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    完成版:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14509322
    前回のおまけのつもりで書いたもの。
    イデケイがキスしてるだけ

    #イデケイ
    typeOfArtificialSweetener

    お勉強モード

     思わずイデアくんを止めちゃったけれど、もったいないことをしてしまった。せっかくイデアくんが頑張ってくれていたのに、素直に受け入れていればよかった。でも、ついこの前までちょっと舌を入れただけで大騒ぎしていた相手がいきなり高度なキスをしてきたら、誰だってびっくりすると思う。イデアくんが浮気するだなんてこれっぽっちも思っていなかったけれど、それでもやっぱり何かあったんじゃないかって思ってしまったのだ。
     イデアくんの部屋のベッドに寝転んで、さっきのキスを反芻する。唇をむにむにされるの、すごく気持ちよかった。イデアくんの少し荒れた唇が妙に色っぽく感じた。よくわからないままに舌を入れられて、歯茎を綺麗に舐められた。初めは凄くくすぐったくて、でも舐められていくうちにだんだん気持ち良くなってきて、舌が動くたびにぞくぞくした――
     あーもう、思い出すだけでドキドキする! やっぱりもっとやっていればよかった。なんで止めちゃったのオレ……。今からもう一回やってくれないかな。
     イデアくんをチラリと見る。なぜだかオレから少し距離を空けて座っている。さっきはあんなに近くにいたくせに、今はこちらを見ようともしない。でも、今日はイデアくんなりにすっごく頑張ってくれたのだと思う。突き飛ばされた前回のお泊まりから、いきなり今日みたいなことができるなんて思ってもみなかった。イデアくんもオレと先に進みたいって思ってくれていたのだ。それだけですごく嬉しい。……嬉しいけれど、それとこれとは話が別だ。
    「イデアくん」
    「ヒェッ。は、はい」
    「今から練習、しない?」
     起き上がって、上目遣いがちに言ってみる。自分で言うのもなんだけれど、今のおねだりは結構かわいくできたと思う。残念ながらイデアくんにこういうのは通用したことないんだけれど……。
    「むむむ、無理無理無理。拙者もう今日はキャパシティオーバーでござる」
     案の定、イデアくんは激しく拒否してきた。誘いを断られるのってちょっと傷つくけれど、相手はイデアくんだし仕方がない。
    「そんないっぱいいっぱいに見えなかったけどなぁ」
     これはホントにそうで、イデアくんってばすっごく余裕そうにキスしていた。いつもみたいにあわあわしながらだったら頑張ってくれているんだなぁって思ったけれど、さっきのイデアくんは魔法にでもかかってたのかってくらい手慣れているように見えたのだ。
    「そ、それは……その……」
    「なに?」
     イデアくんは急に歯切れ悪くなり、もじもじと下を向く。覗き込んで目を合わせようとしたら、小さな声をあげてビクリと震えた。じっと見つめていると、観念したようにぽつりぽつりと話し出す。
    「その……勉強したことの実践って気持ちでやってたから、恋人らしいことをしているって自覚が薄かったっていうか……」
     だんだん声が小さくなっていく。本人も申し訳ないと思っているのか、髪の毛もしおしおと萎んでいった。
     なるほどね、オレの顔を二次元のキャラクターや推しのアイドルに見立てていた、とか言われたらショックを受けていたかもしれないけれど、勉強と同じ感覚でやっていたと言われるとイデアくんらしいと納得してしまう。きっと彼なりにキスについてたくさん調べて、一人でイメトレを重ねたのだろう。オレとキスしていた時も、きっと頭の中で色々と難しいことを考えていたに違いない。それを聞くと、さっきの余裕そうな態度も頷ける。
    「怒った……?」
    「ふふ、怒ってないよ。イデアくんらしいなって」
     不安そうな顔に思わず吹き出すと、イデアくんは安心したように息を吐いた。でも、そうか。だったらお勉強にしてしまえば、イデアくんはオレとキスしてくれるってことかな。
    「ね、イデアくん。オレにキス、教えてくれない?」
    「はええ? 僕がケイト氏に? 教えることなんて何もないでしょ」
    「そんなことないよ。きっとイデアくんのことだから、名前とか色々知ってるんでしょ。オレそういうの知らないから、教えてほしいな」
     正直キスの名称を知ったところでどこに生かすんだという気もするけれど、イデアくんに色々教えてもらいながらキスするなんて想像するだけでドキドキする。下心が見えると警戒されるだろうから、なんとか取り繕ってお願いする。
    「なるほど……? 人に教えた方が身につくのも早いか……」
     いい感じだ。この調子でなんとか言いくるめたい。オレはどうやったらイデアくんの知識欲を刺激できるかと頭を働かせる。
    「でしょでしょ! オレも色々知れるし、やっぱり知識だけより実際にやった方が身につくのも早いと思うんだよね」
    「……たしかにそう、だね……。じゃあ……やりますか」
    「やったぁ!」
     うまく乗せれたことに、オレは小さくガッツポーズする。これでさっきの続きができるのだと思うと、期待が高まっていく。
    「じゃあ、始めよっか」
     イデアくんは急に真剣な顔になる。もうお勉強のスイッチ入っちゃったの? もっと甘い雰囲気を期待したんだけれど、ホントに真面目に教えられたらどうしよう。オレの心配をよそに、イデアくんは体を寄せてくる。
    「さっき初めにやったのはエスキモーキスって名前。鼻をくっつけるやつ」
     そう言うとイデアくんはオレの肩に手を置いて鼻を擦り寄せてきた。本人無自覚の整った顔が急接近してきて、思わず息を呑む。
    「似たやつでノーズキスとかスメルキスってのもある。相手の匂いを嗅いだりするんだって」
     喋りながら、イデアくんはゆっくりと顔を動かす。
    「ねえ、唇、当たっちゃいそう……」
    「当たらないギリギリを楽しむらしいよ。焦らしプレイってやつですな」
     淡々と説明される。ホントに勉強を教えられているみたいだ。でも、イデアくんの声色とか息遣いに気を取られて、あまり頭に入ってこない。
    「あ、ねえケイト氏」
    「なに?」
     鼻を擦り付けながら、イデアくんが話しかけてくる。この距離で話されたらホントに唇がぶつかっちゃいそうで、そわそわしてしまう。
    「次に進んで欲しかったら言ってくれない? それぞれキスの練習はしたんだけど、次に行くタイミングがわからなくて……」
    「ええ?」
     他意はないのだろうけれど、それめちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃない? 言わずに次に行って欲しくないってバレるのも恥ずかしいし、息絶え絶えに次行ってって言うのも恥ずかしいじゃん。イデアくん、絶対わかってないでしょ。でも恥ずかしい理由を説明して断るのも恥ずかしいし……。
    「……わかった……。次、行って」
    「りょ」
     オレの指示通り、イデアくんは顔を離す。さっきの順番で行くとバードキスかな? それくらいならよく聞くし、オレも知っている。あれってかわいくてオレは好き。軽くキスされるたびに、好きだよって言われている気がして。
     予想通りイデアくんはバードキスをしてくる。そういえば、さっきしてくれた時はずいぶん長かったなぁ。
    「えっ……」
     今回はどれだけするのだろうと思っていたら、バードキスはほんの数回しただけだった。イデアくんは口を開けて、歯を使わずに唇だけでオレの唇をカプッと軽く咥えてくる。そのまま不規則に何度も甘噛みされて……。柔らかい感触で唇全体を覆われて、凄く気持ちいい。
    「これはバインドキス。ケイト氏もやってみて」
    「オレも?」
     言うなり、イデアくんは口を閉じる。オレは見よう見まねでカプカプとイデアくんの唇を甘噛みしてみる。これ、やる方もちょっと楽しいかも。
    「ん、上手。ケイト氏の唇、柔らかくて気持ちいいね」
    「そ、そうかな……」
     何その優しい言い方……しかも褒められちゃった。イデアくんに勉強を教わったら、そんなふうに優しく褒めてもらえるの?
     ――オレのが終わったあとは、ずっとイデアくんがバインドキスというのをしてくれている。やるのも楽しかったけれど、オレはされる方が好きだ。イデアくんはどっちが好きなのかな。
    「息、苦しかったらちょっと口開けてもいいよ」
    「う、ん……オレ……これすき……んンッ……」
     甘噛みしながら、同時にぺろりと唇を舐められた。突然のことに思わず変な声が出てしまう。でもお勉強モードのイデアくんは恋人が艶っぽい声を出してもあまりときめかないようで、続けて甘噛みと舌で舐めるのを繰り返してくる。オレはなすがままにされていて、なんだか焦らされているような、生殺しされているような、もどかしい気になってくる。今日はイデアくんに任せるつもりだったけれど、思わずイデアくんが舌を出すタイミングでオレも舌を出してしまった。
    「ヒッ」
     舌同士が触れた瞬間、イデアくんは怯えたように身を引く。……やってしまった。そんなことをしたら、びっくりしちゃうってわかっていたのに。でも、どうしても我慢できなかった。
    「ごめ、いであくん……でもオレ、早く舌、欲しぃ……」
    「え、え? あ、あー次、次ね!」
     イデアくんの言葉に、オレは声も出さずにこくりと頷く。
    「ち、ちなみに今のはピクニックキスに近かったかも」
     何やらイデアくんが早口で言っているけれど相変わらずオレの頭には入ってこない。次に行って欲しかったらオレが言う、だなんて恥ずかしいと思っていたけれど、そんなルールがなくたって同じことになっていただろうなぁなんて思う。
    「あー……えーと、舌? さ、サーチングキスとオブラートキスとスロートキスと……ダメだ。何がなんだったっけ……」
     オレがペースを乱したせいで混乱してしまっている。イデアくんには悪いけれど、オレはイデアくんとキスができたら名前とかやり方なんてわからないままでもいい。
    「……ねえ、じゃあさっきの歯、舐めるやつ、やって」
    「サーチングキス?」
    「サーチングキスっていうんだ。それ、どうやってやるかオレに教えて?」
    「りょ、了解……」
     純情すぎる恋人を持つのもなかなか大変だ。そういうのもひっくるめて、オレは楽しいと思っているのだけれど。
    「これは相手の歯茎を丁寧に舌で舐めるよ。名前のごとく、何かを探すようにって」
    「じゃあ、オレの気持ちいいところ、探されちゃうんだね」
    「え、え? 気持ちいいところ……?」
     何を探すのかは考えてなかったのか、酷くうろたえられる。少しくらいドキってしてくれたら嬉しいのだけれど、あまりこういうことは言わない方がいいのかも。
    「……じゃあ、やるね。ケイト氏、口開けて」
    「あー」
    「こ、声は出さなくていいよ」
     さっきしてくれた時とは違って、控えめに舌が侵入してくる。オレが変なことを言ってしまったせいか、動きもギクシャクしている気がする。どうしたらリラックスしてくれるかなぁ。オレは目をつむって考える。
    「んッ……ッ……」
     途端、イデアくんの動きが滑らかになる。もしかして、オレがガン見してたから動きが鈍かったとか? イデアくんのかっこいい顔を見ながらしたかったのに、ちょっと残念。でも今は我慢して、イデアくんの舌の動きに集中する。
    「ッ……ほこ……」
    「えっ、ほこ?」
    「はぁ……今のとこ、きもちい……もっとして?」
     唇を離しておねだりしてみる。自分でも知らなかったけれど、どうやら八重歯の裏側が他のところより敏感らしい。オレの言葉に素直に頷き、イデアくんは再び舌を入れて、八重歯の裏側を舐めてくる。舌先でくすぐったり、大きく動かしてみたり、イデアくんも色々と試しているみたい。
    「ぅ……んッ……いれあく……ッ……」
     キスだけなのに気持ち良すぎて溶けてしまいそうだ。オレは自分でも恥ずかしいくらい、余裕ない声をいっぱいあげてしまう。
    「……これがサーチングキス」
     イデアくんが唇を離す。なんで? オレ、まだ次って言っていないのに。
    「イデアくん?」
    「……今日の勉強は終わり……」
     言うなり、イデアくんはキスする前みたいにオレから離れてそっぽを向いてしまった。どうしたんだろう。オレ、何か怒らせるようなことしちゃったかな。不安になって無理矢理覗き込むと、その顔は面白いくらいに真っ赤に染まっていた。
    「え、どうしたの、イデアくん」
    「君の反応、僕には刺激が強すぎるよ……」
     そう言ってイデアくんは小さくうずくまった。オレの反応なんか気にしていないと思っていたのに、とんだ思い違いだったみたいだ。自分だけがドキドキしていたわけじゃないとわかって、嬉しくなる。オレは何だかテンションが上がってしまって、思わずイデアくんの背中に抱きついた。叫び声と同時にイデアくんの髪の毛の体積がボウっと大きくなる。
    「慣れてもらわないと困るんだけどなぁ」
    「む、無理ッ……」
     振り払われそうになるけれど、万年運動不足のイデアくんを押さえ込むなんて造作ない。オレは抱きしめる力をさらに強める。
    「だってこれから、キス以上のことだってするんだよ」
    「し、し、しな、しない!!」
    「えー?」
     まだしばらく無理そうだけれど、この続きはそう遠い未来でもないんじゃないかな。
     そう期待しつつ、今はこうやってハグしているだけでも幸せを感じているオレがいる。これから二人でいっぱい一緒に勉強しようね、イデアくん。
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    ojo

    DONE🏹👑
    完成版https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15783576
    👑に匿名でストーカー行為を繰り返すファンに名探偵🏹が牙を剥く話の冒頭(推敲なし)

    全年齢ではありますが👑を性欲の対象としている劣情にまみれたモブが出てくるので閲覧注意です。
     談話室で寮の仕事を手伝ったあと、ヴィルを部屋まで送る。特に頼まれているわけではない、私が勝手にしていることだ。拒否されないところを見ると、ヴィルも受け入れてくれているのだろう。今日もいつものように、部屋にたどり着くまでささやかな談笑を楽しむ。
     ふと見ると、ヴィルの部屋の前に小さな箱が置かれていた。たしかヴィルは家族やマネージャー以外からの荷物や手紙の受け取りを拒否していたはずだ。学園に通っていることが世間に知られている以上、受け入れていればきりがないから。不思議に思い隣を見ると、感情なくその箱を見下ろすヴィルが目に入った。
    「ヴィル?」
    「じゃあここで。おやすみなさい」
     その箱を話題にさせる気はないのだろう、ヴィルは有無を言わさぬといった様子で私に別れの言葉を述べる。気にはなるが、きっと触れられたくないのだろう。こうなってしまっては何も言えまい。私もヴィルに別れの言葉を告げ、自室に向かおうと踵を返す。
    3110

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