悪そうにそっぽを向いて己の頭を触っていた。
蒼天街の街路灯の光が、うっすらと彼の顔を照らす。
「そんな事ないよ」
「ん?」
「格好、悪くないよ」
その顔は茹蛸のように真っ赤になっていた。
イシュガルドの議長が嬉しそうに困っている顔をしていると思うと自分にしか見せない特別な顔なんだなと思うとなんだか嬉しくてアイメリクの腰目がけて抱きついた。