じりじりじりと蝉が鳴いている。日照りによって肌が焼かれるのを感じるのと同時に、暑さで働かなくなった頭の中に蝉の声がじりじりじりと反響する。
夏だ。夏がこの身を頭から食い尽くそうとしている。そう感じるくらいには強烈な暑さだった。
盆休みの間、白石は母に付き添い泊まりがけで京都の親戚の元に訪れていた。2日ほど前に母の叔父、すなわち白石の大叔父が亡くなったそうで、彼に以前とても世話になったらしい母はその葬式に参列した後、盆もそこで過ごすことになっている。白石はその付き添いだ。
滞在するのは大叔父とその息子夫婦(白石の従兄弟叔父にあたる)が住んでいた平屋で、京都の山間部に位置している。母の話によると白石は8歳の夏休みに一度だけそこに遊びに行ったことがあるそうだが、なぜだかちっとも記憶になかった。
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