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    mimi_soileh

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    mimi_soileh

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    ベスティワンドロ!
    お題:『勝負』
    フェイビリです!
    おおよそ1h

    #フェイビリ
    phobility

    草木も眠る丑三つ時、にはまだ少し早いぐらいの時間。キースが潜入捜査に駆り出されて、後を追うようにやる気満々のジュニアが出動して数日。最近は気兼ねなくクラブ通いを続けていたフェイスだが、今夜はたまには誰もいない静かな共有スペースでまったり過ごすのもいいかな、と夜遊びをだいぶ早めに切り上げてきたところだ。
    「稲妻ボーイとキースパイセンがいないなら、二人でゆっくり映画でも見ちゃう? コメディ? ホラー? それともラブロマンス?」
     タワーのエントランスで鉢合わせたビリーが、なぜかウエストの共有スペースまでついてきて、当たり前のようにくつろいでいる。面倒だし、気が済むまで放っておこうと思ったが、ジュニアが買い置きしていた冷凍食品を物色し始めたところで、これは長居する気だな、と諦めて口を開いた。
    「映画は見ないよ」
    「それならオイラとおしゃべりしよ? 深夜のボーイズトーク!」
    「面倒だからパス」
    「も~!! 一人ボッチのDJがそろそろ寂しがってるトコロかな? って俺っちなりに気をつかってあげたのにぃ!」
    「今パトロールの担当増やされて疲れてるんだよね。ほんと参っちゃう」
     むっとした顔をしたビリーは――と言ってもいつも通りゴーグルをしているせいで目元が分からず、への字になった口元だけで判断したにすぎないが――冷蔵庫からくすねたおそらくジュニアの持ち物だろうコーラを手に、どっかりとフェイスの隣に腰を下ろした。ぼすんとビリーの体重分ソファのスプリングが跳ねる。
    「あ、栓抜き忘れちゃった」
    「かして」
     あちゃ、と顔をしかめて冷蔵庫まで栓抜きを取りに戻ろうと立ち上がったビリーの手から、よく冷えた瓶のコーラを奪う。表面は結露でじっとりと濡れていて、傾けると中の液体が夜の色をうつしたみたいに暗かった。
     
     首を傾げてこちらを見る蛍光色のゴーグルが、そこには感情は宿っていないはずなのにどこか怪訝そうな視線を持っている気がして少し笑った。
     
     ポケット中から一枚、ゴールデン・ダラーを取り出すと、抑えた指と蓋の間に差し込んで下の方向へ押し込んだ。ぽん、とかろやかな音がして、続いてしゅわしゅわの炭酸が弾ける。まだポカンとしているビリーの前に差し出せば、パッと花でも咲いたように表情が明るくなった。といっても、やっぱり視線はどこを向いているのかわからないんだけど。
    「マジックみたい! さっすがDJ~! 僕ちんにも教えて!」
    「クラブであけられなくて困ってる子、よくいるからね。ビリーなら練習しなくてもすぐできると思うよ」
    「やっぱコインはキラキラしてていいネ。マネー! ってカンジ」
     さっきまでのちょっと拗ねたような態度はどこへやら、すっかり機嫌を取り戻したビリーは、せっかく開けたコーラはそっちのけでコインにご執心だ。
     
     指の上を器用にコロコロと、コインが転がっていく。人差し指から、中指へ、そして薬指。小指までたどり着くと、小指の先でコインがくるくる回る。コインロール、っていうんだっけ。まるで生き物みたいに右に左に、天井に向かって飛んだと思えばパッと消えて、消えたコインがフェイスの制服の襟から現れる。
    「taーda! どう? オイラのマジック!」
     首元に伸ばされた手を捕まえて、ゆっくり笑う。目まぐるしく変わるビリーの表情を見ていたら、悪戯心がむくむくと湧いてしまった。
    「ね、勝負しない?」
    「勝負?」
    「勝ったらなーんでも言うこと聞いてあげる。俺のスケジュールでも情報でもなんでも。そのかわり、負けたらなにか一つ俺にちょうだい」
    「俺っちに〝なんでも〟なんていい度胸~♪」
    「ビリーって意外と堅実だから、〝なんでも〟ぐらい言わなきゃノッて来ないでしょ?」
     にっ、と笑ったビリーは、上機嫌そうに手のひらを叩いた。フェイスがビリーの指先と一緒に盗んだはずのコインは、また手袋をはめたビリーの指の間をくるくる回って移動している。
    「コイントスで一回勝負、でどう?」
    「gocha! DJがコイン投げていいヨ!」
    「いいの? 俺、イカサマしちゃうかも」
    「DJがこういう勝負ゴトでイカサマしないって、オイラのデータがちゃ~んと知ってマス」
    「アハ、信頼されてて嬉しいよ」
     真っ直ぐな放物線を描いてころんとフェイスの手元に転がり込む。ずっと触っていたからか、ビリーの体温をうつしてほんのりと温かい。
     もうすっかり忘れ去られてしまったコーラも、気が抜けてぬるくなっている頃だろう。
     親指の上に一ドル硬貨を置いて、呼吸を整える。そっとビリーの方を盗み見る。ワクワクしているような、楽しげな空気感がいやでも伝わってきて、思わずくすりと笑ってしまう。
    「いくよ」
     ピン、と指先で弾いて、綺麗に何度も回転しながら天井に向かって飛んでいく。蛍光灯に照らされて、コインの金がキラキラ光る。つられるように上を向いたゴーグル越しの紺碧も、同じようにキラキラしているんだろうか。そう思うとほんの少しだけ、その分厚いレンズの向こう側がどんな色をしているのか覗いてみたくなった。
     左手の甲で回転が緩んだコインを受け止めて、いたずらっ子のようにビリーを盗み見る。
    「裏? 表?」
    「うーん、オモテ!」
    「じゃ、俺が裏ね」
     フェイスにとって、ビリーの表情なんてどうでもいいことだった。ビリーが自分の前でしかしない表情、自分の前ではしない表情、誰の前でもしない表情。彼が完璧に作り上げたビリー・ワイズの中に、ほんの少し混じる、嘘の表情。それを暴くことに興味も関心もなかった。
     けど、なんとなく、だけど。
    「あ――! ウラ!」
    「俺の勝ち。だからイカサマするかもって言ったでしょ」
     本気で悔しがって、フェイスにからかわれて怒る、この表情だけは、作り物でも嘘でもなんでもないような気がしたから。
    「じゃ、約束ね。ビリーの何もらっちゃおっかな」
    「うう、マネーは勘弁……」
    「そんなのいらないよ」
     ふっと真面目な顔をして、首の後ろに手を回す。目を細めてうっとりと微笑めば、たいていの女の子は喜んでくれるんだけどな。ビリーはなに? なに? と戯けたように笑いながら、フェイスの顔が近づいてくるのをほんの悪戯の延長としか思っていないみたいだ。
    「え?」
     もう少しで、吐息がぶつかる。うっすらとビリーのゴーグルの向こう側に青の色彩が見えて、それが戸惑うように揺れていた。
    「俺が欲しいのは」
     からん、フェイスの指の隙間からこぼれたコインが、かろやかな金属音を立てて床に転がる。
     それが少しずつ遠ざかっていくのを聞きながら、もったいつけるように唇を尖らせる。あとほんの数ミリ、あと、ほんの一瞬で奪えてしまう。
    「ッ……」
     ちゅ、と可愛らしいリップ音を立ててキスが落とされたのは、ビリーの額だった。なにが起こったのかわからないみたいにしばらくキョロキョロしていたビリーは、からかわれたことに気づいてばっと立ち上がった。
    「あれ、もしかして期待した?」
    「ッ~~DJのバカ!」
    「もう一勝負する? 俺はいいよ」
     たまには運任せも悪くないかな。ビリーの機嫌を取るために手渡したコーラは、やっぱり気が抜けてぬるかった。
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    mimi_soileh

    DONE第二回ワンドロ「同級生」「HELIOS∞CHANNEL」木漏れ日の中で、黒い毛先がかすかに揺れる。夏よりも少し日差しが弱まってほのかにその頬を撫でていく。緑から黄色や赤に色づきはじめた葉の数枚がはらはらと落ちて、なめらかな頬を撫でていく。むずかるようによく整った眉を寄せたが、彼がまどろみから覚めることはなかった。
    『あれ、フェイスくんじゃない?』
    『えっ寝てるのかな? かわいー……』
     遠巻きに見ている女の子たちは顔を赤らめてヒソヒソとこちらの様子を伺っているが、近寄ってくるつもりはないらしい。今日の授業はもう終わりの時間。先生の都合で午後の授業が無しになったからだ。いくつかの宿題を取り残したまま、お気に入りの木の下で昼寝に耽る彼は、さながら眠れる森のイケメン……王子様、と言っても過言ではない。
    「みんなの王子サマの貴重な寝顔、ゲット出来ちゃうのはオイラの特権……⭐︎」
     フェイスが寄りかかる木の幹のほんの隣に腰掛けて、スマホのカメラを構える。画面の中では背景ごと切り取られた男前の寝顔がしっかりと収まっていて、こみあげるにやけを抑えてシャッターを押した。角度を調節して、数枚。きっと校内SNSに投稿すれば大バズり間違いなしだ。
     
     先ほどか 2297

    mimi_soileh

    DONEベスティワンドロ!
    お題:『勝負』
    フェイビリです!
    おおよそ1h
    草木も眠る丑三つ時、にはまだ少し早いぐらいの時間。キースが潜入捜査に駆り出されて、後を追うようにやる気満々のジュニアが出動して数日。最近は気兼ねなくクラブ通いを続けていたフェイスだが、今夜はたまには誰もいない静かな共有スペースでまったり過ごすのもいいかな、と夜遊びをだいぶ早めに切り上げてきたところだ。
    「稲妻ボーイとキースパイセンがいないなら、二人でゆっくり映画でも見ちゃう? コメディ? ホラー? それともラブロマンス?」
     タワーのエントランスで鉢合わせたビリーが、なぜかウエストの共有スペースまでついてきて、当たり前のようにくつろいでいる。面倒だし、気が済むまで放っておこうと思ったが、ジュニアが買い置きしていた冷凍食品を物色し始めたところで、これは長居する気だな、と諦めて口を開いた。
    「映画は見ないよ」
    「それならオイラとおしゃべりしよ? 深夜のボーイズトーク!」
    「面倒だからパス」
    「も~!! 一人ボッチのDJがそろそろ寂しがってるトコロかな? って俺っちなりに気をつかってあげたのにぃ!」
    「今パトロールの担当増やされて疲れてるんだよね。ほんと参っちゃう」
     むっとした顔をしたビリ 2957

    mimi_soileh

    DONEフェイス×彼女です。
    表記をどうすればいいのか迷いますが夢というよりはカップリング(NL)の気持ちで書いてます。
    フェイスととある彼女の朝の話
    なめらかな白い背中をなぞる。やわらかくて、触れると温かくて、ウエストは細いのに腰のあたりはふっくらと肉のついた、まるい曲線が美しい背中だ。反応が返ってこないのがつまらなくて、まだ寝起きでぼんやりとする頭を抱えたまま、うなじにキスをする。そのまま背骨をなぞるように、白い背中にキスを降らせる。ちゅ、ちゅ、と戯れみたいな甘い音に、少しずつ自分の頭が覚醒してくるのがわかった。

    彼女の腰に手を回す。すべやかな肌は気持ちがいい。乳白色のカーテンが通す光は優しく、けれど二人の間のあまやかな空気を包むには無粋だった。

    「寝ぼけてるの?」

    鈴の鳴るような声だった。彼女はこんな声をしていたっけ。フェイスはむずがるように「んー?」と声をこぼして、その耳をやわく食んだ。ふふ、と小鳥の鳴くような笑い声。

    「朝ごはんいる? あ、もうこんな時間」

    ちらりと彼女の視線が、白い充電コードに繋がれたままになっているスマホの画面に注がれた。7:12。ブルーライトを放つ白い液晶は、朝の気怠いまどろみの終わりを告げるには十分すぎる。

    「もうちょっとこうしてようよ」

    身体を起こしてベッドに腰掛けたまま、栗色の髪を束 1283

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    れんこん

    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味
    目の前にひょこひょこと動く、先日見かけた忌々しいうさ耳。
    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591