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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か1・頼あか。

    2018年のバレンタイン創作。

    #頼あか
    redDependence
    #遙かなる時空の中で
    harukanaruTokiNoNakade
    ##頼あか
    ##遙か1

    「頼久さん、これあげる」

    そう言ってあかねが手渡したのは丁寧にラッピングされた小さな箱。
    そのときのあかねの様子が頬を赤らめていてかわいいと思いつつも、ありがたく頼久は受け取る。

    今日は2月14日。
    いたって普通の平日のはずだが、あかねは前もって頼久にデートの約束を取りつけてきた。
    龍神のいたずらで現代の世界において就くことになった仕事はあるが、幸い、水曜日のため、早めに帰っても咎められない空気だった。
    そして、冒頭に至る。

    「開けてもいいですか?」

    あかねがこっくり頷くのを確認してから頼久は包装紙を丁寧にはがす。
    中から現れたのは茶色の固まり。
    ―確かちょこれーと、とか言ったはず。
    少し前にあかねに教えてもらった知識と目の前の物体が同じものであることを確認する。
    確か甘い味がするため、そんなに好みではなかった。
    そして、あかねもそのことを知っていたはず。
    しかし、わざわざそれを渡してくること、そしてそれを渡してくるのに、頬を赤らめる理由がわからなかった。

    「今日はバレンタインだから」

    「ばれんたいん、ですか?」

    聞き慣れぬ言葉を繰り返して尋ねる。
    少し前からあちこちで耳にしてきたが、自分に関係あるとは思えなかった。
    きょとんとする頼久にあかねが説明する。視線をそらしながら。

    「女性が好きな男性にチョコを渡す日なの」

    そう言われて頼久はようやくあかねの頬が朱に染まった理由を察する。
    想いが通じてからそれなりの時間は経っているはずだが、こうして形になるとやはりうれしい。
    苦手だと思われるチョコレートだが、せっかくのあかねからのプレゼントだ。
    食べなければむしろもったいない。
    そう思いながら、ふと頼久は今日、仕事場でも似たような光景があったことを思い出す。

    「ああ、なるほど。だから、職場でチョコレートを配られたというわけですね」

    そう言って胸ポケットにしまっていたチョコレートを取り出す。
    そのときは意味がわからなかったが、あかねにあげようと思っていたもの。

    しかし、その光景を見たあかねはどこか悲しそうな顔をしていた。
    瞳は潤み、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。

    「頼久さん、それ、どうしたの?」

    頼久はなんでもないと言ったように答える。

    「配っていたのですよ、職場で」

    配っていた。あかねはその言葉にほんの少しだけ安心する。
    きっとチョコレートを受け取ったのは頼久ひとりではないはず。
    ラッピングもそんなに凝ったものではなさそうだ。そして、チョコレートも比較的安価なものと思われる。
    職場の特定の個人から寄せられたものではなく、礼儀として渡された。そう思おうと思えば思えるものだった。

    とはいえ。

    「おもしろくないな……」

    ついそんな言葉を口に出してしまう。
    現代の世界において、あかねにはあかねの生活があるように、頼久は頼久で自分の世界を持ちつつある。
    自分は頼久にとってこの世界のナビゲーターのつもりだったが、いつの間にか頼久は頼久の世界を作りつつある。
    同じ世界で暮らしたかったはずなのに、むしろだんだん遠ざかってきているような気がする。
    それが寂しかった。

    拗ねてしまったあかねの肩を頼久は優しく抱きしめる。

    「一緒に食べましょうか」

    滅多に見せない頼久の笑み。
    それを見るのは限られた人物。
    もちろん、その中にあかねも入る。
    そして、至近距離で見られるのは自分だけだろう。
    先程までの寂寞感はどこかへ消え、あかねは笑顔を取り戻した。

    頼久はあかねの顎をつかみ、チョコレートを一個、口に含ませる。
    そして、そのくちびるを自分のくちびるに
    重ねる。
    さらに舌をあかねの口の中に滑り込ませ、さらにあかねの舌と絡ませる。

    「ん…… 頼久さん……」

    あかねの口内で頼久の舌は自由自在に動き周る。
    そして、それがあかねの心をじらしはじめる。
    もっともっと一緒にいたい。離れたくない。

    そんなあかねの気持ちを察したのだろうか。
    頼久は何度も何度もあかねの口にチョコレートを含ませる。
    そして、そのたびに彼女のくちびるを堪能した。

    「ごちそうさまでした」

    あかねの腰が抜けそうになっているのを察し、頼久はチョコレートを含ませるのをようやくやめた。
    そして、満面の笑みで頼久はあかねを見つめる。

    この笑顔には勝てない。
    あかねは悔しく思いながらもそれを認めていた。

    「甘いですね」

    甘いのはチョコレートなのか、別なものなのか。
    どこか余裕綽々な頼久の表情からそれを察するのは難しかった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

    related works

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。
    「名前で呼んで」

    出会ったばかりのあかねと頼久の話。
    「源頼久と申します」

    そう名乗りながらあかねの目の前に現れたのは、自分より頭ひとつ分違う身長に、鍛え上げられた体躯を持つ少し年上と思われる男性の姿だった。
    見慣れない装束、そして腰に差しているのは刀なのであろうか。
    これらを見ていると、やはり自分はどこか見知らぬ場所に連れてこられたという事実が現実のものとして迫ってくる。

    だけど、何が起こったのか、自分はどうすれば元の世界に帰ることができるのか、見当がつかなかった。
    リュウジンノミコとして召喚されたらしいが、普通の高校生である自分にそんな役割が任せられただなんて信じられない。
    この先、どうするべきか誰かに聞いておきたかった。

    「あの…… 源さん、でしたっけ?」

    武骨そうに見え、むしろ寡黙に見える。
    しかし、その瞳は嘘偽りがないということを信じることができる。
    初めて会ったのに、あかねはなぜか目の前の男性のことを信じることができた。
    すると、

    「み、神子殿……!」

    目の前の頼久と名乗る男性がうろたえているのが目に入る。

    「どうしたのですか? 源さん」

    そう、問いかけるあかねに対し、頼久は困ったように髪をかきあげる。

    「で 1575

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。

    2018年のバレンタイン創作。
    「頼久さん、これあげる」

    そう言ってあかねが手渡したのは丁寧にラッピングされた小さな箱。
    そのときのあかねの様子が頬を赤らめていてかわいいと思いつつも、ありがたく頼久は受け取る。

    今日は2月14日。
    いたって普通の平日のはずだが、あかねは前もって頼久にデートの約束を取りつけてきた。
    龍神のいたずらで現代の世界において就くことになった仕事はあるが、幸い、水曜日のため、早めに帰っても咎められない空気だった。
    そして、冒頭に至る。

    「開けてもいいですか?」

    あかねがこっくり頷くのを確認してから頼久は包装紙を丁寧にはがす。
    中から現れたのは茶色の固まり。
    ―確かちょこれーと、とか言ったはず。
    少し前にあかねに教えてもらった知識と目の前の物体が同じものであることを確認する。
    確か甘い味がするため、そんなに好みではなかった。
    そして、あかねもそのことを知っていたはず。
    しかし、わざわざそれを渡してくること、そしてそれを渡してくるのに、頬を赤らめる理由がわからなかった。

    「今日はバレンタインだから」

    「ばれんたいん、ですか?」

    聞き慣れぬ言葉を繰り返して尋ねる。
    少し前からあちこちで耳 1881

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。

    2018年のバレンタイン創作。
    「頼久さん、これあげる」

    そう言ってあかねが手渡したのは丁寧にラッピングされた小さな箱。
    そのときのあかねの様子が頬を赤らめていてかわいいと思いつつも、ありがたく頼久は受け取る。

    今日は2月14日。
    いたって普通の平日のはずだが、あかねは前もって頼久にデートの約束を取りつけてきた。
    龍神のいたずらで現代の世界において就くことになった仕事はあるが、幸い、水曜日のため、早めに帰っても咎められない空気だった。
    そして、冒頭に至る。

    「開けてもいいですか?」

    あかねがこっくり頷くのを確認してから頼久は包装紙を丁寧にはがす。
    中から現れたのは茶色の固まり。
    ―確かちょこれーと、とか言ったはず。
    少し前にあかねに教えてもらった知識と目の前の物体が同じものであることを確認する。
    確か甘い味がするため、そんなに好みではなかった。
    そして、あかねもそのことを知っていたはず。
    しかし、わざわざそれを渡してくること、そしてそれを渡してくるのに、頬を赤らめる理由がわからなかった。

    「今日はバレンタインだから」

    「ばれんたいん、ですか?」

    聞き慣れぬ言葉を繰り返して尋ねる。
    少し前からあちこちで耳 1881

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。
    「はっぴー・ばれんたいん」

    2018年2月にネオロマの世界に戻ってきてすぐに書いた話です。
    立春を過ぎたとは言え、まだ暖かいとは言いがたい日が続く。
    あかねはコートを着て、マフラーも手袋もきちんと身につけた。
    でも、日差しは少しだけ春に近づいているのがわかる。
    そんな中、あかねは最愛の人と会えると思うと心はますます暖かくなっていった。

    学校の授業が終わり、待ち合わせの場所に行くためあかねは昇降口で靴を履き替えていた。
    あの京の世界から戻り、半年とちょっと。
    あのとき、運命をともにする約束をした頼久はこの世界に馴染むため、そして生活の手段として職についている。
    いずれあかねがそれ相応の年齢に達したときに迎えられるようにするため。

    二人の待ち合わせは駅前のカフェ。
    あかねが店内に入るとそこには頼久の姿が目に入った。
    長い足を邪魔くさそうに椅子からはみ出しているのが、あかねにはなぜかかわいく見えてしまう。

    「頼久さん!」
    「みこ……あかね」

    ちょっと油断していると、いまだに京の世界にいたときの呼称で呼びかねない頼久だが、あかねの怪訝な顔つきですぐに訂正する。

    「ごめんなさい。来てもらって」

    頼久の目の前にあるカップの飲み物はほとんどなくなり、湯気も消えている。
    おそらく 2150

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。
    「はっぴー・ばれんたいん」

    2018年2月にネオロマの世界に戻ってきてすぐに書いた話です。
    立春を過ぎたとは言え、まだ暖かいとは言いがたい日が続く。
    あかねはコートを着て、マフラーも手袋もきちんと身につけた。
    でも、日差しは少しだけ春に近づいているのがわかる。
    そんな中、あかねは最愛の人と会えると思うと心はますます暖かくなっていった。

    学校の授業が終わり、待ち合わせの場所に行くためあかねは昇降口で靴を履き替えていた。
    あの京の世界から戻り、半年とちょっと。
    あのとき、運命をともにする約束をした頼久はこの世界に馴染むため、そして生活の手段として職についている。
    いずれあかねがそれ相応の年齢に達したときに迎えられるようにするため。

    二人の待ち合わせは駅前のカフェ。
    あかねが店内に入るとそこには頼久の姿が目に入った。
    長い足を邪魔くさそうに椅子からはみ出しているのが、あかねにはなぜかかわいく見えてしまう。

    「頼久さん!」
    「みこ……あかね」

    ちょっと油断していると、いまだに京の世界にいたときの呼称で呼びかねない頼久だが、あかねの怪訝な顔つきですぐに訂正する。

    「ごめんなさい。来てもらって」

    頼久の目の前にあるカップの飲み物はほとんどなくなり、湯気も消えている。
    おそらく 2150

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。
    「名前で呼んで」

    出会ったばかりのあかねと頼久の話。
    「源頼久と申します」

    そう名乗りながらあかねの目の前に現れたのは、自分より頭ひとつ分違う身長に、鍛え上げられた体躯を持つ少し年上と思われる男性の姿だった。
    見慣れない装束、そして腰に差しているのは刀なのであろうか。
    これらを見ていると、やはり自分はどこか見知らぬ場所に連れてこられたという事実が現実のものとして迫ってくる。

    だけど、何が起こったのか、自分はどうすれば元の世界に帰ることができるのか、見当がつかなかった。
    リュウジンノミコとして召喚されたらしいが、普通の高校生である自分にそんな役割が任せられただなんて信じられない。
    この先、どうするべきか誰かに聞いておきたかった。

    「あの…… 源さん、でしたっけ?」

    武骨そうに見え、むしろ寡黙に見える。
    しかし、その瞳は嘘偽りがないということを信じることができる。
    初めて会ったのに、あかねはなぜか目の前の男性のことを信じることができた。
    すると、

    「み、神子殿……!」

    目の前の頼久と名乗る男性がうろたえているのが目に入る。

    「どうしたのですか? 源さん」

    そう、問いかけるあかねに対し、頼久は困ったように髪をかきあげる。

    「で 1575

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