(ワードパレット・水麿)払暁に擁す(たまらない・腕にかかる寝息・触れるだけ) とても穏やかな夢を見ていた。水心子が笑っていて、何よりそれがうれしくて清麿まで笑ってしまうような、そんな柔らかな世界だった。
けれどそれは線香花火の玉のようにふつりと落ちて、覚醒していく自分を悟った時にもったいなさで苦しくなった。もっとここにいたいな。水心子が笑っていてくれる世界なんて最高じゃないか。また意識が眠りに沈みかけ、彼の笑顔が見える。そうだこれでいい。ずっと寝ていたいよ……。
『起きたら、もっといい世界があるぞ』
耳元で、囁かれたような気がした。
目を開いた。部屋にはうっすら明け方の気配が差し込んでいるけれどまだ暗い。早く起きすぎてしまったのだ。残念に思う。あんな優しい夢はそうないのに。もっとあそこにいたかったのに、こんな時間に起きてしまうなんて。
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