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    sena

    絵心が壊滅的なのでスクショくらいしかない。小説しか書けないよ!
    pixiv→https://www.pixiv.net/users/63156921

    アイコンはいらすと.や様よりお借りしました

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    POIPOI 18

    sena

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    なんか短い話を書きたくて、ちょっと書いてみた。
    兄上を膝枕しながら、ゆらゆら団扇で扇いであげる千くんがテーマ。なんか最後が不穏なのは性癖です。

    #杏千
    apricotChien
    #小説にも満たないなにか
    somethingLessThanANovel.

    夏の嘘つき近年稀にみる猛暑に見舞われた、七月某日。打ち水など一瞬で干上がりそうな日差しの中、俺は”特等席”で涼をとっていた。

    「お隣の斉藤さんも、先日倒れたそうで」

    眩しいほどの日差しが照り付ける庭の、縁側にて。ゆるりと団扇を扇ぐ千寿郎が、兄上も気を付けてくださいね、なんて気遣わしげに告げる。その言葉は、そのままお前に返そう。ついそんな言葉が口をつきかけたが、何とか踏みとどまる。弟の膝を枕にしている身分では、どうも説得力に欠けるのだ。結局、兄の威厳を取り戻す間もなく、千寿郎は小さな子どもに言い聞かせるように笑った。

    「それにしても、外での鍛錬も程々にして下さいね」
    「…うむ」
    「兄上、暑いの苦手なんですから」

    そうでしょう?と同意を求める声に、曖昧に頷く。すると機嫌をよくした千寿郎が、団扇を扇ぐ手を止めないまま、俺の額に滲む汗を拭ってくれる。いつから用意していたのか、水を含んだ手拭いはひんやりと冷たくて。その気持ちよさに、俺は目を閉じた。

    (――俺は暑さが苦手、か)

    一体、誰が言い出したのやら。そうだと疑わない弟の口ぶりに、思わず頬が緩んだ。いつの頃からか、夏になると弟は声高に主張する。兄上は暑さに弱いのだから、と。最初は幼子の冗談だと思っていたが、どうも違うらしい。夏が近付く度に俺の身を案じ、頼むから涼をとってくれと世話を焼く。今日も何気なく庭で鍛錬をしようと思っただけなのだが。耳聡く素振りの音を聞きつけ、台所から飛んできたらしい。

    俺が言うのもなんだが、少し過保護だ。そう思いつつも、何も言わない。暑さに弱いのは父上で、昔よく母に団扇で扇がれていた、だとか。むしろ俺は暑さには強い方だ、とか。そんな小さな嘘を、俺は未だに隠し通していた。

    「…何か、召し上がりますか?」

    俺の汗を拭っていた手が、ぴたりと止まる。それにつられて瞼を上げれば、頭上では弟が気遣わしげに俺の顔を見つめていた。どうやら、要らぬ心配を掛けたらしい。俺の世話を焼きたがる弟を見るのは好ましいが、過度な心配は本心ではない。ならばいっそ種明かしでも、なんて案は瞬時に消え、ふと弟の唇に目が留まる。何か、食べるもの。食べたいもの。それは、今目の前にあった。

    「そうだ!お隣から西瓜を、」
    「千寿郎」

    名案でも思い付いたのか、ふわりと笑った千寿郎が団扇の手を止める。当然先程までの風は止み、本来の蒸し暑さが戻ってくる。そしてそのまま立ち上がろうとした弟を、俺は団扇を持つ手ごと握りしめた。

    「兄上?」

    突然のことに目を瞬かせた弟が、不思議そうに首を傾げる。冷えてますよ、と言わんばかりに指を差した先は、台所だろうか。弟には悪いが、今は西瓜なんて目じゃない。もっとうまいものが食べたい。そう願って、金朱の瞳をじっと見つめる。俺の意図がつかめずキョトンとした瞳が、次第に見開かれていく。まさか、いやそんな筈は。根が素直な弟の動揺は、手に取るように分かる。それに追い打ちをかける様に見つめ続ければ、柔さが残る頬が朱に染まっていく。とどめに空いた手も絡めとってやれば、逃げ場をなくした千寿郎は真っ赤な顔のまま「嘘ですよね?」と項垂れた。

    「…余計に、暑くなりますよ」
    「構うものか」

    もしかしたら、僕の勘違いかも。そんな淡い願いを一笑に付して、そのまま唇を迎えに行く。その合間にも「外は暑いからだめ」とか「水分が先」なんて声が漏れ聞こえたが、その言葉ごと食べてしまった。

    (――あぁ、今年も言えなかった)

    今年の夏も、きっと嘘をつき続ける。そんな予感に、俺はうっそり微笑んだ。

    おしまい
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    sena

    DONE呉秋さんの素敵な結婚❤杏千ちゃん絵に悶絶し、意味の分からない話を書いてしまった😄(何故なのか)

    とりあえず勢いで書いたので、支部に上げる頃にはもうちょい加筆修正(+設定)したい。
    何がどうなったか不明ですが、杏千(+愈+珠)という謎メンバーです。多分杏千ちゃんパートより二人のパートの方が長い。正直タイトルは思いつかなかったのですが、愛だけは込めました!
    Look at me!赤と白のタキシードに身を包み、鏡の前に立ってみる。…やっぱり、こっちの方がいいかな。元々宛がわれていた白のネクタイを外し、候補の一つとして用意されていた蝶ネクタイに手を伸ばした。

    「…うん、これにしよう」

    白も悪くないけど、この紅白のタキシードには赤い蝶ネクタイの方が合っている気がする。初めて身に付ける蝶ネクタイに悪戦苦闘しながらも、何とか結び終えたリボンは少し不格好だ。…人のネクタイを結ぶのは得意なんだけどな。若干歪んだリボンを直しながら、毎朝の光景を思い出して、僕は鏡越しに笑ってしまった。

    ――さて、話は数十分前に遡る。
    折角の休日だからとドライブに出掛けた僕たち兄弟は、都心から少し離れたこの場所を訪れていた。広大な土地に慎ましく建てられた建物は、兄曰く『写真館』らしい。そして殆ど説明のないまま車は止められ、僕が状況を飲み込めずにぽかんと呆ける中、兄が笑ってシートベルトを外してくれた。ほら、と優しく手を伸ばされ、掌にそっと手を重ねる。幼い頃から何度も繰り返された、僕たちの儀式みたいなもの。キリッと上がった眉と目尻が少しだけ下がって、重ねた掌を柔く握られる。そしてそのまま立たせてもらい、僕たちは少し離れた場所にある写真館へと歩き出した。
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    mfmf_kmt

    DONE杏千は『どちらかが相手を拘束しないと出られない部屋』に入ってしまいました。60分以内に実行してください。

    過去作品だけど、ポイピクでテキスト(小説)も載せられるのに気付いたので、試しに。
    「兄上…ここは?」

    「うむ…鬼の血鬼術…の中の様だな!!」

    珍しく非番の杏寿郎は弟の千寿郎を連れ、隊士内で話題となっていたうどん屋へ行く途中、街中であるにも関わらず鬼と遭遇してしまい、直ぐ様首を斬り落としたものの鬼の最期の力で血鬼術に閉じ込められてしまった

    「柱として、兄として、弟を巻き込むとは、穴があったら入りたい!!」

    「兄上、千は大丈夫ですので、何もそこまで仰らなくても…。それにしても奇妙な血鬼術ですね」

    「あぁ、俺もこの様なのは初めて経験した。結界…と言う奴か。成程な、この力が有れば街中に隠れてたとしても見付けることは難しい!!」

    一見しただけで冷静に状況分析をする杏寿郎を見て「流石は兄上です」と見蕩れる千寿郎。

    「扉も…窓も見当たらぬか。千寿郎、少し下がってなさい」

    「はい!」

    兄に言われ部屋の端まで行く千寿郎。それを見て己の日輪刀を抜き、近くの壁へ技を放つも傷ひとつ付かない。

    「…ふぅ、無理だな!」

    「兄上、矢張りあの壁に書かれてるような事をしないと出れないのでしょうか…」

    ちらりと天井近くに掲げられてる【どちらかが相手を拘束しないと出られない部屋】 951

    sena

    DONE支部の下書きサルベージ、第三弾。
    未完成を加筆修正したので、最初と最後で少し雰囲気が違うかも。最終決戦後の柱(さねみん・ぎゆゆさん・音兄貴)と千くんの交流のワンシーンです。音兄貴は今回は不在。原作軸なので、兄上はいません。が、登場してます。捏造しかない。さねみん視点で、口調はずっと迷子です。とりあえず語尾に『ェ』か『ァ』を付けとけばさねみんになると思ってる人が書きました。寛大な心でお願いします!!
    黎明の先に※最終決戦後の千くん、不死川さん、冨岡さん(+宇髄さん)


    三月に一度の恒例行事。
    生き残った者たちで集まり、互いの近況と昔話をつまみに酒を呑む。かつての同僚二人と、同僚の弟と。奇妙な四角関係は意外と続くもので、気付けば季節は二巡目に差し掛かっていた。

    「おーい、邪魔すんぜェ」

    だだっ広い屋敷の玄関先、昔ながらの扉に向かって声を掛ける。
    もうかれこれ五度目の会合になるが、いつだってこの屋敷が集合場所になっていた。別に他所でも構いやしないが、目の届かないところで弟を連れ出すと煩そうなやつがいるので、毎回満場一致でここになるのだ。脳裏に浮かんだ快活な笑顔に『お前だよ、お前』と突っ込みを入れ、目の前の扉が開くのを待つ。が、いつまで経っても扉は開かない。時間は間違えてねェ筈…と、もう一度声を掛けようとしたその時。音もなく扉が開かれ、続けて現れた男に俺は顔を引き攣らせた。
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