ごめんね。いいよ。が、できるまで。 口をつけようとしたカップの縁に目を落とし、
「あっ、欠けてる」
飲むのをやめた監督生が、カリムと俺の手元を覗きこむ。
「おふたりのティーカップは大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないぜ。大ぶりでいいな、この茶器」
「本当か? よく見せてみろ」
息つく間もなく唇をつけようするカリムの手から奪ったカップにも、俺のカップにも傷などついていないことを確かめて、問題ない、と頷けば、
「ちょっと、自分の取り替えてきますね」
欠けたカップを手に談話室を出ていった。
家主がソファから立ち上がっても、扉を開けて閉じても、不快な音など聞こえない。
カリムと俺とは目を交わし、
「よかったなあ!」
「……よかったな」
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