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    ttbn_corle

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    ttbn_corle

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    お疲れ七海におかえりなさい!
    バニーの日に書いた七五に書下ろしを追加。真夏のバニーちゃんと真冬のバニーちゃん的なお話。

    WB「五条さん」
    「んー?」
    「万歳してください」
    「なんで?」
    「いいから」
    「やだよ僕の手は今忙しいの、ってオイコラ、七海!」
     仁王立ちの七海に見下ろされながら、五条は抗議の声を上げる。
    「僕の」
     アイスーと文句を言おうとした口へ、金属のスプーンが突っ込まれた。
     五条が食べていたカップアイスの残りはあと一口分で、その全てが押し込まれたらしい。アイスを取り上げた犯人は彼の口へ中身を押し込み、カップと役目を終えたスプーンを背後のローテーブルへ投げるように置いた。
    「手は空いたでしょう」
    「空いたけどね」
    「いいじゃないですか、万歳くらい」
    「あ、なになに? 僕からシャツを脱がせたいとかそういう? やだー、七海のえっちー」
    「違います」
     断言した七海へ五条はぷうと頬を膨らませる。
    「じゃあやだ。どうせ天井の掃除をしろとか、電球を変えろとかそういうんだろ?」
    「いくらアナタの背が高いとはいえソファに座っている今、天井へ手が届くとは思えませんし、電球の交換程度は自分でした方が早いですし、それなら片手で出来ますし、電球は切れていません」
    「あ、そっか。でもなげー台詞一気に言うなあ、オマエ」
     じゃあ何だよと五条は首を捻る。
     この後輩は、そして恋人は、非情に頑固で強情で頑固なのだ。
     場合によっては五条が赤らむような台詞もペラペラ喋る癖に、こうもガンとして事情を話さない場合は聞くだけ無駄。
     それでも。
     例え意味が分からなくても、そもそもあの七海が! 常に冷静沈着なあの七海が、意味不明な行動をするなんて貴重だし、この堅物が一周回って可愛じゃんとすら思えてしまう。僕も重症だなと五条は思う。
    「ま、目が座ってっけどね」
     可愛いというよりも、むしろ顔が怖いの域に達している気もしてきた。可愛いけど。
    「何です?」
    「なんでもなーい」
     昨日の仕事は何だったのだろう。
     朝食代わりのアイス片手に訪れた五条へ、任務から戻ったばかりだとスーツ姿の七海は言った。出勤前かと思ったら逆、少々ご機嫌が悪いのも頷ける。そこで「じゃあ帰るよ」と言う五条ではないし、以前なら「帰って下さい」と言っていた七海も、今では「どうぞ、上がって下さい」と迎えてくれる。
     アイスで濡れた唇を五条は舐める。
     じっと見つめる七海の瞳、その目に浮かぶ疲労の色は濃い。まあいいか。五条は謎の要望に応えることにした。
    「はいはい、分かったよ。ほらばんざーい。で、なに?」
    「肘を曲げて肩の位置まで下げる」
    「うん?」
     不思議に思いながら、五条は肘を下げる。
    「手の平を耳の上へ、そのまま前腕の伸筋と屈筋の両方から力を抜く」
    「はあ?」
     目を丸くする五条に七海は「手首から力を抜いて」と言った。
    「あ、こうか」
     ぷらんと五条の手の平が下がる。
    「では五条さん。Repeat after me.」
    「っはー、いい声だねえ、七海」
     じろりと動く視線に五条は「はぁい」と答える。
    「ぴょん」
    「ぴょん?」
     五条は七海を見上げながら小首を傾げる。
     やたらとダンディで色っぽい声で何を言ってんだ、こいつ。ぴょん? なんだよ、ぴょんとは。で、この格好もなんなんだ。
     垂らした手をぷらぷらと左右へ振りながら考えた五条はもしやと気付き、ニンマリと笑う。
    「七海ー」
    「……はい」
    「もっかい言おうか?」
    「お願いします」
     片手をぴょこぴょこと動かしながら五条は笑う。
    「やあだよ、なになに? 七海はうさちゃんプレイでもしたくなったわけ?」
    「昨日は八月二十一日でした」
    「そうだけど、それがどうしたんだよ?」
    「バニーの日、なんだそうですよ」
    「バニー?」
     ええ、と頷きながら、疲労からか表情の険しい七海がネクタイを緩めた。
    「猪野君がうさぎを見ながら騒いでいまして」
    「ああ、語呂合わせでバニーか」
     ついでに「ぴょん」と五条は呟く。
    「ってか何でうさぎなんか見るんだよ。オマエ、昨日の任務は遊園地だったよな? 閉園後の」
    「ええ」
    「ってことはあれか、その後バニーなガールのいる大人の遊園地にでも行ったのかよ!」
    「違います。夜間の遊園地で延々と呪霊を始末してたんですけどね、いたんですよ」
    「バニーガールな呪霊?」
    「違います」
    「まさかボーイ」
     ため息を吐きながら七海は首を左右へ振った。
    「違います、といいますか知りません」
    「ハァ?」
    「この暑いのに閉園まで頑張っていたうさぎの着ぐるみですよ。中の老若男女は知りませんが」
    「ああ、そっちかぴょん」
    「それを見て思い出したんじゃないですか? 猪野君は。バニーな日に呪霊が相手かとぶうぶう文句を言っていましてね」
    「へー」
     ぷうと五条は頬を膨らませた。
    「でぇ七海はバニーガールを思い出したとー?」
    「違いますよ、思い出したのは五条さんです」
    「何でだよ」
    「そんなの私が聞きたいです」
     憮然としている七海へ五条は口角を上げる。
    「で、僕はいつまでこのポーズしてりゃいいの?」
    「疲れてるんでしょうか、私は」
    「知らないけど」
     はああ、と七海は大きなため息をついた。
    「ありがとうございます。癒されました」
    「え、こんなんで?」
    「まあ、そうですね。でしたらもう少しお願いしたいです」
    「そりゃ構わないけど。なあ、七海」
     ぴょこりと五条は手を動かした。
    「可愛い僕を見ているだけでいいのかなあ? バニーな衣装をご用意して、七海をときめかせてみたくなったんだけどさあ」
     五条はにやにやと笑う。
    「うさちゃんプレイをしてみたくなぁい?」
    「是非お願いします」
     間髪入れずに言われた五条は「即答かよ!」と噴き出した。


     ***


    「ってなことがありました」
     ぴょん。
     両手をぷらんと動かす姿に七海は顔を顰めた。
    「覚えてる?」
    「勿論。ところで五条さん、今は真冬で外は雪ですよ」
    「あれ、まだ降ってるの?」
    「予報程酷くならずに止みましたが……、また朝食がアイスですか。寒くはないんですか?」
     全然! と五条は笑い出す。
    「ないない、全然寒くない。ここは暖かいお部屋の中だしねえ、オマエ僕が寒そうに見えるの?」
    「全く見えません」
    「だろ? でさ、アイスって冬の方が売れるんだって。知ってた? あ、おかえり、七海」
    「聞いたことはありますが。……ただいま戻りました。で、これは一体」
    「あったかーいお部屋で徹夜明け朝帰りのお疲れ七海をお迎えしようと思ってさ!」
     こたつとみかんと半纏をご用意しました!
     帰宅した七海は見覚えのない自室に眉根を寄せ、犯人である五条といえば「冬はこれっしょ!」と上機嫌だ。
    「正確にはみかんじゃなくて甘平だよ。美味しいよ」
    「その辺はどうでもいいのですが」
     五条悟に鍵など無意味。
     それでも、と七海は恋人である彼へ鍵を渡した。そして好きに寛いでくださいとも言った。きょとりと驚き、そして笑った顔はとても綺麗で七海はそれだけで満足した。
     満足したし、寛いで貰うのは一向に構わない。が、こうきたか。
     上半身は半纏を装着して床に転がり、下半身をこたつへ埋めている姿に、七海は小さくため息をつきながらネクタイを緩めた。こたつの上には空になったアイスのカップとスプーン。銘柄は同じでも『冬季限定!』と書かれた文字が、夏のあの日に彼が選んだものとは違うと教えてくれた。
     拘りぬいたインテリア、という訳じゃない。部屋の中など五条の好きにしてもらって構わないのだが、置いてあったローテーブルはどこへ行ったのだろう。そして巨大な半纏が存在するのだなと七海は驚いている。
    「……まあ、アナタが望んで用意できないものなど無いですね」
    「なにがあ?」
    「いいえ、何でも」
     こたつを体験したことはあれど、生活空間に存在した経験は無い。七海はなんとなくソファへ腰を下ろすと、起き上がった五条が足の間へにじり寄りソファへ背を預けた。
     五条は七海を見上げ、に、と笑う。
     彼は表情が豊かな男だ。自称しても誰も異を唱えようが無い美しい顔、その口角が上がると自分は眉根が寄ってしまう。
    「まあた口がへの字になってんぞ、七海」
     眉どころか口まで動いていたらしい。ふ、と息を吐いた七海は瞼を閉じる。視界を戻しながら表情筋の緩和に勤しんでいると、そこには機嫌の良さそうな顔が微笑んでいた。
    「七海、飯食った? あ、アイス食う?」
    「食い損ねましたが、アイスは要りません」
    「ふうん? 腹より違うもんで癒されたいほど疲れた、と」
    「そうですね。昔ならアナタを部屋から叩きだす位には疲れています」
     七海の足へ五条の腕と顔が寄せられ、流れる白銀の髪を七海は梳くように撫でた。
    「ぴょん」
    「……ぴょん?」
     酷いだのなんだの言われると思ったのに、返事はぴょんの一言。予想外の反応に怪訝そうな七海へ、五条はにんまりと笑う。
    「ほーんとオマエ、いい声してるよね」
    「それは、どうも」
    「疲れて帰ってくるんだろうから、あったかーいお部屋でイケメンな僕のお出迎えで癒してやろうと思って。で、夏のバニーちゃんを思い出したんだけどさあ、今は冬じゃん?」
    「ええ、冬です」
    「だから冬のバニーちゃんにした」
     ソファの下から引っ張りだした何かを受け取った七海は呟く。
    「半纏」
    「間違えた。でもオマエにやるから着てろ、冬毛だ冬毛。僕とペアルックだよ」
    「何を言ってるんですか、アナタは」
     僕はねえーと言いながら五条はごそごそと取り出した何かを頭へ被る。
     小さな頭を覆うそれは帽子としては頼りなく、けれどふわふわとした長い何かが二つ、五条の身体と七海の足へ落ちた。
    「耳……、ですか」
    「おうよ。垂れ耳バニーな五条さんだよ、どう?」
     いやー、僕は何でも似合うけどさあーと五条は笑い出す。
    「カチューシャのうさ耳さあ、耳が邪魔なんだよね。天井にぶつかりそうで」
    「それでドアを歩く時はコサックダンスみたいになっていたんですか」
    「言い方! でもさ、うさぎって垂れ耳がいるだろ? そんなのねえかなあと探したらあったんだよね」
     化学繊維の結晶のようなふわふわモコモコとした素材で作られた長い耳、通常なら立っているうさぎの耳はふんにゃりと垂れている。極端に長い耳を手で握り、五条はぽてぽてと七海の足を叩く。
    「もこもこで可愛いだろ」
     どうよ、と浮かべられた満面の笑み。
     暖かい部屋、楽しそうな五条。足へ触れる温かな身体と体重、ふわふわの耳、それは七海から不快な意識を吹き飛ばすには十分だった。
    「おーい、七海? 感極まったのは分かるけど何か言えよ」
    「ぴょん……」
    「ありがとうございます、って翻訳していい?」
    「はい……」
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