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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か1・頼あか。
    「はっぴー・ばれんたいん」

    2018年2月にネオロマの世界に戻ってきてすぐに書いた話です。

    #頼あか
    redDependence
    #遙か
    far
    #遙かなる時空の中で
    harukanaruTokiNoNakade
    ##頼あか
    ##遙かなる時空の中で

    立春を過ぎたとは言え、まだ暖かいとは言いがたい日が続く。
    あかねはコートを着て、マフラーも手袋もきちんと身につけた。
    でも、日差しは少しだけ春に近づいているのがわかる。
    そんな中、あかねは最愛の人と会えると思うと心はますます暖かくなっていった。

    学校の授業が終わり、待ち合わせの場所に行くためあかねは昇降口で靴を履き替えていた。
    あの京の世界から戻り、半年とちょっと。
    あのとき、運命をともにする約束をした頼久はこの世界に馴染むため、そして生活の手段として職についている。
    いずれあかねがそれ相応の年齢に達したときに迎えられるようにするため。

    二人の待ち合わせは駅前のカフェ。
    あかねが店内に入るとそこには頼久の姿が目に入った。
    長い足を邪魔くさそうに椅子からはみ出しているのが、あかねにはなぜかかわいく見えてしまう。

    「頼久さん!」
    「みこ……あかね」

    ちょっと油断していると、いまだに京の世界にいたときの呼称で呼びかねない頼久だが、あかねの怪訝な顔つきですぐに訂正する。

    「ごめんなさい。来てもらって」

    頼久の目の前にあるカップの飲み物はほとんどなくなり、湯気も消えている。
    おそらく長い時間待っていたのであろうが、そんな素振りを見せない。

    「いいえ、みこど……あかね」

    相変わらずの頼久にあかねはくすりと笑い、頼久を店から連れ出す。
    さすがに周りに人がいる状態で聞くのは恥ずかしいから。

    少し歩き、ふたりは路地に入り込む。
    人が行き交う表通りとは反して、人の気配すらない。
    ここなら安全だ。

    「あのね、頼久さん。聞きたいことがあるの」
    「なんでしょう?」

    本当に聞いてもいいものか、聞きたくない答えだったらどうするのか。そのとき、自分はどうするのか。
    あかねは自分で話を振りながらも迷いを捨てきれないでいる。
    そんなあかねに対し、頼久は少ししゃがんで視線を合わせる。

    「頼久さん…… あのね、その……」

    あかねはもじもじとし、なかなか本題に入ろうとしない。
    視線を右に動かし、左に動かしているのがわかる。
    そして、目をぎゅっとつぶり、息を吸う。
    そして、意を決したらしく、口を開く。

    「女の人と、Hなことをしたことある?」

    思ってもいない言葉があかねの口から飛び出し、頼久は動揺を隠せない。
    この世界に来たばかりの頃、Hというのが何を指すのかわからなかったが、天真の余計な入れ知恵で、今ではすっかり理解している。
    しかし、わかったからこそ困ることもある。

    「な、なぜに、そのような……」

    頼久以上にあかねの方が動揺していると思われ、恥ずかしいのかうつ向いている。
    そんな仕草がかわいく思え、頼久はあかねをつい抱きしめてしまう。
    折れない程度には加減をするが、ありったけの想いを込めて。
    そして、彼女を安心させるため、落ち着いた声で話す。

    「神子殿。私は神子殿のみをお慕い申し上げます」

    頼久の言葉に曇りはないことを信じながらもあかねは問いただす。

    「本当に?」

    頼久の腕に力が込められるのをあかねは感じる。

    「ええ、過去も、未来も、あなたのみを」

    頼久の表情は見えない。
    頼久だって二十代後半の男性だ。
    本当の過去はわからない。
    もしかすると過去にこのたくましい腕に抱き締められた女性がいるのかもしれない。
    あるいは幾度となく一緒の夜を過ごした女性がいたのかもしれない。
    だけど、頼久の言葉を信じたかった。
    そして、頼久の言葉にはそれを信じさせる強さがあった。
    真実はわからないけれど、彼と未来を築きたい。あかねはそう思った。

    安堵の気持ちを抱えたあかねは、カバンの中から包みを取る。
    そして、頼久の手のひらに乗せる。
    あかねの手の上だと大きな包みも、頼久の手の上だと小さく見える。

    「はい、プレゼント。今日、バレンタインデーだから」
    「ばれんたいん、ですか」

    この世界に来て初めてのバレンタインデー。
    頼久が面食らってもおかしくはない。
    そのことを知った上であかねは頼久に笑顔を見せる。

    「うん、好きな男性にチョコを渡す日」

    そして、そう言ってあかねはつけ足す。

    「これを渡すってことは、Hしてもいいっていう合図なんだって。
    男の人に精をつけてほしいって意味があるって、学校で話題になっていたんだ」

    最後は視線を反らして話す。
    あかねの真っ赤に染まった頬を見て思う。
    本当はもう少し待とうと思っていた。
    この世界においては16歳はまだ子ども。
    彼女に何かあっては人生を狂わせかねない。
    でも、あかねが自らけしかけてきた以上、それを断る方が却って失礼と言うものだ。
    頼久はあかねの頬をつかむ。
    そして、顔を上に向かせ、その唇に自分の唇を重ねる。
    顔全体が火照っている中、唇だけが冷たいのが印象的だった。
    しかし、あっという間にふたりの体温が混ざりあう。

    「あかねがそこまで言うのであれば……」

    あかねの表情が輝くのが見える。
    頼久はあかねと手をつなぎ歩き始めた。
    行き先は自分が暮らしているアパート。
    暖房がついていない部屋は寒いだろうけど、平気だろう。
    今日のふたりは心が暖かく、そして、燃え上がるような時間を過ごすはずだから。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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