永遠と刹那の狭間で:序章序章
「くっ……」
突如、渋谷に現れた怨霊の群れ。
周りにいるものたちにも『それ』は見えているらしく、逃げ惑っている。
そんな中、大学生となった天野七緒は戦国の世にいたときのように薙刀を振るう。
今日、薙刀を持っていたのは幸運というべきなのか。
それとも、何か運命に操られているのか。
ただ、今はそんなことを考える余裕はなく怨霊を倒すのが精一杯であった。
「姫!!」
遠くから聞こえてくるのは想い人の声。
時空を越えてめぐりあった青年―真田幸村。
彼が手にしているのは戦国の世で振るっていた槍ではなく、フェンシングの剣。
致命傷を負わすことは無理だが、意識を失うことくらいはできるらしい。
あっという間に敵を薙ぎ払い七緒の元へやってきた。
「幸村さん!!」
「ご無事ですか!?」
「ええ」
ふとそのとき、幸村の頬にほんのわずかではあるが切り傷がついていることに七緒は気がついた。
ふたりで敵を払っていても、おそらく自分たちの体力がなくなるのが先だろう。
それならば手っ取り早く目の前の敵を一掃した方がいいだろう。
そう考え七緒は久しぶりに、戦国の世にいたときのあの日以来となる神子の力を発揮することにした。
「めぐれ天の声、響け地の声……」
七緒の声に導かれるようにして発せられる白い光。
それらに包まれるかのように一瞬で怨霊たちが消え去るのが見えた。
そして。
「姫ーーー!!!」
自分の元に駆け寄る幸村の声。
それを聞きながら七緒は目を閉じた。
この人の、幸村のいる世界を守れたことに安堵しながら。