Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    10ri29tabetai

    SSいろいろ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 31

    10ri29tabetai

    ☆quiet follow

    ヴィミゼ(+くらい) /TOC

    #ヴィミゼ
    vimisse

    最低、と罵られることには慣れていたし、それが自分のアイデンティティになっていたことはおそらく事実だと思った。いつものやりとり。くだらない喧嘩。逸れていく話題の数々。ヴィシャスにとって意味のないやりとりはミゼラにしてみれば憎々しいものなのだろう。二言目には殺すわよ、と物騒な言葉を向けられる。それでも、ヴィシャスは楽しそうに笑う。

    だから、これもちょっとした冗談のつもりだったのだ。

    肩でも揉むか、と冗談混じりの言葉はにべもなく払われた。未成熟な女の体になど興味はなくーー成人してようが興味がない女の体に触れたいと思う情欲を持ち合わせてはいないけれどーーそれはコミュニケーション然とした言葉のやりとりだけのつもりだった。
    触れてしまったのは本当に事故としか言いようがなく、たまたま庇うような形になってしまっただけのこと。後衛から術と銃で撹乱していた二人を狙った攻撃に、ミゼラの防御態勢が間に合わなかった。
    一行で唯一の回復術を持っているミゼラを負傷させるわけにはいかなかった。蹴り飛ばすことも考えたがそれよりも腕の方が自由が効く。細い肩を抱き寄せて覆い被さり、投擲された武器を銃で跳ね返す。バァン、と派手な音ともに攻撃は霧散する。口笛一つを軽快に吹きながら、攻撃してきた魔物に銃弾を打ち込めば、あっけない悲鳴とともに撃ち落とされた。
    大丈夫?!と駆け寄ってきたカナタとイージス、ユナをヴィシャスは笑い飛ばす。撃ち落とされたのばワイバーンの亜種のような鳥のような魔物だ。毒は無さそうな色味をしているから、食糧になりそうだった。
    「おい鳥肉だぞ」
    ケラケラと笑いながらヴィシャスはしゃがみ込んで地面に座っているミゼラを覗き込む。先程の咄嗟の攻撃から身を守るために頭を押さえたらしい。震えながら小さな体をさらに縮こませているミゼラにヴィシャスはニタニタと近づく。
    貸しを作ってやったのだ、どうやってこれを弄ろうか、ということが頭の中を巡っていた。
    だが、反応はない。
    鳥肉という単語にも、ヴィシャスに庇われたということにもなんの反応も示さなかった。
    そこから、それが異常であると気づいたのはカナタだ。ミゼラ、と心配そうに出した声。
    「……や、めて……触らないで…」
    ヴィシャスに庇われたミゼラはカタカタと震えながら華奢なその身を振るわせて、来ないで、と、か細い声でつぶやいていた。


    慰み物にされる商品にしてはあまりにも弱々しすぎやしないだろうか。気丈にヴィシャスをはねつけたミゼラの目に浮かんでいたのは明らかな恐怖だった。
    ヴィシャスの手がミゼラの肩に触れた瞬間、彼女は思い出したのだろう。この世界で自分が着飾らせられた理由。あどけなさの残る表情の中に潜んだ昏い闇。カナタに笑いかけられて微笑む少女が負うにしてはあまりに生々しい現実だ。
    「……どうでもいいけどな」
    しかしヴィシャスは極悪人であって、咎我鬼だ。自分の欲望のままに世界を蹂躙している身からしたら、慰め物だろうが売春婦だろうが同情や憐憫を向けるような身分でもない。そもそも、ミゼラ自身もそんなことに対してヴィシャスから同情などされたくもないだろう。
    あんな放火魔女を慰み物にしようとした男がいたとは驚きだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    10ri29tabetai

    MAIKINGヴィミゼ(+くらい) /TOC最低、と罵られることには慣れていたし、それが自分のアイデンティティになっていたことはおそらく事実だと思った。いつものやりとり。くだらない喧嘩。逸れていく話題の数々。ヴィシャスにとって意味のないやりとりはミゼラにしてみれば憎々しいものなのだろう。二言目には殺すわよ、と物騒な言葉を向けられる。それでも、ヴィシャスは楽しそうに笑う。

    だから、これもちょっとした冗談のつもりだったのだ。

    肩でも揉むか、と冗談混じりの言葉はにべもなく払われた。未成熟な女の体になど興味はなくーー成人してようが興味がない女の体に触れたいと思う情欲を持ち合わせてはいないけれどーーそれはコミュニケーション然とした言葉のやりとりだけのつもりだった。
    触れてしまったのは本当に事故としか言いようがなく、たまたま庇うような形になってしまっただけのこと。後衛から術と銃で撹乱していた二人を狙った攻撃に、ミゼラの防御態勢が間に合わなかった。
    一行で唯一の回復術を持っているミゼラを負傷させるわけにはいかなかった。蹴り飛ばすことも考えたがそれよりも腕の方が自由が効く。細い肩を抱き寄せて覆い被さり、投擲された武器を銃で跳ね返す。バァン、 1334

    recommended works