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    newbohyo

    @newbohyo
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    お題ガチャフェルヒュー
    どちらかが相手の好きな人を当てないと出られない部屋

    「どちらかが相手の好きな人を当てないと出られない部屋」

    フェルディナントは首を後ろに向けながら白い壁にでかでかと掲げられた文言を読むと、立ち上がっていつも腰に帯びている剣で壁を斬った。
    紙のようにスッパリと切れた切り口はみるみるうちに塞がり、椅子に座ったヒューベルトが切り口を保持しようと援護して狭間に放ったスライムごと飲み込んで、元通りになってしまった。

    「な、な」
    「おやまぁ」

    あんぐりと口を開けるフェルディナントと対照的に、顎に手を当ててつまらなそうにしているヒューベルト。フェルディナントは焦りのあまり、普段は滅多にしない乱暴な仕草で音を立てて机を叩いた。

    「君、冷静すぎやしないかい!?」
    「貴殿が慌てすぎなのですよ。紅茶、出過ぎてしまいますよ」
     
    ヒューベルトが手で示したのは、他ならぬヒューベルトが淹れてくれた東方の着香茶だ。

    「……それもそうだね。君の厚意を無碍にするのも忍びない」 

    フェルディナントは深呼吸をしてから、努めて優雅に椅子に座り直す。この状況で動転する気を落ち着かせるためにも、フェルディナントはカップに口をつけた。
    二人がこの妙な白く狭い部屋に転移したのは、定期的に開かれる二人きりの茶会の最中だった。テーブルセットごと移動したため、テーブルと椅子と茶菓子とティーセットとテフはあるが、それ以外は何もない。
    戦場暮らしが長いので排泄の場があたりに無いことには慣れているが、水と食料は今あるものだけ。紅茶を置いて彼は言った。

    「だが……長引くと拙かろうな」

    そう考えたのは向かい合うヒューベルトも同じで、フェルディナントに淹れられたテフを一口飲むと、自分の推論を提示した。

    「闇に蠢く者共による魔術でしょうか。現世から隔絶された闇の世――とソロンは呼んでいましたが、あれに類するものだとすれば、攻撃が効かなくても無理はありません。しかしタイミングや場所が妙ですな」
    「そもそも彼らがこんな生温くて人をおちょくったことをするかね?」
    「ともかく壁に書かれたことを試すしか無いでしょう。では私から行きますよ」

    フェルディナントはえ、と口に出した。
    待て、待て、待ち給え。
    私はまだ自分の口から君に愛していると伝えていないのに――!

    「エーデルガルト陛下」
    「………………………………」

    当然壁は微動だにしなかった。

    「おかしいですね」
    「おかしくないよ」

    フェルディナントは肩を落として唸る。


    「君、なんでまた私が陛下を好きだと思ったんだい?」
    「何故って……」

    ヒューベルトは何を今更、と言わんばかりの探るような目つきでフェルディナントを見つめ、それから口を手で抑えて驚愕の表情を浮かべた。

    「――陛下が好きじゃないのに、陛下のもとについたのですか!? 何故ですフェルディナント殿……!? 私は、貴殿のことを陛下と志をともにしてくれるお方だと信じていたのに!!」
    「いやあの、もちろん私も陛下を尊敬しているよ。しかしこの好きはなあ……多分、もっと熱い感情を指しているということではないかな? うん」

    フェルディナントはどうしようもないやるせなさに長い髪をかき上げる。
    ……何故だ?
    日に何度も茶会をして、抱擁をして、贈り物をして、挙げ句『意中の女性』と言い切っている。自分としては不本意だが当然ヒューベルトの口から出るのは自分の名であると思ったからこそ焦っていたのに、何故そこで陛下が出てくる……?
    元の世界に戻れたら手加減なしに詰め寄るしかあるまいな、などと初心な意中の相手には酷なことをフェルディナントが考えているとは露も知らないヒューベルトは、不承不承の体でフェルディナントの意見に頷いた。

    「……まあ良いでしょう。次はフェルディナント殿の番ですよ」
    「ハッ、そんなの決まっている。ヒューベルトが好きな人間はもちろん」

    フェルディナントはもちろん、意気揚々と『フェルディナント=フォン=エーギル』と自分の名を名乗ろうとした――
    したのだが。

    「………………え、エーデル、ガル、ト……?」

    ヒューベルトに自分の気持ちが伝わっていないという現実に、とりあえず初手はヒューベルトと同じことを言っておこうか、と日和ったものの、

    「いいいいい今のナシ、今のナシだ!」

    即座に後悔した。
    よく考えれば明らかに日和った選択では無かった。自分のエーデルガルトへの好きとヒューベルトのエーデルガルトへの好きは密度が違い過ぎる。壁の判定基準が分からないままだから、これで開いてしまう可能性は十二分にあった。
    どうか開かないでくれ、とフェルディナントは願うが、壁は強い輝きを放ちだし――

    「……やはりこの壁、判定基準がおかしくありませんか?」

    輝いただけで特に何も起こらなかった。

    「私が陛下を好いていないわけが、」
    「うおおおおおおっ! シャッッッッッッッッッ!!!!!!!」
    「ひっ……」
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