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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か1・頼あか。
    「名前で呼んで」

    出会ったばかりのあかねと頼久の話。

    #頼あか
    redDependence
    #遙かなる時空の中で
    harukanaruTokiNoNakade
    ##頼あか
    ##遙か1
    ##遙かなる時空の中で

    「源頼久と申します」

    そう名乗りながらあかねの目の前に現れたのは、自分より頭ひとつ分違う身長に、鍛え上げられた体躯を持つ少し年上と思われる男性の姿だった。
    見慣れない装束、そして腰に差しているのは刀なのであろうか。
    これらを見ていると、やはり自分はどこか見知らぬ場所に連れてこられたという事実が現実のものとして迫ってくる。

    だけど、何が起こったのか、自分はどうすれば元の世界に帰ることができるのか、見当がつかなかった。
    リュウジンノミコとして召喚されたらしいが、普通の高校生である自分にそんな役割が任せられただなんて信じられない。
    この先、どうするべきか誰かに聞いておきたかった。

    「あの…… 源さん、でしたっけ?」

    武骨そうに見え、むしろ寡黙に見える。
    しかし、その瞳は嘘偽りがないということを信じることができる。
    初めて会ったのに、あかねはなぜか目の前の男性のことを信じることができた。
    すると、

    「み、神子殿……!」

    目の前の頼久と名乗る男性がうろたえているのが目に入る。

    「どうしたのですか? 源さん」

    そう、問いかけるあかねに対し、頼久は困ったように髪をかきあげる。

    「ですから…… その……」

    戸惑う頼久にあかねの隣にいる藤姫が助け舟を出す。

    「神子様、おそらくその呼び方だと思いますわ。頼久のことは頼久とお呼びください」

    あかねが主である以上、苗字で、しかも敬称をつけて呼ぶのはおかしいことであるとのことだ。
    実際、自分よりも遙かに年下である藤姫ですら、頼久のことは呼び捨てにしている。
    しかし、逆に戸惑ったのはあかねの方だ。
    こんな年上の、しかも武士として生死を掛けて戦っているものに対し、気安く呼び捨てにすることなどできない。

    「よ、よ、頼久……さん」

    やっぱり無理だ。呼び捨てにすることなど。
    なんとか下の名前で呼ぶことはできても、藤姫のように呼び捨てにすることなどできない。
    そもそも自分はそういう育ち方をしてないのだから。

    それでも頼久は納得したらしい。
    さきほどの動揺は影を潜め、心なしか笑顔に見える。
    鬼の一族と向かいあっていたときの険しい様子は失われ、どこか頼りたくなるような様子さえ見せている。
    それは自分がリュウジンノミコだからかもしれない。
    この人にとって、自分は役目として守る存在というのもあるのかもしれない。

    「なんでしょうか? 神子殿」

    頼久の表情は出会ったときと同様、感情を表に出さない無機質なものとなっている。
    そのとき、あかねの心の中にすっと一筋の冷たい風が通ったような気がした。

    『神子殿』
    その呼称が心の中に響き渡る。

    「ううん、なんでもないです。頼久さん」

    自分は名前で呼んでいるのに、頼久さんは自分のことを名前で呼ぶことはないだろう。
    「あかね」と。
    それは自分がリュウジンノミコであり、守るべき、仕えるべき主なのだから。

    いつか名前で呼んでくれる日は来るのかな…… 神子殿ではなく、あかね、と。

    そんな考えがあかねの頭に浮かぶ。
    そして、そのことに気がついてあかねは我ながら驚く。

    何考えているのだろう、私。
    この人は、元の世界に帰るまでの一時をともに過ごすだけの人なんだから。

    だけど……

    「では、一緒に参りましょう」

    そう言いながら差し伸べてくる手。
    その手を思わずつかんでしまう。
    温かくて、大きな手がありがたい。
    頼る人がいないから、そう思ってしまうのだろうか。

    ……ダメ。
    いつか別れる日が来るのだから、これ以上、惹かれたら。
    だけど、今だけはこの手をつかまらせて。

    本当はこんなことを考えている場合ではない。
    だから、今だけ。許して。

    頼久の手に導かれながら、あかねは自分が進むべき道をゆく。
    心に切ない想いを抱えながら。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。

    2018年のバレンタイン創作。
    「頼久さん、これあげる」

    そう言ってあかねが手渡したのは丁寧にラッピングされた小さな箱。
    そのときのあかねの様子が頬を赤らめていてかわいいと思いつつも、ありがたく頼久は受け取る。

    今日は2月14日。
    いたって普通の平日のはずだが、あかねは前もって頼久にデートの約束を取りつけてきた。
    龍神のいたずらで現代の世界において就くことになった仕事はあるが、幸い、水曜日のため、早めに帰っても咎められない空気だった。
    そして、冒頭に至る。

    「開けてもいいですか?」

    あかねがこっくり頷くのを確認してから頼久は包装紙を丁寧にはがす。
    中から現れたのは茶色の固まり。
    ―確かちょこれーと、とか言ったはず。
    少し前にあかねに教えてもらった知識と目の前の物体が同じものであることを確認する。
    確か甘い味がするため、そんなに好みではなかった。
    そして、あかねもそのことを知っていたはず。
    しかし、わざわざそれを渡してくること、そしてそれを渡してくるのに、頬を赤らめる理由がわからなかった。

    「今日はバレンタインだから」

    「ばれんたいん、ですか?」

    聞き慣れぬ言葉を繰り返して尋ねる。
    少し前からあちこちで耳 1881

    百合菜

    PAST遙か1・頼あか。
    「名前で呼んで」

    出会ったばかりのあかねと頼久の話。
    「源頼久と申します」

    そう名乗りながらあかねの目の前に現れたのは、自分より頭ひとつ分違う身長に、鍛え上げられた体躯を持つ少し年上と思われる男性の姿だった。
    見慣れない装束、そして腰に差しているのは刀なのであろうか。
    これらを見ていると、やはり自分はどこか見知らぬ場所に連れてこられたという事実が現実のものとして迫ってくる。

    だけど、何が起こったのか、自分はどうすれば元の世界に帰ることができるのか、見当がつかなかった。
    リュウジンノミコとして召喚されたらしいが、普通の高校生である自分にそんな役割が任せられただなんて信じられない。
    この先、どうするべきか誰かに聞いておきたかった。

    「あの…… 源さん、でしたっけ?」

    武骨そうに見え、むしろ寡黙に見える。
    しかし、その瞳は嘘偽りがないということを信じることができる。
    初めて会ったのに、あかねはなぜか目の前の男性のことを信じることができた。
    すると、

    「み、神子殿……!」

    目の前の頼久と名乗る男性がうろたえているのが目に入る。

    「どうしたのですか? 源さん」

    そう、問いかけるあかねに対し、頼久は困ったように髪をかきあげる。

    「で 1575

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