君はペテン師⑥ 夜風が四人の喧騒の中を通り過ぎていく。ビリーが訪れた時とは、何もかもが違う。ロックとボックスに悲哀の色はなく、来客を迎える庭園は夜空の光を受けて輝き、無言の館も俄か活気づいたようであった。やはりここは、「カインの」領域なのだと、ビリーは思う。カインの身につけている紋章には「Fait lux——光あれ——」と刻まれているが、この組織にとってはカインが光そのものだろう。そこが「危ういな」と、ビリーは思う。カインの実力は疑っていないが、ボックスは未だ成長過程にあり、腹心としてカインを全面的に支えるには時間を要するであろう。組織としても若いこのファミリーは、カインの背負うものが余りにも大き過ぎる。それで潰れるような脆弱な男ではないが、疲労が溜まれば同じことが起きかねない。
6752