芽吹いた心は春を待つエリチャンのアドラーの返信速度にアドラーに対する心の中のぐちゃぐちゃが更に広がる。
別にコメントをつけなくともアドラーは俺を責めたりはしないけれど、こんな時まで仲間外れにするのもなんだか悪い気がして打っては消しの30分越え。
フェイスくんに仲良くなったねなんてからかわれたりしたから気持ちが変にぐらついていたのかもしれない。
「返すのが、早いんだよ…。」
待ってたって言われたみたいだった。
誕生日のお祝いなんて沢山言われ慣れてるだろうに送るか分からない俺の言葉を嬉しそうに受け取ってその場で返したに違いない。
「お前は色んな人に慕われて、色々持っていて…それなのにどうしてこんな俺にそんな優しい言葉を返せるんだ…。」
手元にある鉢植えの鳳仙花はアドラーの誕生花で、でも意味はどちらかと言えば今の俺のように感じる。
「『私に触れないで』『短気』、それから…。」
諦めともう走り疲れたかのような感情が俺の心をぎゅっと締め上げた。
可愛らしい鳳仙花の花の下で結実する緑をそっと押せば、パチンとはじけて種がとぶ。
「こんな簡単に出来たらいいのに、人間て複雑だな。」
花は変わらずそこにある。
俺はその鉢のありったけの実を優しくはじいてそのまま花が崩れないように引き寄せた。
「『心を開く』のはまだもう少し時間が欲しいな…。」
後日誕生花だってこの花の種くらいはくれてやろう。
育てやすい花だ。そして話題に花が咲いたらいつかは。
「お互い笑顔で話せたら、なんて。」
季節は巡る。融解の春はいつかきっと訪れると鳳仙花はその花を僅かな風に揺らした。